複雑・ファジー小説
- Re: 学園マーシャルアーティスト ( No.26 )
- 日時: 2016/08/09 18:54
- 名前: 大関 ◆fd.I9FACIE (ID: 9ihy0/Vy)
第6話 黒野と弥生と空手部と
「おらよっ……とっとと出す者出せやオラ……。」
天下の格闘学科と世界一の格闘部の多さで有名な学浜だが、そこは弱肉強食の世界。故に落ちこぼれとも呼べる部活が複数存在する。中でも有名なのは柔道部。主将の権藤 猛を筆頭とした柔道部は格闘部や応援団から追い払われたクズ達が集っており、過去8年間公式戦出場などまともに活動した形跡もない、それでいて何をやっても教師さえも止めることができない程性質が悪い。正に柔道部とは名ばかりの無法集団である。今日も今日とて男子生徒を一人攫い、カツアゲである。
「テメェいっちょ前に抵抗とかしてんじゃねぇぞゴミがぁ!」
「さっさと払えコラ!」
権藤の舎弟と思われし2人は罵倒と共に男子生徒に暴行を喰らわせる。恐怖に慄き、男子生徒は涙を浮かべた。
「ん……っ!」
「テメェよ……俺らは天下の柔道部だぞ?俺らに奉仕できるんだぜ?寧ろ喜ぶべきだろ?なぁ?なぁ?」
権藤は男子生徒の顎を掴み、引き寄せて質問を投げかける。返答など求めていない。只、相手を困らせるのが目的なだけの嫌がらせである。もし拒絶する素振りを見せれば今度は拳骨が飛ぶ為、何も答えることはできない。
「だろ?さーてと……これ以上手間掛けさせる前に出す物出せって。じゃねぇと」
「さもないと……どうなるんかのぉ?」
権藤は突如発せられたその声に振り向く。そこに立っていたのは学浜応援団長である大道寺重蔵。その右腕には見張りを行っていたであろう、ボロボロの男が一人掴まれていた。
「何だ、重蔵じゃねぇか……何か用か?こっちは込み合った用事なんだけどよ。」
「込み合った用か……おぅ、そこの。」
重蔵は権藤に目をくれることも無く、被害にあっていた男子生徒に声をかける。後は何も言わず、首を縦に振った。それを見た男子生徒は重蔵が伝えたいことを察し、体育倉庫から駆け出した。
「だぁっ!テメェら!追え!」
「「押忍!」」
権藤の舎弟2人は男子生徒を追うために同じく駆け出した。しかし、体育倉庫から出たと同時に片やその首筋に電流が走り、片や顔面に蹴りが放たれ、瞬く間に倒されてしまった。入り口で待ち構えていたのは、重蔵の舎弟 菊丸と翼の2人であった。
「やれやれ、カツアゲはダメだぜ。」
「そう言う行為は黙って見過ごすわけには行きませんからね。」
「あんた、ちゃっちゃと逃げなよ。此処は俺っちに任せてさ。」
菊丸の言葉を聴いた男子生徒は深く頭を下げると、再び駆け足で逃げ出した。
「後は大将が始末するだけか。全くもって簡単な仕事だぜ。行こうぜ、翼。」
「はい。」
菊丸と翼は男子生徒を見送った後、体育館で今にも始まりそうな喧嘩を見物しようと、体育倉庫の中へ向かおうとした。
その時であった。
「ちょっといいか。」
「んっ?どちらさん?」
菊丸は突如としてかけられた声に振り向く。
一方、体育倉庫から舎弟2人を倒されたのを目撃した権藤は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「ちぃっ、せっかくの銀行が……。」
「人間を銀行扱いか……随分と腐った根性しとるのぉ。」
そう言うと重蔵はサングラスを外して権藤に近づき、睨みを利かせる。権藤も怒りの形相で重蔵に睨み付ける。
「オドレがやっとる事がアカンと言うことがまだ解からんのかクズが……。」
「なんだテメェ?自分が神様にでもなったつもりか?」
「やっぱりオドレは叩き潰さんとアカンようじゃのぉ!」
その空気、正しく一触即発。もうこれ以上言葉は意味を成さない。
「ほなのぉ……!」
「死にさらせぇ!」
そしてお互い拳を振り上げ遂に喧嘩を開始……しようとしたその時だった。
「待てっ!!」
「あぁ?」
「なんじゃい?」
突如として響いたその声に2人は拳を止めた。