複雑・ファジー小説
- Re: 十字星座の戦士 ( No.17 )
- 日時: 2014/01/18 16:46
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
「……はやい!!」
シエルの驚愕の声が聞こえると同時に、シエルが動く気配がわかる。だが、俺はそれを確認している暇はない。これだけではシエルを圧倒することはできない。……だから
「『十字剣・光』!!」
再び、剣に光が宿る。俺はそれを縦に一度、横に一度きることにより、十字型の鎌鼬を生み出し、それが再び、シエルにむかって放たれる。
「くっ……『紫電』!!」
俺のコンボがすべて放たれる。シエルは最初の一撃を剣で弾き飛ばし、次に技を発動する。
シエルの剣に紫色の雷のようなものが宿ると、シエルは剣を斜め下に振る。それと同時に剣から雷が放たれて、俺の二度目の技を打ち消す。
「『ダークネススラッシュ』!!」
シエルの剣に、闇の力が宿る。シエルの剣は、その闇が形をとり、巨大化し、闇の巨剣と化す。それをシエルが横一閃になぎ払うことによって、俺の十連打はすべて消し飛び、さらに、最後の十字も消し飛ばす。
「……ぐっ!?」
コンボを決めたあとの俺は、コンボを決めたあとに、マナの一斉消化により発生する虚脱感に襲われていて、それを見ているだけだったが……やはり、シエルは強い。
コンボをするまでもなく、俺の攻撃をあっさりと消し飛ばすあたり、力の差は歴然だ。……今ので正直、終わるかと思ってたが……まだか。
「リヒト……あなたの力は、あなたがいってた「守る力」は、この程度なの?」
シエルが、残念そうな声をだす。その声には、聞き覚えがあった。
その声を聞かないために俺は戦ってきた。その声を聞きたくないから、俺は強くあろうと思った。だから……
「いいや……まだだ」
といって、虚脱感をぬぐい去り、俺は再び剣を構える。
たかだか一度、コンボを破られた程度で弱気になってどうする……俺は、なんのために、戦ってきたと思ってんだ。まだまだ、やれるはずだ!!
「そう……なら、私もそろそろ本気、だすね」
シエルがそういうと、眠たげな目に、殺気が宿るのがわかる。表情は変わらないのに、雰囲気が、挙動が、すべてが一気に変わる。それは、シエルが本気をだしたという証で、今まで本気でなかったという証だ。
「お前がその気なら……俺もマジになってやるよ」
正直、俺には迷いがあった。
いくらシエルが強いとはいえ、友達を、傷つけてしまうということに、迷いがあった。だけど、シエルはそんなことを気にしないだろう。そんなことを気にせず、俺のことを負かしにかかるだろう。傷つけても……自身の信じる力のために、俺を屈服させようとするだろう。だったら……それもその迷いを、今、捨て去るんだ。じゃないと……怪我だけではすまされないかもしれないからな。
俺は腕をだらん、とさげる。力を抜き、相手の動きに集中する。シエルも、剣をかまえ、俺のことをまっすぐに見据える。さながら、訓練が始まる前の状況に似ているが、二人を包む雰囲気は、大きく変わっていた。
次の瞬間、俺たちは……同時に、動きだす
「『魔神閃光刃』!!」
「『ダークネススラッシュ』!!」
俺の剣に、光がやどり、それが巨大化する。さきほどのシエルと同じように。シエルも、さきほどと同じく、闇の巨剣を作り出し、俺たちは一斉に振る。巨大な光と闇の鎌鼬が生まれ、互にぶつかり、相殺される。俺たちは、それを確認せず
「うおおおおお!!」
俺はシエルにむかってふたたび突進する。シエルは、次の技を発動するべく、構える。
「『ダークネススラッシャー』!!」
シエルがそういうと同時に、剣を地面に突き刺す。次の瞬間、シエルの目の前の地面から俺にむかって、だいたい2m弱の、闇の剣が列をなしながら突き出てくる。
「うおっ!?」
俺は目の前までせまったそれを、なんとか横に軌道を変えてかわす。だが、
「『ブラッディープリズム』っ」
シエルが横なぎに剣をふる。それが合図となり、俺の目の前に、拳サイズの、黒い結晶があらわれる。それは走っている俺に並行しながらついてきて……シエルが剣を地面につきさしたのを合図に、爆発する。
「うおおおぉぉぉ!!」
俺は、それでも止まらない。剣を盾の代わりにして、爆発したと同時に襲いかかる結晶の欠片を防ぎ、爆発の衝撃は、気合で耐える。
「っ!?『十字剣・闇』!!」
シエルが黒く塗りつぶされた剣で、宙を二回切る。それにより巨大な十字の鎌鼬が生まれて、俺にむかって飛んでくる。
たしか……自分で使う技の派生系、別の型だから、この一撃がどれくらいかわかる。……おそらく、剣で受け止めたら、文字通り十字型に斬られるだろう。だったら———
「『光炎剣』!!」
俺の剣を白い炎が包み込む。俺はそれを上段から斜め下方に斬る。それにあわせて俺の剣に宿った白い炎は肥大化して、シエルの黒い十字に迫る。白い炎によって前方は見えなくなり、軽い目くらまし状態になってしまうが……シエルの黒い十字架が俺の炎を切り裂き、霧散させる。だが、俺にその十字が届くことはなかった。