複雑・ファジー小説
- Re: 〜闇の系譜〜(ミストリア編) ( No.83 )
- 日時: 2017/08/14 21:34
- 名前: 狐 (ID: C8ORr2mn)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=197.jpg
「……どうして? そんなこと言うの」
ファフリは、静かな口調で聞いた。
「……なんで、急に力を使わないでなんて言うのよ。そりゃあ、まだ完全には使えるわけじゃないし、今更使えるようになったって遅いのは分かってるわ。私に才能がないのは明らかだし……。でも、でも……やっと使えたのに……」
「うん……ごめん。急に変なこと言って。だけど、召喚術を使ったときのファフリは……なんだか普通じゃなかった気がするんだ」
不明瞭なユーリッドの答えが、ファフリの気持ちを逆撫でした。
(なんで、ユーリッドまで……! 私の気持ちなんて分からないくせに……!)
その瞬間、異常なまでの怒りが噴き上がってきた。
その怒りは、まるでファフリの全身を包み込むかのようにむくむくと膨れて、喉元から吐き出そうになった。
ファフリは、ユーリッドをきつく睨むと怒鳴った。
「どうして、そんなこと言うのよ! これまでずっと、召喚できるようになれ、召喚できるようになれって皆で私のこと責めて……! 挙げ句、才能がないからって命まで狙われて……。それなのに、やっと成功したら、今度は召喚するなって言うの!?」
ユーリッドが、はっと顔を上げた。
ファフリは、大きく音を立ててベッドから立ち上がった。
「私だって、好きで召喚師に生まれたんじゃない……! なんで、なんでこんな目にばっかり遭わなきゃいけないのよ! もう嫌……なにもかも、皆いなくなっちゃえばいいのに……!」
ファフリの目から、ぼろぼろと涙が溢れ出た。
ユーリッドが、蒼白になって口を開いた。
「ごめん、ファフリ。俺、そんなつもりで言ったんじゃ——」
「うるさい、うるさいうるさい!」
ユーリッドの言葉を遮って、ファフリはベッドに置かれたコルの実を彼に投げつけた。
実は、ユーリッドの肩に勢いよくぶつかり、僅かな凹みを残してそのまま床に落ちた。
掠れた声で叫ぶファフリは、まるで獣のような凶暴な眼差しをしていた。
「召喚術を使われるのが嫌なら、ユーリッドだってどこか行っちゃえばいいのよ! 私がちゃんと、悪魔を使役できるようになったら、ユーリッドなんていらないんだから……! やろうと思えば、この国の獣人たち全員を殺すことだってできるのよ!」
ユーリッドの顔が、さっと強張った。
同時に、ファフリも我に返ったように口を閉ざした。