複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.114 )
- 日時: 2014/02/19 17:57
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
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ダリダンの前に立ち、それが存在する者だと確信したグライト。ダリダンは先ほどから足元に大人しく座っているリーブルを見ている。それを不思議そうにグライトは眺めていた。
「この黒猫の飼い主は誰かしらぁ?」
そう声を発したダリダン。グライトは手を上げて自分だと伝える。
「そう……こんな小さな子が……フフ、死なない程度に頑張りなさい」
穏やかな口調でそう言ったダリダン。クロスはグライト達の事を説明した。
「そう言う事でしたのね。クロス将軍、朝からお疲れ様です。それと……グライト君達、クロス将軍を手助けしていただき誠にありがとうございます……心からお礼申し上げます」
「そんな……! ダリダン様がオレなんかのためにお礼なんて……」
「いいえぇ、感謝の念はしっかりと伝えなくちゃ……伝わらないでしょう?」
「そうですが……」
酷く気を使った様子のクロスをよそに、グライト達は自分達の目的を話す事にする。
とりあえず先陣を切ったのはミキだ。一番話しが単純だからだった。
「ダリダン様、この歴史書は誰が書いた物かご存知でしょうか?」
尋ねるミキにダリダンは考える様に顎に手をやる。それから少ししてやはり思い当たらないのか頬に手を当て答えた。
「知らないわ〜……ごめんなさいね」
「……いいえ、なら他をあたります」
守護神にもわからないとなると一体だれが? そんな疑問が浮かんだが、わからない物は仕方ない。
しおらしく身を引くミキ。その隣でクロスが見はるように立っている。もしものことを考えてだろうか?
ミキの次に口を開いたのはクウゴだ。一体何を聞きたいのだろうか? グライトは気になり、おとなしく隣に立っている。
「ダリダン様、戦争は無くなると思うか?」
唐突な話題を振ったクウゴ。思わずダリダンもマヌケな声が出た。
「今戦争を起こしている人物は黒雲となんら関係があるのかどうかと聞いているんだ。よかったら答えてほしい」
切実にそう言うクウゴにダリダンは心配そうな視線を送る。
彼には彼なりの考えがあるのだろうか? それはいったいどう言った経緯があって出来た物なのだろうか? グライトは聞きたい事が沢山あったが、抑えてダリダンの言葉を待つ。
「来るべき時にそれは消滅するでしょう。ただ、私から言える事は……ないのよ」
哀しそうにそう言ったダリダン。「それ」と言うのは戦争の事を指すのか、それとも黒雲の事を指すのか、グライトにはわからなかったが、クウゴは納得したらしい。
そうかと言って何やら物思いにふける。
ぼけっと立っていたグライトにソラは声をかけた。
「後はグライトだろ? さっさと済ませちゃえば? 俺は聞くことないからなァ」
ソラはそう言ってグライトを前に押し出す。
グライトは「うん」と言ってダリダンに人懐っこい笑顔を向けた。リーブルがグライトの肩へと登ってきた。
「秘宝ってここにある?」
「秘宝?」
「伝説の秘宝。俺、それ探しているんだ。必要なんだ。とっても重要な物らしいけど、よかったら俺にそれ譲ってほしいんだ」
「まぁ……」
驚きの声を上げるダリダン。その隣でクロスが同じように驚く。
「お前のような子供が持つ物なのかそれは?」
そんな質問をクロスがするが、グライトはわからないと肩を落とす。そしてグライトは再びリーブルを撫でながらダリダンに向き直る。秘宝を求めたその理由と今までの経緯を簡潔に話した。改めて口にしてみると自分でも信じられない気持ちになる。だがグライトは続けた。ダリダンはそんなグライトとリーブルを見て何を思ったのか、ほほ笑んだ。
「秘宝ね……ならばあなたに託してみましょう。この世界がどうなるか……楽しみが一つ増えたわ〜。でも一つ約束してほしい」
真剣な口調でダリダンは続ける。グライトは生唾を飲み込んだ。
「良い方向へ使ってほしいの。秘宝って言うのはね、とても力を秘められていて、使う人によってそれがどう動くのかわからないのよ。私でさえもあれは越えられない。もし貴方の心の闇にあの秘宝が反応するのなら……私達守護神は全勢力を持ってあなたを潰すわ。それを覚えておいてくれるかしら?」
物騒な事をさらりと告げたダリダン。そう言わせるほどあの秘宝は重要なものなのだろう。
だがグライトにはやはりその秘宝の事がよくわからなかった。今一つ釈然とこない。
それはなぜか——モート大陸の守護神であるアメリアもグライトに託すと言ったが、秘宝はその姿を見せていないからだ。アメリアに託された秘宝は未だどのような形で、どのようにグライトに宿っているのかわからない。
今回も一緒だろうと考えたグライトは事前にその形について聞いてみた。だがダリダンは首を振るばかりだ。
「さぁ? その人に合った形、道具、はたまた宝石になって宿るのよ。だから形は様々ある。歴史にも書かれていなかったのはこのためでしょうね」
ダリダンはそう言ってはぐらかす。
結局どんなものが託されたのかわからなかったが、この地下を去ることにした。心残りはないつもりだ。
グライトはクロスに声をかけた。だがクロスは此処に残るらしい。もう少し話したいと言っていた。クロスは此処でいつもダリダンと外界について話しているのだそうだ。今回もその報告で訪れたと言ってダリダンの向かいの椅子へ腰をかける。とても楽しそうだ。実際、楽しいのだろう。
グライト達はそんなクロスの邪魔をせず、ダリダンの後ろにある大きな門を静かに出る。そこにワープの魔法陣があるらしい。魔法陣に乗ってグライト達は各自物思いに耽る。ソラはそんなグライト達を見て何を思っただろうか。