複雑・ファジー小説

Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.207 )
日時: 2017/07/15 20:48
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: C8ORr2mn)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=568.jpg

 均整のとれた体躯に、異彩を放つ銀色の髪と瞳。
月光を受けて、冴え冴えと光るその銀髪は、作り物めいていると感じるほど、優雅に夜風に靡(なび)いている。

(……わ、綺麗な人……)

 突如、目の前に現れたこの不思議な風貌の男に、ファフリは素直にそう思った。

 まっすぐにこちらを見る瞳は、どこか神秘的な色を孕んでいて。
その瞳に心をとらわれてしまったかのように、男から目を離すことができない。

 しかし、不意に男は、髪と同じ銀色の睫毛を伏せると、ゆっくりと目を閉じた。
そしてそのまま、ふらっとよろめき、思いっきり、どしゃあっと地面にうつ伏せに倒れる。

「えっ……だ、大丈夫ですか!?」

 突然の出来事に、慌てて近寄って、男の体を揺すってみるが、男はぴくりとも動かない。
この時、改めて男の全身を観察してみて、ファフリは血の気がひいた。
男の纏っていた衣が、薄汚れた黄白色のローブだったからだ。

──特に、黄色っぽいローブを着た魔導師団の奴等と、いかつい鉄鎧を来た騎士団の奴等には、絶対に見つからないこと。

 脳裏にカイルの言葉がよみがえって、一瞬、男を揺らしていた手を止める。

(ど、どうしよう……この人、多分、魔導師団の人間だ……)

 カイルは、ヘンリ村には魔導師団や騎士団の者は来ないと言っていたけれど、明らかに私服とは思えないこのローブを見る限り、ファフリのこの予想は的中しているだろう。
とすると、もし、この男に獣人であることがばれてしまったら、地下牢行きということになる。

(でも、こんな森の中で倒れてるのを、放っておくわけにもいかないし……)

 うんうんと唸って、どうするべきかファフリが頭を悩ませていると、ふと、男が身じろぎをした。
その瞬間、彼の腹から、ぎゅるる……と間抜けな音が響く。

「…………」

 ファフリは、拍子抜けしたように瞬くと、しばらく倒れた男のほうを凝視していた。