複雑・ファジー小説

Re: 学園マーシャルアーティスト ( No.37 )
日時: 2016/08/28 21:22
名前: 大関 ◆C5p8guYtTw (ID: 9ihy0/Vy)

 既に対策を打ってある、その言葉に白石は反応を示した。

「対策があるだって? 一体全体、どんなのを考えたのさ。」
「ちょっと時間貰うぜ。」

 黒野はポケットから電話を取り出し、誰かに連絡をした。

「おぅ、立花。今、空いてるか? 空いてるなら、急で悪いが、ちょっと来てくれ。」

 そう言うと黒野は電話を切る。どうやら、彼の対策というのは立花を頼るようである。白石はこの時点で何かに気づいたような、そんな表情を軽く浮かべた。
 数分後、立花は相撲部にやってくる。

「黒野先輩、おまたせ。」
「おぅ、立花。急に呼んで悪いな。そんでまたスマネェが……一週間、俺に付き合ってくれ。」
「いいよ。大会まだ先だし。」
「いや、立花くん、そんなあっさりと了承して大丈夫なのかい?」

 内容すら聞かずにあっさりと黒野の頼みを引き受ける立花に、少々呆れ気味に白石は語りかける。それを黒野も立花も特に気にした素振りを見せず、黒野は不適すぎる笑顔を浮かべながら、白石に語りかける。

「相棒よ……俺が立花を呼んだ理由……解かるか?」
「……いや?」

 白石は黒野の考えを既に見破っていた。だが、黒野から『知らないと言え』と言う、恐らく黒野も無意識のうちに発している圧を感じ取った白石は、その圧に任せたまま嘘をついた。

「そうかそうか……知らないか……。」
「一体何を考え付いたんだい?」
「さっき言ったことと矛盾したことを言うけどよ……相棒よ、俺様はサプライズが大好きだ。」
「へぇ、それで?」
「つまりだ!」

 白石の後ろに回り込んだ黒野は、白石をそのまま押す。何がなんなのか、理解できずに押されるがままに前へと進んでいく。

「ちょっ、ダンナ!?」
「な〜に、お前にもトレーニングはつけてもらうつもりだぜ。だがな、今からやるトレーニングはお前へのサプライズのために極秘で行うやつだ。お前といえども見せるわけにはいかねぇんだ。だからお前には全力で隠させてもらうぜ。」
「それ隠すべき本人に一番言っちゃいけないセリフじゃん!」
「細けぇこたぁ、気にすんな。また後でトレーニング頼むぜ!」

 そう言って、部室棟の外へと押した後、黒野は白石を置いて相撲部の部室へと戻っていく。白石はそれを、ただ見送るしか出来なかった。
 黒野とすれ違うように、弥生も白石の元へと歩み寄ってくる。

「白石くん。」
「あぁ、弥生ちゃん……いやぁ、いつも通りとはいえ、ダンナも強引だねホント。」
「うん……黒野くん、何を思いついたんだろう。」
「まぁ、ダンナの事だから、わかりやすいよねこれは……。」

 もう既に殆ど見破っている白石は、悟ったかのように部室棟を眺めていた。