複雑・ファジー小説

Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.23 )
日時: 2014/01/18 16:58
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

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「『十字星座の戦士』の力は、まだ開放していない、か」

「はい……あのガキどもはまだ、なんの力ももっていません」

目の前のモニターに写った、赤いローブをまとい、フードを目深にかぶっている男に、恭しく頭を垂れながら、白いローブの男はいう。
モニターに写った男は、それを満足そうに聞くと、顔を歪ませて、ニヤリ、と歪な笑みをうかべる。

「本当にそいつらがあの英雄の力をもっているかなんてしらないが……もしも、もっていたとして、それが覚醒してたらさすがに、俺様じゃぁ役不足かもしれねぇからなぁ……」

「大丈夫ですよ……仮にもしも———様の力がやつらに劣っていたとしても……」

「あぁ?お前、俺様を馬鹿にしているのか?」

「い、いえ……そんなことは」

「……ちっ……まあいい。たしかに上層部も、その仮にもってときのために、やつを別で動かしてるんだ、文句はいわねぇよ」

赤いローブの男が忌々しげに舌打ちする。だが

「しっかしすげぇよなぁ、上層部の連中も……やつが裏切ったときのため、んで、やつらが力を開放していたときのためにって、何億とかけてつくった『こいつ』を俺に預けちまうんだからよぉ……相当厄介なんだろうなぁ、やつらが敵に回ると……」

そういいながら、男は眼前に、黒い、手のひらサイズの箱をもってくる。その箱の表面には、紫の線で魔法陣が描かれていて、それだけではなにをするものかはわからないが、相当すごいものなのだろうと白いローブの男は納得し、最終確認に移る。

「それで……———様、ベルケンドの住人の避難などはいかがいたしましょう」

その問いに、赤いローブの男がまた、口を割き、笑う。さもおかしそうに。狂ったように笑う。

「いいやぁ?殺すよぉ?上層部もそれがお望みみたいだしなぁ……」

「やはり、壊滅の方向で話が通りましたか」

「最初からそのつもりだったみてぇだけどなぁ……なにせ俺様を含む『キメラ』の兵士と……『天魔』で編成された部隊なんて、普通ありえねぇ」

「それは随分と大掛かりですね……では、到着予定の明日の深夜、入口でカムフラージュの魔法をかけ、作戦開始時刻の正午の時間まで、支部でご休息をおとりください」

「わかったわかった……本当はすぐにでも殺してやりたいが……『天魔』は夜だと力をまったく発揮できないらしいからなぁ……」

赤いローブの男が残念そうにそう言うが、次の瞬間には、また、不気味な笑顔が、顔に張り付いていた。

「レジスタンスに動きはあったかぁ?」

「いえ……レジスタンスのネズミどもはまだ動きを見せていません」

「そうか……だがこの騒動できっとやつらも動く。……十年前の戦いみてぇに大掛かりな戦いになりそうだなぁ……ヒッハハハ!!」

赤いローブの男は大笑いし、目の前にはいない、誰かに言うかのように、叫び声をあげる。狂気に染まり、ただただ殺戮を楽しむかのように、叫ぶ。

「さあ!!存分に『今』を楽しみやがれ!!平和で腐ったお前らの顔を、俺様が捻じ曲げるその時までなぁ!!ヒヒッ!!ヒハハハハハハ!!」

立ち上がった赤いローブの男、モニターにうつるのは、その男が着ているローブの胴の部分……そこには、正義を象徴する、この世界のルールを制定し、秩序を守る、正義の組織……『機関』の証である……十字架が、描かれていた。