複雑・ファジー小説

Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.22 )
日時: 2014/01/18 16:55
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

「……んじゃ、久しぶりにおばさんの料理でもごちそうになるかな」

そういって、体をおこす。

「フラムのお母さんの料理はおいしいから、ね」

シエルも、眠たげな瞳を輝かせながらそう言う。

「フラムさんの家、久しぶりですね!!」

レイがはしゃぎながらそういい、フラムが

「よーし!!んじゃちょっくら休憩したらいくかー」

という。
ふと思い出し、俺はあたりを見回す。そういえば、教官と、機関の兵士らしきやつが見ていたと思ったんだが……どちらの姿も、もう元いた場所にはなかった。……教官は俺たちに一声かけてくれてもいいと思うんだが……まあいいか。

「にしても……」

ため息をつきながら、まだ右手に握られたままだった、真ん中から折れた相棒をみる。次に、飛ばされた真ん中より先のそれを見る。俺が、戦闘職業になってから、ずっと戦い続けてきた相棒の成れの果てがこれか……。

「修理費いくらになんだよ……」

と愚痴ると、シエルが若干申し訳なさそうに

「修理費は私がだすよ、私がこわしたんだし」

「いや、流石にそこまでしてもらわなくてもいいよ」

そもそも壊れた原因は俺にあるしな……まあそこはいわないでおくけど。
俺は折れた先端を拾い、鞘の奥につっこみ、もっていたほうも鞘にしまう。格好はつかないが、まあこれでいいか。

「にしても……リヒト、お前その剣、いつからつかってんだ?」

フラムがふと思い出したように言う。そういえば、とレイも考える。シエルは黙って俺のことをみて、そうだな……

「俺が戦闘職業にはいってから一度も変えてないな」

という。
そうだ、一度も、俺はこの剣を手放したことはない。シエルも、それを知っている。
レイは忘れてしまったいるようだが、あの時も、……俺が、戦うことを決意したあの時からも、一度も変わっていない。
空を、晴れ渡った空を、俺は見る。あの時とは違う、平和の空を、平和の空気を、俺は感じる。それに釣られて、シエルも空を見上げる。その瞬間、あの時の映像が、流れる。
俺の意思とは関係なしに、俺の瞳に焼きついてるかと言わんばかりに、流れ出す—————

————————あたりに飛び散る、夥しい量の……血……そして……目の前に無残に転がる……2つの、人の姿———————

「……くそっ」

「……」

俺は一瞬流れたその映像に、顔をしかめ、舌打ちをする。シエルも、苦々しい顔をしている。……おそらく、シエルも同じく、思い出したのだろう。

「?……どしたよ」

突然顔をしかめた俺たちを怪訝そうにフラムが尋ねる。レイは、俺たちの表情から、なにかを察したらしく、沈黙する。
あのときのことは……みんなでいるときは思い出さないようにしてたんだがな……と、俺は頭をかき、ため息をひとつつく。

「いや、なんでもない、ただ教官にしごかれた昔をおもいだしただけだ」

といってごまかす。
あのことは話てもいいことはないし、黙っておくのが一番だ。というか、話てなにかが変わるとは思えないから、な。

「あー……たしかに、お前に一番世話焼いてたからなあ・・・教官は」

「リヒトはぐーたらだからね」

さっきの表情と一片して、にこにことシエルが笑う。それにつられて俺も笑い、本当に教官にしごかれた日を思い出し、また苦い顔をする

「あれは本当に地獄だったな……」

「教官、家にまで来てお兄さんのこと説教してましたからね」

と、レイまで苦々しい顔をする。
教官もいい人なんだが……

「熱いよなぁ、あの教官」

と、フラムが笑いながら言う。

「いい思い出だね」

それにつられて、俺たちは、笑う。
いつか、あの時の決着をつける日が来るだろう。いつか、戦わなければならない日が来るだろう。だが……それは、ずっと先だと信じて……俺は、今の平和を、噛み締めていたい、とこの時、思うのだった。