複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.168 )
日時: 2014/03/18 14:31
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: bVlGyEWK)



 四人が一度瞬きをした時、そこはもう砂漠のど真ん中だった。

周りにエースとグレイシアの姿は見えない。いつのまにかグライト達は地上へ送られていたらしい。
結局エースとグレイシアの関係は分からなかった。付き合っているのか、付き合っていないのか、今更になってそんな事が気になりだす。
グライトは足元に居る黒猫を見た。リーブルが戻ってきたらしい。グライトの足元で毛繕いをしている。

「……悔しいな……。ハハ、俺強くならなきゃいけないね、リーブル?」

グライトは小さな声でそんな事を呟いてみた。リーブルはその言葉に反応するように「にゃあ」と一言鳴いた。グライトの呟きはミキ達には聞こえなかったみたいだった。
ユーノは立ってぼーっと地面を見つめているグライトを見て思わず飛びつく。

「グライトッ……! 体、大丈夫? 痛いとこない? あのエースって奴結構強かったね、でも戦ってるグライトかっこよかったよ!」
「はは、負けちゃったけどね。ありがと〜ユーノ」
「やっぱボクが守ってあげる! 心配だもん!」

グライトの傍まで歩いてきたソラはグライトの服を掴み、焦りが混じった顔でグライトを見ている。

「死んだかと思った」
「縁起でもない事言わないでよソラぁ。まぁ……怖かったけどさ」
「うん、ちゃんと生きてる。よかったな」

笑いあう三人を見ながら、ミキも少し遠くで立って笑っている。
その時だった。ミキの視界に黒い煙のようなものが入った。

「……え?」

ミキはあたりをきょろきょろと見渡す。黒い煙は無い、だが気になるのかじっと遠くを見た。
黒い煙がまた見えた。見た事のある黒い煙だ。煙じゃ無ければ影だろう。

(なんでしょう……? 胸騒ぎがしますね……)

ミキはもう一度グライト達を見る。グライト達は丁度ミキの近くまで歩いてきていた。


 とりあえず四人は日も沈んできているので、寝床を探すべく水の近くへと歩く。この砂漠で水なんてほとんどないのだが、たまたま運がよく泉を見つけた。四人はそこにテントを張って晩御飯を作る。満腹になり、四人は寝る準備を始めた。

今日の夜の見張りはミキだった。
ミキは皆が寝床へ着いた時火をおこし直し辺りを警戒する。

その夜は妙に黒が深い夜だった。

ミキはあの歴史書を読んでいたのだが、なぜか集中力が続かなかったので、ぼーっとすることにした。

「寒いですね……」

白い息を吐き出しそう言うミキ。このサブリア大陸と言うのは温度差が激しく、日によって寒かったり暑かったりするらしい。不思議な大陸だ。
そんな事を考えていると唐突にどこからか「にゃあ」鳴き声がした。

「うわっ! 居たんですか黒猫さん」

単純に驚き、隣の黒猫を少し撫でる。大人しい猫だ。導きの者、不思議な存在。ミキはこの猫に興味が尽きない。

その時——また見たことある黒い煙が視界に入る。

「………?」

黒い煙は夜を纏い、その姿を現さない。ミキは訝しげに眉根を寄せた。

風が通り抜ける。前に広がる泉はそれに反応し、波紋を描く。

ミキはそれを見ながら辺りを警戒した。
もしかしたら——そう思った刹那、声が響く。風と共に通り抜けるような声だ。

「おい、ミキ」

確かにそう言った。ミキはビクリと肩を鳴らし、周りを警戒する。だがその声を聞いて敵意や殺気は感じなかった。だから妙に力が抜けるのだ。

「……誰ですか?」

答えは無い。夜は明けようとしている。そのはずなのに、黒い幕はその姿を消さない。
いつのまにかミキの隣に居たはずのリーブルは姿を消していた。


 それからその翌朝の事だ。
グライト達が起き出した頃、ミキの姿はそこになかったのは——……。