複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.130 )
- 日時: 2014/03/01 21:27
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
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帰ってきたユーノとソラの雰囲気を見てグライトとミキは一瞬笑顔がひきつる。険悪その物を連れてきたような二人の空気。
その空気を打ち破る様に先ほど倒れていた筋肉質な男「ライガン・ヴェルドー」は飛び上がった。そして瞳孔が開いているような瞳でグライト達をチラリと見る。その威圧的な雰囲気と大柄な体に隣で座っていたグライトは怯んだ。ライガンはそんなグライトを前に立ちあがり、声を発する。
「お前達は誰だ! むっ奴はどこへ行きおった!!」
ビリビリと震えるような大声でそう言ったと思ったら、キョロキョロとあたりを見渡す。
そんなライガンを座ったまま、下から見上げる様にグライトは見た。
「その、一緒に倒れていた人はそこで……」
「なんだと!? 俺が倒れていただとぉ! 何と言う失態だ! 小僧、ならばお前が助けてくれたと言うのか?」
「見つけただけだけどね」
「ならば礼を言おう、感謝する! 小僧名は何と言う?」
「グライト。おじさんは?」
「ライガン! 名乗るほどのものではない!!」
そう言って大口を開けて笑いだすライガン。その声にミキが見ていた少年も起き上がる。
「うるさいでござる……」
目をこすりながら起き上ったこの少年は「川村猫衛門(かわむらねこえもん)」と言い、侍になろうと日々修行している少年だ。悪霊退治を基本として剣の腕はセントリア大陸No.1とまで言われている。
「起き上がったな若いの! さぁ勝負の続きだ!!」
「むっ! 望む所でござる!!」
二人は起き上がったと思ったら唐突にお互いの得物を構える——と思われたのだが、どうも二人の手には何も持っていないように見える。実際、持っていなかった。
元々ライガンは「巨鎚」を、川村は日本刀「斬心刀」と言う愛刀を持っていた、だが今それが手に無い。何処へ落としてしまったのだろうか? 二人はあわただしく四方八方へ散って行きそうになる。
「ちょ、ちょっと……!」
グライトが声をかける暇もなく、二人はそれぞれ顔を見合わせてお前が盗っただとか盗って無いだとか言う話しを始めた。
そんな二人をどう収めようか、静かに考えて始めるミキ。
バケツを持って帰ってきて今もまだ険悪な雰囲気を飛ばしているユーノ。
収拾のつかない状況になってしまった。
そんな状況を打破するようにソラは持っていた二つのバケツを握りしめ、ライガンと川村の元へと歩く。
何をするつもりだろうか? 見送るグライトとミキ。
ソラは二人の近くまで歩いて行き、立ち止まる。そしてバケツの中の水を思い切り二人に向かってぶちまけた。水は勢いよく二人に降り注ぎ、周りが見えなくなっていた二人の目を覚ます。
それを唖然と見ていたグライトとミキ、そしてユーノ。口を開けたまま、何とも言えない三人をよそに、ソラはため息を吐きだす。
「落ち着いたか? さて、状況を話してもらおう。言っとくけど俺達はこんな所で油売っている暇はないんだ」
ソラの冷静な言葉に、ライガンと川村は落ち着きを取り戻した。そして二人は順を追って話し始めた、何故こんなことになったのかを。
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このサブリア大陸に住みついているライガン・ヴェルドーは不屈の精神と、破天荒な思想の持ち主だった。彼は「オーク」と言う種族の血を引いていて、その特徴として大きな犬歯とやや人より細長い耳を持っている。
オークと言うのはよく言う悪魔と同類の者。かの有名なゴブリンの生みの親となった生物だ。
そんなオークは醜いだとか邪悪だとか噂は絶えないが、事実そこまで悪い奴はいないと少なからずライガンは思っている。
噂なんて一人歩きする物だ。実際存在しているライガンは口こそ悪いがちゃんとした人として生きていた。
ライガンは今日も戦士として強くなるため、木々を枯らす周辺の魔物を掃除していた。ライガンは魔物を狩るのに対しては負けを知らない。全ての魔物の戦い方、癖を体で覚えているのだ。
運動程度に魔物を倒していると、遠くに人の姿が見えた。それは華奢な少年だ。
その少年はどこから力が出てくるのか、周りを囲んでいる魔物をなぎ倒していく。無駄な殺生は嫌いらしく、全て峰打ちで済ませていた。
その少年に興味を引かれたライガンは少年に勝負を申し込むことにした。さっそくその少年に近づき、好戦的な瞳で彼を見る。
「おいお前、俺と勝負しろ! お前の強さに興味がある!」
「なんでござるかお主は」
警戒心をあらわに少年はライガンの様子をうかがった。ライガンは続ける。
「俺はライガン! 名乗るほどのものではない!」
「ちょっと声のボリューム下げれないでござるか……耳が潰れそうでござる」
「もとよりこの音量、容赦せい! では参るぞ!!」
ライガンはそう言って巨鎚を構え、容赦なく少年に喰いかかる。少年は慌てて後ろへ避けた。ライガンの巨鎚は地面を裂き、全てを破壊する。少年はその強大な力に少したじろいだ。
「無駄な殺生はやめるでござる! 拙者はお主と戦う理由が無い!」
「ガハハハハッ! 問答無用! その力、存分に発揮しろ!」
ライガンは別に殺し合おうと言うわけではなかった。ただ、少年はライガンの言葉をどうとらえたのか、悪者と決めつけてしまったようだ。少年の目つきが変わった。
「拙者は川村猫衛門。そこまで言うなら全力を持って悪を屈伏してやるでござる!!」
川村猫衛門と名乗った彼は、このサブリア大陸にたまたまお使いに来ていただけだ。彼の友人である探偵に頼まれた物資を運ぼうとしていた所、ライガンに絡まれた。
この川村の剣は「斬心刀」と言い、人以外の何でも切れる。そう、その人物の悪意や敵意でさえも断てるらしい。
川村はその斬新刀を思い切りライガンに向けて振りあげ、降ろした。そのスピードは思わずライガンでさえ、驚いてしまうほどだ。
「ガハハハハッぬるい! そんなもの効かぬわ! 俺の巨鎚の攻撃力を見習え」
ライガンはそう言って大きく振り被る。川村はその隙を突こうとしたが、あの破壊力を見てから近寄りがたく、後退するしかなかった。
「ぬぅ……どうも懐に入りにくいでござる……! こうなったら……!」
川村は再び構えなおす。何をするつもりなのだろうか? ライガンは少し楽しみに自分も構えなおした。
「秘技『華麗米斬り』!!」
「なに! それならこっちも信念でお前の太刀筋砕いてやるわ!」
二人はそうしてお互いの全力の力でぶつかる。その時、周りに区々生えていた木々は倒れ、近づいていた魔物は全て飛ばされる。
ライガンと川村はと言うと、お互いの全力を受け止めて気絶してしまったようだ。そこへグライト達が来るのは数秒後の事だった。
◆
それを話し終え、ライガンと川村はお互い握手をする。ライガンは川村の強さを確認できて満足なようだ。川村もライガンが悪者ではないとわかったので一安心した様子だ。
川村はグライト達に振り返り、疑問を投げかける。
「ところでお主らはなんという名前でござるか?」
グライトは自分とミキ達の名前を教えた。そして笑顔で無くした武器を探すのを手伝おうかと申し出る。
二人は助かると言ってさっそく捜索を始めることにした。二手に分かれて探すようだ。川村、グライト、ソラは東の方を。ライガン、ミキ、ユーノは西の方を探すことにした。