複雑・ファジー小説

Re: 十字星座の戦士※3話【Collapse(崩壊)】 ( No.42 )
日時: 2014/01/29 19:39
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: mL1C6Q.W)

と声が聞こえた瞬間に、俺は、剣を……折れた刀身から、まるで最初からそこにあったと言わんばかりの、光の刃が形成されたその剣を……相棒を構え、爪をギリギリのところで、食い止める。

「むっ!?」

機関の兵士が、なにもしてこないと踏んでたのだろう、俺の行動に驚き、すぐに腕をひっこめて、後ろにステップする。俺は、肩で息をつきながら、機関の兵士の行動を伺う。
身体的に、なにもかわった実感はないし、今まで以上に動けるとは思えない。新しい技を覚えた感覚もないし、なにかが目覚めたという実感もない。だがしかし、なにかが目覚めた……なにかが、夢が、俺に力を貸したという証明として……折れた刀身の先から、光が、刃となりかわり……一本の剣が、俺の手には、握られていた。

———今のお前では、それが限界だ

頭の中に、声が再び聞こえる。俺は、なにが限界なんだ、とその声に返すように疑問を思い浮かべると、声が、夢とはまるで違い、返答を返す。

———十字星座の戦士の力に慣れていないお前の身体では……すぐに壊れてしまう

そういうことか、と、俺は納得する。ようは、剣をもったことがないやつが、いきなり実戦で剣を使おうとしても、なにもできないのと同じだ。慣れろ、といいたいらしい。
今まで受け入れようとしなかった力。実感もわかないし、正直なにがどんな理屈でこんな力がつかえるのかだってわからない。剣をなにもないところから作り出す魔法だってたしかに存在はするが、俺にそんな高等な魔術は使えないし、ましてや壊れた剣先から生み出すなんて聞いたことがない。
だが、そんな、ありえない力が、必要になってしまうほど……世界がやばい状態だっていうのは、もう、十分理解した。
得体の知れない力……十字星座の———

———さあ……ここから先は……お前の戦いだ……十字星座の……光の戦士よ

光の、力———

「光……ですか……そうか……そうですか……あなたが———」

機関の兵士が、なにかをつぶやくのが聞こえる。だが、俺は、その声を無視して、一直線に、詰め寄る。
相手が機関の兵士であろうが、一流の戦闘職業だろうが、魔物の腕を持とうが、俺にできるのは、恐怖に怯えることではなく……それが敵だというのならば、自分自身を、戦って、守りぬくことのみだ。俺が生き残ることで、救える人々がいるのならば、俺が戦うことで、救える人がいるのならば、俺は、逃げるわけには、いかない。

「『魔光刃』!!」

剣を走りながら振り下ろし、光の粒子がまとわりついた剣先を少しだけ地面に触れさせる。そこから波紋が伝わり、光の衝撃波が、地面を伝い、機関の兵士を襲う。機関の兵士は、それをするりとかわすと、また、クスクスと笑い始める。

「……あなたが、レジスタンスの最後の希望でも……力をたいして使えないのならば、話は別、所詮くずはくずのままのようでしたねぇ!!」

かわしたかと思うと、機関の兵士は、それをほんのすれすれでよけただけで、すぐに態勢を立て直し、真っ向から俺に迫る。
考える暇はない。技を使うか、そのまま技術で攻めるか……俺の信じた道を、行けばいい。

「『魔狼剣』!!」

機関の兵士がそう叫ぶ。剣のまわりに粒子がやどり、それが狼の形を形成し、機関の兵士は、その狼が宿った剣を、まっすぐに突き出す。
突き出すと同時に、その狼だけが雄叫びをあげ、俺に一直線に向かう。それを俺は……技をつかうことなく、剣を思い切り斜め上から斜め下に切り下げ、狼を消し飛ばす。

「『狼連牙』!!」

だが、相手はオリジナルコンボをつなげるために、一度後ろに跳躍し、そこから三度、同じように粒子の狼が宿った剣を、三度突き出す。一度、二度、三度と突き出すたびに狼が現れ、咬み殺さんばかりの勢いで俺に肉迫する。だが、俺は、まだ技を使わない。

「ふっ!!」

一体目の狼を切り捨て、二体目は剣で受け流し、三度目は、剣で受け止め、弾く。その一瞬にできた隙に、機関の兵士は、何十体もの粒子の狼を生み出し、俺に放っていた。

「ちっ!!」

さすがに、交わしきれないと思い、俺は走るのをやめ、後ろに跳躍する。だが、四方から迫るすべての攻撃に耐え切れるとは思えない。技をつかわなければ。