複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.120 )
- 日時: 2014/02/22 23:04
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
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夜の街に出たグライト達、さっそくトラブルに巻き込まれていた。
トラブルとはなにか、それは露店を回っている時だった。
グライトは初めて露店を見た。とてもにぎわっていて楽しげだ。
露店は色とりどりの蛍光灯で塗り固められていて、特に祝い事もないのに華々しい光を放っている。
外を歩いているのは大半が厳つい男の人、美しい女の人、怪しい人物——その中に一人、グライト達と同じ年齢の女の子がいた。金髪で何処か捕え所のない紅い目が特徴だ。
その子は何をしに外へ出てきたのか、うろうろとしている。興味がわいたグライトとソラはその女の子の後に続いた。
少しして、女の子は曲がり角を曲がったところで怪しい男たちに呼びとめられていた。女の子は何ともなさそうにその男たちをあしらうが、男達は諦めない。
その様子を眺めてソラはグライトに耳打ちする。
「あれ、奴隷売りじゃないか?」
「奴隷売り?」
「お前知らないのか? あいつらにつかまったら売りだされて最後、死ぬまでこき使われるんだ。なにに使われるかは主人によるけど……女は高く売れる」
「じゃあ助けてあげようよ、そこまで聞いて見て見ぬふりはさすがに……」
「勝てるのか?」
「さぁ……?」
グライトの言葉にソラは呆れつつ、だが飛び出していく。グライトも遅れつつ後に続いた。
突然曲がり角から飛び出してきたグライト達を見て、男達が言葉を交わす。
「何だお前達?」
「まぁまぁ子供が増えただけじゃねぇか、おいお前達。お前達もチョコレート食いたく寝ぇか? おいしいぞ」
「まぁそうだな。このチョコレートは特別製なんだ。食べたら癖になるぞ〜! お前たちにだけなら無料で譲ってやろう」
そう言う男二人。その後ろにも二人。それぞれ筋肉質で体がグライト達よりはるかに大きい。
そんな男たちにソラは怯まず言った。グライトはソラの言葉に耳を傾ける。
「はっ! おっさん、そんなもんに最近の子供はつられないぞ! どうせ奴隷売りか、人身売買屋だろう? さっさとその子置いてどっかいけ! じゃないと酷い目に合わせてやるぞ」
「ちょ、ソラ、それは言いすぎ……」
「グライト怖いのか?」
「い、いや、別に……!」
強がっているグライトをよそに、男達はソラの言葉を聞いて笑いだす。ソラは癪に障ったのかさらに叫ぶ。
「なにがおかしい!」
腹を抱えて笑い転げる男達。その緩みきった下品な笑みのままソラに言う。ソラはそんな男を睨む。
「おじょうちゃん、あんまりなめた口聞いてるとお前が痛い目見るぞ?」
「うるさい! さっさと去れ!」
「チッ! めんどくせぇガキだ、お前等やっちまえ! ガキなんてわんさかいるんだ、三人ぐらい問題ないだろ」
そう言った男の言葉と同時に後ろに居た二人は前に出てくる。手をゴキゴキと嫌な音を鳴らしながら男二人は殴りかかってきた。
グライトは軽く逃げ腰だ。だがソラは立ち向かおうと愛刀の鞘を抜いた。その一連を金髪の少女は黙って眺めている。何を考えているのか、グライトには測りきれない。
そして——今に至る。
はっきり言って男二人の力は圧倒的に強く、グライト達で勝てるかどうかわからなかった。
おされ気味なのを感じながらグライトは男の拳を避ける。
ソラは愛刀を振り回しながらぼーっと突っ立っている少女に言葉を投げた。
「おい金髪の奴! さっさと逃げろ! 夜中一人で歩くんじゃないぞ!」
だが金髪の少女はなにもいわない。ごそごそと鞄から何かを取りだす。
とりだした物は鍵爪だ。鋭く磨かれたそれを少女は手に嵌めて構え、そしてグライトに殴りかかっている男に、勢いよく飛び付いた。
男は不意をつかれて態勢を崩す。
