複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.106 )
- 日時: 2014/02/16 22:18
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
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グライトは今夢の中だ。その夢の中で黒い洞窟があった。ライムに教えられたあの木の中の洞窟では無い。もっと禍々しく恐ろしい、底冷えするような場所だ。
そこにグライトは立っている。
目の前の洞窟の奥で何かがうごめいていた。覗いてみると黒い棒のようなものがいた。
なんだろうか? そう思ったグライトは声をかけてみる。
「おーい」
その声は反芻して「おーい」と返ってきた。グライトの声より少し低いその声はグライトのものではない。そんな確信があった。
あの黒い棒のようなものが発した声なのだろうか? 近づいてみたいが足が動かない。
そうこうしている間に黒い洞窟はどんどんグライトに侵食してくる。
呑みこまれる……!
そう思い目を瞑った時、自分を呼ぶ声が聞こえた。その声に耳を傾けてみる。
ああ——の声だ——。
光と共に現実へ呼びもどされる感覚がグライトの中で広がった。
◆
宿舎。ソラは隣のグライトの唸り声で目を覚ます。面倒ながら近づいて行くソラ。なんだか苦しそうなグライトを見て少し心配になった。
「——い……! おい! 目を覚ませグライト」
「……え?」
目を覚ましたグライトは案外近かったソラの顔に少し目を丸くする。ソラが怒っている。何故怒っているのだろうか? グライトは疑問に思いどうしたと尋ねた。
ソラは「いや……」と言ってバツが悪そうに目を泳がせてグライトから離れる。
グライトはそこでふと察する。
「心配してくれたの?」
何となくそんな事を言ってみると図星だったらしく、ソラはそっぽを向く。
怒っているような顔は心配している顔だった。グライトは何故心配されたのかわからなかった。
「なんか苦しそうだったから……もう、おとなしく寝ろよ。寝てる間もうるさいのかお前は……」
ソラはそう言って布団に戻る。
グライトはおやすみと言ったが聞こえていたかわからない。その隣でクウゴやミキは寝ている。
何となくあの夢の事が気になった。
何故あんな夢を見たのだろうか? 今となってはその夢自体思い出せないのだが……。
諦めてグライトは寝た。
夜は一刻一刻と朝に近づいて行く。今度は夢を見なかった。