複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.154 )
日時: 2014/03/12 10:19
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: QlSid/7F)



 服をすっかり選び終わったグライトとユーノは、興味の尽きない国を適当にぶらついていると数時間が立った。
そろそろミキとソラに合流しなければならない。
先ほどからユーノはグライトに選んでもらった服をさっそく着てすっかりご機嫌だ。そして何十回目になるだろう会話を繰り返す。

「似合ってる?」
「うん可愛いと思うよ〜」

グライトがそう言うとユーノは嬉しそうに笑う。それを見てグライトも少しほほ笑む。
そんな話しをしながら歩いていると、自分達が違う道へ入っている事に気が付いた。
グライトは辺りを見渡してユーノに告げる。

「あれ? 迷子になったかもしれないなぁ」
「えぇ! 大変、来た道戻らなきゃ!」

そんな会話をして振り返る二人。グライトはキョロキョロと再び周りを見た。
この通りを飾っている賑やかな蛍光灯がちらほらついてきている。
グライトはきっとここは娯楽街の方だろうと予想した。そして娯楽街にはミキに念入りに此処に入るなと言われていた。何故だかわからない。だがグライトはそれを思い出して慌てて歩きだした。
グライトの隣を歩いていたユーノは、手を組んで歩いている男女を興味津々に見ている。なかなか足が動かないユーノを振り返り、グライトは手を引っ張った。

「はやく帰ろう?」

そう言ったが、ユーノが聞いているのか……聞いていないだろうと予想される。グライトはとりあえず引っ張るように歩いた。
そうして少し歩いていると、ユーノは突然いたずらっぽく笑う。なんだろうかと思いグライトは口を開きかけた。するとユーノはグライトの手を逆方向へと引っ張り歩きだした。

「ちょーっと見て回ってからでも遅くない?」

にこりと笑って反対側へ歩き出すユーノ。ダメだと言われたらやりたくなる、誰だってそうだろう。
グライトは心配になったが、好奇心が勝って少しだけ奥へ行ってみようと思った。

二人して娯楽街を奥へ奥へと進む中、にぎやかな声を発している店があった。どうやらカジノらしい。
グライトとユーノはカジノに入った事が無い。莫大な金が動く場所、その程度の認識だ。
ユーノはそのカジノをしげしげと眺め、振り返った。

「ねぇ楽しそうだし、一周ぐるっと回るだけ入ってみない?」
「大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だと思うよ。もしもの事があったならボクが守ってあげるし!」
「いや、そう言う事じゃなくて……てか気になってたんだけど……ユーノの中での俺はそんな弱いの?」

落胆したグライトだが、聞く耳を持たないユーノに渋々ついて行く事にする。扉に手をかけるユーノは、実に生き生きしていた。


 扉を開けて中へ入るとそこは薄暗く、歩くにはちらほら見える黄色のライトが頼りだ。
カジノの中に居る人は何もそんなに厳つい人ばかりではなかった。普通のサラリーマンの姿も見える、その中で意外だったのは柔和そうなお爺さんの姿だ。
テーブルに座って賭けに興じている人達は、楽しそうな顔の者、絶望の淵に立たされたような顔の者、ただひたすらに黙々と賭け金を積み上げる者、各自様々だ。
グライトはこの不思議な雰囲気に慣れないのかそわそわとあたりを見渡している。

「あんまりキョロキョロしたら目立っちゃうよ。ボクについてきてたら大丈夫」
「どこから来るの? その大丈夫って言う自信は……」
「だってここには皆賭けをしに来てるんだよ? ボク達にわざわざ絡むしょうもない奴らなんて居ないでしょ」
「そうかなぁ」

グライトの中に不安は残るが、ユーノは屁でもないぐらいだ。
しばらく歩いていると二人に、一人のウェイターが近づいてきた。

「君達未成年だね? ここは立ち入り禁止だよ。さっさと出て行きなさい」

そう言って営業スマイルを向けるウェイター。
グライトが「はい」と言いそうになった所、ユーノはその口をふさぐ。

「ボク達はもう成人してるよ。それより何か飲み物頂戴? 喉乾いちゃったし。ここサービスでしょ?」
「ほぉ……っとまぁ、そうですが。ゲームをしないお客さんにお飲み物だけお渡しするのはちょっと……」
「ゲームしたらくれるの?」
「そうですね、サービスさせていただきますよ。でもお金持ってないでしょう、お譲さん? お金のない方は出て行ってもらいます。そう言う営業方針なので」

爽やかな笑顔でユーノの腕を引っ張り、歩きだすウェイターの男。ユーノはムッとしてその手を払った。

「ちょっとなら持ってるよ!」

その言葉にウェイターはニタリと笑って「なら」と続けた。

「ワンゲームして行きますか?」

そのウェイターの顔は悪だくみをしたような顔だった。その様子を感じ取ったグライトはため息しか出なかった。