「このガキッ!!」
驚きと怒りをはらんだ声で言って背中に張り付いている少女を捕まえようと手で空を切る。
少女はそんな男を見ながら呟いた。
「あのね、ボク、守られるほど弱くないから」
それははっきり隣に居るソラの耳にも聞こえる。
少女は流れるような手つきで男の頸筋を掻っ切る。皮は一瞬で裂け、血を噴き出す。
次に少女はソラが対峙している男の足へと飛び込んだ。うまく足を引っ掻き、態勢を崩した所、畳みかけるように頸筋を切った。男二人は崩れる様に倒れた。
それを見ていた奴隷売り二人はのけ反り、逃げようと足を動かす。
二人の行動を一番初めに感じ取ったグライトは逃がすまいと走る。だが折れた木刀じゃ問う体太刀打ちできないだろう、そう思った時、リーブルがどこからか現れた。
リーブルは木刀から弓へと青い光で橋をかけ、同化する。グライトは訳がわからなかったが、立ち止まりその二つを手に取った。
すると——弓に合わさるよう折れた木刀が矢になった。そしてグライトは不思議と集中力がわいてくる。ぐっと力を込めて弓を撓らせ、二人の男を狙って矢を放つ。矢は二つに裂け、二人の男を貫いた——その様子をソラと金髪の少女は唖然と見ていた。
一番驚いていたのは、グライト自身だ。いつ弓を習ったのか、いや、習った事はない。今さっき形を真似してみただけだ。
グライトは意識を取り戻すようにハッと顔を上げ、男たちを見て慌てる。
「そ、そんなことより!」
グライトは駆けだした。もしかしたら男達が死んでいるかも知れないと思ったからだ。
男に近づくと見事体の真ん中を射抜かれていた。グライトが矢に手を伸ばすと矢は光と共に散って行く。残ったのは折れた木刀、そしてリーブルだ。リーブルは倒れた二人の男の上で毛繕いをしていた。
「し、死んだ?」
恐る恐る男をひっくり返すグライト。男は「うぅ」と唸って気絶している。ホッと胸をなでおろし、ソラと少女を呼んだ。
近寄ってきたソラと少女。ソラは気絶している男二人を軽蔑するような目で見る。
「生きてるのか? 俺は殺してしまいたい」
「ダメダメそんなことしたら犯罪者になるよ。放っておこう、きっとこれに懲りて止めるよ」
「そうは思わない。グライトが殺したくないのなら俺が……」
ソラは執念の色を濃くして男二人を見下ろした。手に持っている愛刀を立てるように持ち、真っ直ぐ下に降ろそうとした時、金髪の助けてあげた少女が静止の声を上げる。
文句を言いたげにソラは振り返るが、少女は任せてと言って何処かへ手紙を書いた。
「これで……よし! じゃあよろしくね伝書鳥さん」
手を振る少女。伝書鳥は真っ直ぐ何処かへ飛んで行く。そんな少女にグライトは尋ねた。
「どこへ手紙を?」
「死神さん達まで飛ばしたの。それより!」
身を乗り出し、グライトと顔を近くする少女。
「かっこいいね! 貴方なんて名前?」
「ぐ、グライト……」
「グライトね、グライト……僕はユーノ! なんでかわかんないけど旅してるんだよ! ねぇ君も旅しているんでしょう? 君の旅に一緒につれてってくれない?」
断ってもついてくる、そんな雰囲気だ。そんなユーノとグライトの間に割り込むようソラは言った。
「お前ユーノとか言ったな? 何もんだ? やけに腕が立つようだけど……」
ソラの疑問にユーノはわからないと答えた。
「そんな事より、いいの? だめなの?」
グライトの方を振り返り、せがむような顔でユーノは再び問いかける。
「俺は構わないけど……ソラは?」
「別に」
そっぽを向いてソラは答えた。グライトはその返事に納得し、笑顔で手を叩く。
「じゃあミキさんに聞いてみようよ。ユーノちゃんだっけ? どこに泊まってるの?」
「この奥のらいら荘ってところ」
「一緒だ、じゃあもうかえろうか。あんまり街、見れてないけど……いいよね? ソラ」
グライトの問いかけにソラは答えない。さっさと歩きだしてしまった。グライトはそんなソラの態度に首を傾げたが、後に続く。その後ろからユーノはついて行く。ニコニコとご機嫌で、少し頬を赤く染めていた。