複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.129 )
- 日時: 2014/03/01 21:03
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
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水を汲みに来たユーノとソラ。その間口は一切聞いていない。湖の前でバケツをもって立っていたユーノはその雰囲気に耐えきれず、ソラの方を見た。ソラは何を考えているのかわからない表情をしている。おずおずと口を開くユーノ。
「ね、ねぇソラ」
ユーノは声をかけてみたがソラからの返事はなかった。代わりに紫色の不思議な瞳をユーノに向ける。ユーノはムッとして少しきつい口調でもう一度言う。
「ねぇってば!」
「……なに?」
ソラはいつものムスッとしたような表情でユーノを見た。
ユーノはソラのムスッとした表情が不満だったのか、何か言ってやろうと口を開きかけて止めた。かわりに肩を落としてソラを見る。
「……ソラはなんでそんななの? ボクと仲良くしようとか思わないの? まぁ別にボクはいいけど、グライトがいれば」
フンと鼻を鳴らしてバケツを持ちあげるユーノ。
そんなユーノを眺めるように見ているソラ。少し警戒心が窺える。ソラは相変わらず人間と言う物をあまり信じられないらしい。過去に何があったのか、あれからグライトは何度か尋ねてみたが全てかわされた。あまり話したくないのだろう。
それをしらないユーノから見れば自分勝手に見えるだろう。だがソラは特に自分を弁解することなく、ただ黙々とバケツに水を入れている。
「ソラは何のために旅をしているの?」
「は?」
「グライトは秘宝を集めるため、ミキは仕事と歴史を調べてる。ソラは?」
「……別に意味はない」
間を開けてそう言ったソラの横顔は難しく歪められる。
ユーノはそんソラをぱっと顔を上げてほほ笑んだ。
「なら、ボクと一緒」
「……なんでそうなるんだよ」
「ボクだって特に意味はないんだ。此処に居る意味もわからない。ただグライトについてきただけ、それまでも色々歩いてたみたいだけど……」
引っ掛かるようなユーノの言い方に、ソラは「どう言う事だ」と尋ねてみる。
ユーノはソラからの初めての問いに笑顔で素直に答える。
「ボクは記憶が無いんだ。だから何故アルモード共和国にいたのかもわからない。でもいいんだ、いい出会いをしたからね」
そう言ってにっこり笑うユーノに、ソラは何故か怒気を孕んだ声で言った。
「……いいのか?」
「え?」
「記憶がなくていいって言うのか?」
「なくていい、って言うか、思い出せないんだもん仕方ないよ」
気弱に言い返し、首を傾げたユーノ。ソラは「はぁ」と息を吐きだす。
「お前は逃げているのか」
淡々とした声に、ユーノはカッと頭に血を上らせる。自分でも何故こんなにもイライラするのかわからない、ただ止められないのは事実だった。ユーノは声を低くしてソラを睨む。
「だれが逃げてるだって?」
「お前だ」
「なんで……なんでそんな事言われなくちゃならないの!」
ピシャリと言い放つユーノ。
ソラは気にせず水を入れ終ったバケツを二つ抱え歩き出す。ユーノの顔は見なかった。
「何でもクソもそのままの感想を言っただけだ。何が悪い? 本当の事だからか?」
ソラの冷たい態度にユーノはさらに怒りを募らせる。先ほどの喧嘩の事もあったからだろう、ユーノの沸点は低くなっていた。ソラはそんなユーノの気持ちなんてくみ取らず、グライト達がいる方へ歩き出す。ソラの後姿にユーノはキュッと唇を噛んで言い放った。
「いっつもいっつもそんな事言ってさ! ボクの何が気に入らないの? そんなことばっかり言って……自分はどうなの? あんただって……ッ!! この……わからずやッ!!」
涙を流しそうになるが、こらえてユーノは距離を開けてバケツを持って歩きだす。バケツに入っていた水は少し外にこぼれた。だがユーノは気にせず歩いた。周りに少し生えている木は葉っぱがあまりない体を、吹き抜ける風に任せて揺らした。閑散としたこの土地はユーノの内心を現しているような不安感をあおる。ユーノは足早にソラの後に続いた。