複雑・ファジー小説

Re: 十字星座の戦士 ( No.3 )
日時: 2014/01/18 16:17
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

お世辞だな、と頭の中に浮かび上がった言葉を、俺は飲み込む。
レイには過去、何度も同じようなセリフを言われたことがある。そのたびに、俺はひねくれた返答しかしていなく、その度に、レイはいつも悲しそうな顔をする。だから、なにもいわなかった。
でも、なにか言わないとさすがに場の空気があれなので、仕方なく口にすることにする。

「馬鹿いえ、俺が強い剣士ってやつなら、おまえは、俺と同じぐらい強いってことになるぞ?」

それは、『称号』が同じだから言える皮肉だったのだが、レイは

「『称号』が同じでも、力の差はあるのですよ」

たしかに、それはそうだ。
力の差は、同じ『称号』をもっていたとしても、その『称号』よりもしたのものであったとしても、上のものであったとしても、必ず存在する。
同じものどうしであったとしても、その『称号』の期間が長いほど、その『称号』が本人に適合していればしているほど、その力はまた、無限大に広がる。
格上の『称号』にだって渡り合えるようにもなる。それどころか、剣士クラス、銃士クラス、魔術師クラスの最強の『称号』をもつものと、互角に戦えるぐらい、力をつけることだって可能だ。
実際、中級の『称号』をもつものが、毎年首都で開催されている、『バトルアリーナ』で、『上級』を破る話なんて、よく聞く話だからな。
ま、ようするに『称号』だけでは個人の技量までは測れないっていうことだ。

「おまえならすぐ追いつくだろ」

ま、そうだったとしても、レイの才能ならすぐに俺を追い抜かすだろうと思ってそんなことをいってみたが、レイは突然料理を運ぶ手を止めて、俺のことをじっとみつめる。
俺もそれに対してまっすぐ見つめ返す。そして思うことは、まったくべつのことで、レイの、自分の妹ながらにして、人目を引く容姿をしている妹のことをじっくりと観察する。
身長はだいたい148センチ、体重は本人が教えてくれないからわからないが、だいたい40キロ前後だろう。髪は、透き通るような純白をしていて、見ているだけでも癒される。前髪はぱっつんで、後ろは腰あたりまで伸ばされている。顔立ちも俺と似ているところはいっさいなく、少しねむたげな瞳の色は茶色、鼻は小さく、可憐だ。口も小さくて、とても愛らしい。細身で、華奢で、小さくて、可愛い。そんなイメージを、レイ・タキオンはもっている。
われながら、シスコンだな……と思いつつ、妹の今後の成長が楽しみだ、と一度そのない胸を見て、再びレイをみつめかえす

「……今の一瞬で、すっごくいやらしい視線が感じられたのですが……まあいいです、そんなことより」

レイがなにかぶつぶついっていたのが聞こえたが、あえてスルーした

「私は、いつも、お兄さんの後を、追い続けます」

……また、それか。
いつもそうだ。いつも、こいつは、俺より下に、俺より後ろにいるのだと、いう。それは、俺が兄だから言っていることなのか、それとも、ただの世辞なのか……それとも、本当にこいつは、俺の「才能」を、認めているのか・・・それは、本人に直接聞いたことはないから、わからない。けど……慕ってくれているということだけは、わかる。
だから、俺は決まってこういうのだ。

「……いつかおまえが追い抜いていくことを楽しみにしといてやるよ」

と。