複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.101 )
日時: 2014/02/16 19:11
名前: ・ス・ス・ス[・スo・ス・ス ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)

第十話 七色の蝶

 ライムに連れられてやってきたリーフ大陸奥地。ライムはここがリーフの中央だと言う。グライトはそう言われてもピンとこなかった。それはソラやミキ、クウゴも同じだ。
ライムは真っ直ぐ大木へ向かう。大木にはしめ縄が巻かれていた。

「ここが私の家!」

胸を張ってそう言うが、グライト達にはどうもただの木に見える。
どこが入り口でどこが窓なのか、そう尋ねるとライムは首を傾げる。

「私はこの木に宿っている草木の妖精だよ? そんなもの、必要ないわ」

さも当然科の様にそう言うライム。
クウゴとソラははそうか、と納得していたが、グライトとソラは何となくよくわからなかった。
それ以上の質問はしなかった。してもわからないだろうと踏んだからだ。
ライムはじゃあと言って問題の洞窟へとグライト達を誘導する。

ライムが見せたのは大樹の根っこと根っこの間にある穴だ。人が一人通れるぐらいの穴はおかしな点が無い。
ミキはこの穴を見て首を傾げた。

「ここがどうかしたんですか?」

わからないの? とばかりにライムは言った。

「ここから力を感じるの。こう……ぶわっと吹き出る感じ。わかるかなぁ?」

不安げに首を傾げるライム。それからどれだけ説明されても四人はわからなかった。
とりあえず視察のためクウゴ、ミキ、グライト、ソラと言う順番で中へ入ることにした。



 中は暗かった。人為的なモノは何もなく、ただ隙間から入る光が頼りだ。
穴の上からライムの声がした。酸素はある、そう言って四人は奥へ奥へと足を進めた。

少し進むと木で出来た扉が見えてきた。迷いなくそこを開ける四人。

「ん?」

グライトが一番初めに飛び込んで行った。その目に映ったのは黒髪でロングヘアー、手に本を持った少女だ。
少女は扉の前で座ったまま寝ている。何をしているのだろうか? グライトはそっとちかよりマジマジとその少女を眺めた。

「ぅうん……」

視線を心地悪く感じたのか少女は眠そうな黒目にグライトを映した。少しの間の後、少女はピクリと体を硬直させる。

「貴方……だれ?」

フワフワとした服を払いながら立ち上がる少女。グライトは「えっと」と言って後ろから追いついてきていたミキ達に視線を送る。

「敵……? まさか、この神聖な木に悪戯でもしに来たの?」

少女はそう言って手にステッキを持ちだす。身構えて四人に視線を送った。
慌ててグライトは手を振る。

「違うよ。俺たちはこの木が何なのか調べに来ただけだよぉ」

ヘラっと笑って名を名乗るグライト。少女は少し肩の力を抜いた。続いてミキ、クウゴ、ソラも名乗った。

「ふぅん……」
「きみの名前は?」
「……エアリィ・ディストリア。エアリィでいいよ」

よろしくそう言いかけてもう一つの声が響く。
驚いたグライト達はその声の主を見た。そこに立っていたのはエアリィとそっくりな顔を持つ少女。
睨むような黒い瞳は真っ直ぐグライト達に敵意を向けていた。

「エアリィ! 簡単に名乗ったらだめって何回言ったらわかるの? もしかしたら悪い人達かもしれないじゃない!」
「あ、ルナ……」
「あと一応護衛をしているんだから居眠りなんてしちゃダメ! しっかりしてよね」

そう言いながらエアリィの元に歩いてくるルナと呼ばれた少女。
同じ顔をしているのに性格は真反対の様だ。
あっけにとられているグライト達。代表してミキが此処で何をしているのかと尋ねた。

「何って護衛に決まってるでしょ? てゆーかあんた誰? 何しに此処に来たの?」
「ちょっと……ルナ、落ち着いてよ」
「敵かもしれない人達を前に落ち着いてなんかいられないでしょう? エアリィ、いくよ」
「え、あ、うん」

二人はミキの弁解も聞かず、何か呪文の様な物を唱えた。二人のステッキが合わさった時、まばゆい光がグライト達を包む。

そして——目を開けるとそこは先ほどの場所ではなく、広い森に来ていた。

キョトンとしているとどこからか二人の声がする。

「覚悟しなさい」
「加減はするから」
「必要ないわ、全力で行くよ」
「でも……」

エアリィの声が遮られ、ルナの声が響く。グライト達にはよくわからない呪文だ。その呪文と共に木々がざわざわと揺れ始めた。
何が起きるのか、少し体に力を入れた4人。

「ライトディアマン!」

二人の声が重なった時、四方八方から光が降り注がれる。光は四人を包み、視界を奪った。

「フイユ……」
「フラム!」

それぞれ順番に呪文を唱える。
視界を奪われたグライト達はどうする事も出来ず、ただ光が無くなるのを待った。
しばらくすると、光が四方八方へ拡散し、次に目に飛び込んできたのは宙を舞った葉っぱ達。グライト達に降り注がれる葉っぱに、一気に炎が回る。
それを見て思わずクウゴは声を上げた。

「ちょ、ちょっとまて! お前達はこの木をを大切にしてるんだろう? そんなことしていいのか!」

その言葉をフンと鼻であしらう声。きっとこれはルナの声だろう。

「神木様に力を貸してもらっているのよ? 問題ない! それよりさっさと諦めなさい! エアリィ! 力を貸して」
「うん、いいよ。……何するの?」
「特大魔法をお見舞いしてやるのよ!」

その言葉と同時に唱えられる呪文。
グライト達の周りに水がわき出てきた。じわじわとその量を増やしていく水達。クウゴは舌打ちして大鎌から黒い煙を沸き立たせた。黒い霧はそのまま四人を守るように丸く囲み、水から四人を遠ざける。

そのまま流されるように気付けば外に来ていた。

何が起きたのか、あの二人は何者なのか、色々思う所があったが、キョトンとしている四人はライムにそれを報告することにした。
きっと此処に秘宝がある。
そう言って再び入ろうとするが、外は真っ暗。一気に襲ってくる睡魔に勝てず、四人はライムに案内されるまま宿舎に入った。そして深い眠りに落ちた。