複雑・ファジー小説
- Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.21 )
- 日時: 2014/01/18 16:52
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
「あー……負けた……か」
戦い終わったあと、俺は地面に寝転がり、そう、つぶやく。
正直、勝てると思って戦ったけど、まあ、俺が付け焼刃程度の技術を身につけた程度で、こいつに勝てるわけがないと薄々気がついていた。
ただ、失望されたくなかった。前のように。ただ、認めて欲しかった。俺は、そのために戦うことを望んだ。けど……負けた……か。
「勝負あり!!シエル・グランツ!!」
フラムがそう掛け声をかけると同時に、シエルは鞘に剣を収める。殺気がなくなり、いつもの頼りなげな、ぼんやりとした雰囲気に戻るのがわかる。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
レイが俺にかけよって、俺の顔を覗き込む。それに俺は苦笑いしながら
「体は大丈夫だけど……」
心はだいぶボロボロだけどな、と心のなかでつぶやき、俺はシエルのほうを見る。
シエルは、俺のことをぼんやりとした眠たげな瞳で見下ろしていたが、俺のとなりに歩いてきて、体育座りをする。
「リヒト」
そう静かにつぶやく
「……なんだよ」
俺はぶっきらぼうに言い返す。……また絶望されるんだろうな、と、また失望されるんだろうな……と。そう思ったから。
けど、シエルから放たれた言葉はいがいなものだった。
「……リヒトは、もっと強くなれるよ」
小さく笑いながら、シエルが俺の手に触れる。それだけで、その言葉だけで、俺は、どこか救われた気持ちになるのがわかる。
「リヒトのいう、守るための力……自分を守ることで、自分がいることによって守れる存在を守る……どこか矛盾していてめちゃくちゃだと思ったけど、私も、少しだけ、信じてみるよ」
「……そうか」
そういって、俺も少しだけ笑う。シエルの言葉で、俺が今までやってきたことが、報われた気がしたから、努力が無駄ではなかったと思えたから。
「しっかし……リヒト、お前、前とは比べ物にならないぐらい強くなったよなー」
フラムが腕を組みながらそういう。
「お兄さんは昔から強いですよ」
「その昔の強かった時よりも、さらに強くなったってことだよー」
レイが少しむくれながらいうのを、フラムがあやすようにそう言う。
「昔のリヒトはたしかにひどかった」
シエルがうんうん、と頷きながらフラムの言葉に肯定する
「そ、そんなにひどかったか?」
「うん」
「ま、まあたしかにひどかったな……」
ガックリ、と頭を垂れるが、たしかにそうだったな、と思い返し、また落ち込む。
「前から成長してなかったら、流石に私も、リヒトと戦う気はおきなかったから、ね」
シエルが少しおこったようにそう言う。……たしかに、前の俺のままだったら、こいつは戦うどころか、話しすらできなかっただろう……
「いつまでも弱いままじゃ……俺の理想に届かないから、な」
そういって俺は空に手を伸ばす。
平和な日常のなかに、戦いという言葉が加わった。そんな中で、シエル、フラム、レイは、強くあろうとして、強さを身に宿した。俺も……その仲間に、はいれただろうか。
「このあと、どうします?」
レイがそういうと、フラムが
「昼飯もまだだろ?うちくるか?」
という。
正直、技の連発、コンボの使用、無理な回避をしたあとで、ものすごく疲れている。自分の家でぐったり寝るのもいいが……