複雑・ファジー小説
- Re: 学園マーシャルアーティスト ( No.5 )
- 日時: 2017/12/10 16:33
- 名前: 大関 ◆fd.I9FACIE (ID: 9ihy0/Vy)
=第2話 カチコミ退治も楽ではない=
部室棟に建てられた掘っ立て小屋、そこが黒野率いる相撲部の部室である。
相撲部が創立されて5日が立つ。ありとあらゆる手段で勧誘してみるものの、誰一人として入部を希望する者はあらわれない。
「何故だ……何故一週間も勧誘しているにも関わらず入部希望者が来ない!」
「相撲と言うスポーツ事態に人気がないから仕方ないね。アハハ」
部室内で怒りを露わにする黒野に対し、茶化すかのように白石は言い放つ。
火に油を注ぐとはよく言ったもの。白石の頭上に黒野の肘が落とされたのであった。
「こっちも気にしてるっつっただろうが!このボケ!!」
「アイタタタ……悪かったってダンナ……」
白石は殴られた頭を抑え、部室の片隅に足を運ぶ。片隅に置かれていたのは山ほどに積まれた勧誘用のチラシ。それを持ってくると黒野に半分ほど渡す。
「ほら、まぁ人気云々言うより勧誘行こうよ」
「テメェが先に人気云々言ったんだろうが……」
文句をブツクサと呟くが、黒野は奪い取るようにチラシを手にすると白石とともに外へ出向く。
「やっと出て行ったか……」
部室棟の影から現れたのは、ソフトモヒカンにカラスマスクを着け、不自然に発達した上半身をした男を筆頭に創立日に相撲部を襲撃したヨタモノ達。彼らは鉄パイプを持ち、その部室である掘っ立て小屋の前に集まった。
「あ、あの、高山さん。此処って相撲部の部室ですよね…何しに来たんすか此処に」
「テメェら忘れたわけじゃないだろ? 5日前にやられた時の事を……」
高山と呼ばれた男は5日前に殴られた個所(顎)に手を当て、手下達に向けて何をされたのかと言う事を誇示する。それを見た手下達は、何をするのかと言う事を直感で察した。彼らもまた、あの時の事を覚えている様子であり、身を震わせるものもいるが高山が怖いのか、誰一人としてこれからやる行動を止める者はいない。
「あの、それで俺達にはどうしろと」
「決まってんだろ……まずはこの部室をもっかい壊す! そこでお前たちの出番よ」
「まさか……」
「そのまさかだ…お前たちの役目はそれだ。さぁ、やれ」
高山が手下に命令すると、手下達は戸惑いながらも手にした鉄パイプで部室を壊していく。流石に掘っ立て小屋であるが故に脆く、瞬く間に壊されてしまった。その部室だった場所に高山は紙をくくりつけた棒を立てて、満足げな表情をする。
「本当に勝算あるんですか?」
「この間はしくじったが、所詮は相撲。弱小格闘技に負けるはずはねぇよ。この勝負は貰ったも同然だ!安心しな!」
戦う前にも関わらず既に勝ち誇ったかのような言葉を口にし、高笑いしながら部室を後にした。
「なぁ、相棒よ……」
「何だいダンナ」
勧誘は失敗に終わり、黒野達は部室へと戻っていた。戻った先には部室の影も形も見当たらず、そこにあったのは木屑だけであった。
「俺達の部室を再び壊した奴はどこのどいつだ……!」
黒野は激怒した。必ず、この部室を破壊した奴をぶっ飛ばさなければなければならぬと決意した。そんなメロス並みの決意を固めている最中の黒野を余所に白石は何かを見つける。それは紙が巻かれた棒っきれ。
随分と古めかしい事をしてくれる。白石はそう呟きながら、紙を手に取って読んでみた。
「はぁ……あの人たちか……」
「おぅ、どうした相棒。シケた面しやがって」
「はい、ダンナ宛てのお便りさ」
渡された紙に書かれているものを黒野は読む。
—弱小相撲部の部長さんへ
この通り、部室はまた破壊させてもらった。悔しいと感じたのならば屋上へ来い。5日前の借りを返させてもらう。もっとも、弱小格闘技の使い手だから来なくても恥ずかしがることはない。所詮はその程度の格闘技なのだから
2年 高山 安則—
読み終えたのか、読み終える前に堪忍袋の緒が切れたのか、ぶちぎれた黒野は手紙を力任せに破り捨て、鬼の形相で白石を見つめた。
「許さん……相棒!!」
「何だいダンナ?」
「屋上行くぞ!ついてこい!」
返答も聞かずに黒野は校舎へと、大股で足を進めていく。そんな黒野を、やれやれと言うように白石はついていった。