複雑・ファジー小説

Re: 学園マーシャルアーティスト ( No.23 )
日時: 2016/08/02 22:13
名前: 大関 ◆fd.I9FACIE (ID: 9ihy0/Vy)

その戦況は一方的であった。
黒野が掴みに掛かろうとすれば、見えない左で弾かれる。突きで強引に攻めようとすればスウェーバックで回避され、見えない左が襲い掛かる。
たかがジャブといえ、侮ることは出来ない。そのスピードは拳銃に匹敵、あるいはそれ以上のスピードで飛んでくるそれは、路傍の石くらいなら簡単に砕くことが出来るであろう破壊力を秘めている。

「遅い遅い。先輩おそーい。」
「くそがっ!ちょこまかしやがって!」
「へっへ〜ん。おいらについていけない先輩が悪いのさ。」

尤もなことである。怪力と頑丈な体を売りとしており、代償として素早さを失った黒野に対し、立花はスピードを持って相手を制するスタイルを持つ。
如何なる強力な攻撃も当たらなければ意味を成さない。同じように小さな攻撃でも集中すれば戦艦大和も沈む。正しく黒野にとって立花は相性が最悪であった。

「(駄目だ・・・ダンナの戦い方じゃ立花君を捕らえられない・・・どうすれば・・・)」

白石も黒野にアドバイスを送るべく考えるが、如何せん相性が悪すぎる。さらに黒野の性格を熟知しているため、思いついたとしてもその戦い方によっては素直に聞き入れないだろう。

「野郎が!」
「へへっ。」

破れかぶれの突っ張りを立花は見逃さない。それを上半身の動きのみで回避し、その上で黒野の鼻柱に強烈な右ストレートを繰り出す。その一撃に黒野は仰け反り、さらに立花は先ほどのカエルアッパーを放つ。さしもの黒野もこれには遂にダウンを喫した。

「あれれ?先輩もうお終い?」
「ちっ……!」

攻撃が命中せず、逆にダウンを喫した黒野の頭は冷静でいられない。怒りに燃えた眼で立花を見据え、立ち上がり、ぶちかましの構えを取った。

「ダンナ!幾らなんでも無茶だよ!」
「うるせぇ!もう如何にでもなっちまえ!」

白石の忠告も聞かずに黒野はぶちかましを決行した。