複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.173 )
日時: 2014/03/22 16:30
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: bVlGyEWK)

第十八話 ここはどこですか?

 グライト、ソラ、ユーノは三人唖然と砂漠を見渡している。
どこへ行っても砂しかない。今まではミキが地図を見て方向を決めてくれていたので、三人はあまりそう言う方向感覚が無かった。

「ど、どうするグライト……ここどこらへんだろ?」
「き、きっと……なんとなく北? らへんかなぁ……?」

曖昧にそう言ってグライトはユーノに苦笑いを向ける。あれからずっと歩いている。日はカンカン照りでまるで皮膚が焦げているような感覚に陥る。
グライトとユーノは苦笑いで空を見上げたり遠くを見たりと独断で動き出していた。
ソラはそんなグライトとユーノに呆れた視線を向ける。

「漠然とし過ぎているぞグライト。人……人に道を聞いてみよう、な?」

最後は曖昧だったが、そう言って人を探し出すソラ。グライトは肩を落としてソラに言う。

「ソラ、人なんて見た?」

その言葉に口を閉ざすソラ。
そう、ずっと歩いていると言うのに人と言う人を見ていなかった。むしろ人里から離れて行っている。
ソラは視線を泳がせて結局空笑いを響かせた。

それからしばらく無言になる三人。そもそもミキはどこへ行ってしまったのだろうか?

三人は夜の事を思い出す。特に変わった様子のなかったミキ。いつも通り一緒に食べて少ししゃべった。しかし朝起きるとそこに見慣れた姿は無く、おいてあったのはミキがいつも持っていた食料や水が入ったリュックだけ。
グライト達は始め散歩にでも行っているのだろうと考え、ミキの帰りを待った。
だがいつまでたっても帰ってこないミキに不安を覚えた。妙な空気が三人を包み込むと同時に三人は歩きだした。きっと帰ってこない、そう考えたからだ。

なぜミキがグライト達を置いて行ったのか、それはわからない。ヒントは何もなかった。誘拐されたわけでもなさそうだ。じゃあいったいどこへ? それだけが脳内を駆け巡る。

グライトはふと頭の中で何かが繋がる気がした。何が繋がったのか、それはまだ分からなかったが、確かに何かがふと浮かんだのだ。

(……そう言えばクウゴもどこかへ行ったよな? 関係あるのかな?)

探る様にぼーっと砂漠の砂を見ていると、遠くに木が見えた。
それはユーノとソラにも見えたようで三人は目を合わせて頷く。

「あそこ行ったら水とか食べ物とかあるかも!! 行ってみよ、ユーノ、ソラ!」

グライトは走ってそちらへ向かう。日は傾きかけていた。ちょうどいい、此処にテントを張って一晩過ごそう。

三人は走って一本の木まで近づく。奥を覗くとさらに二本、三本と木が増えている。どんどん奥へ走ると、立派な林へ足を踏み入れたようだ。水場も近くにあった。その隣にテントを立てて一晩過ごす事にする。

「グライト、よかったね! ボク達運がいいかも!」
「ほんとどうなるかと思ったよ〜」

グライトとユーノはほほ笑みあい、水をバケツに溜める。火をおこし、テントを立てて晩御飯にする。
御飯がすんだらユーノとソラを寝かせる。グライトは火を改めて焚き直し、ミキが置いて行ったリュックをあさる。

「地図発見! コンパスもある!」

一人はしゃいで大きな地図を広げた。コンパスはその隣へとりあえず置いておく。
そこでなんとなくコンパスの針へ目をやった。

「ん? ……コンパスの針がグルグル回ってる……?」

おっかしいなぁそう呟き地図の印しを見た。ミキがこまめに歩いた所をマークしていたらしく、現在地の予想は大体ついた。
グライトは北へ進んでいたと思っていたが西へ進んでいたようだ。そしてこの林は地図には描かれていなかった。どういうことだろうかと頭を捻る。

その時、パキッという音が聞こえた。

グライトはすぐさま身構える。足音はだんだん大きくなってきた。グライトの心臓の音もだんだん大きく高鳴る。

そして——

「あっれ? なんだオマエ〜? ゼロじゃない……ってこっちこっち! こっちだよ〜」

間の抜けたような声が後ろから聞こえた。確かに気配はグライトの眼前にあったはずなのに。
そう思っている間にその者はグライトの真後ろに立って地図を覗きこんできていた。
何かの儀式でもするのか法衣を着こんでいる。首の鎖が前屈みになるとジャラリと鳴った。

「……!!」
「びっくりした? てかその地図此処じゃ使い物にならないぞ」

くすりと笑ってグライトの頬を指で突く。その中性的な顔立ちからは性別はわからない。

「ちょ、だれ?」

意表を突かれたグライトは思わずのけ反り、バランスを崩した。

「はは、オマエ『Me』が敵なら刺されてたよ? もうちょっと頑張れ若者! ただ察知する能力は長けているみたいだ。そこを伸ばせば……ってそんなことどうでもいいか。オマエ、人間か?」

射抜くような瞳はおおよそ人間のものとは思えない神秘的な輝きを持っていた。まるでアメリアやダリダン、グレイシアを前にしている時の感覚だった。
相手に敵意が見えなかったが、グライトはしびれ薬でも飲んだような感覚に蝕まれた。ひたすらに首だけはカクカクと頷いていた。

「久しぶりに見たなァ生きてる……それも生身の人間って。『Me』死んでる人間ばっか見てきたからなぁ」

感慨深そうにそう言う、人なのかもよくわからない人物。
この人物は「ニルヴァーナ」と言ってこの大陸、「マケドニア大陸」の守護神の様なものだ。
様なもの……と言うのは、そもそも守護神と言うのはその大陸を出ないのだが、このニルヴァーナは、ふらりと何処かへ消えたりする自由奔放さを持ち合わせているからだ。

「『I』ニルヴァーナ。オマエは?」
「俺? ……グライト……その〝I〟とか〝Me〟とかって言うのは……?」
「は? 『I』、『Me』って言うのは英語で『私は』って言う意味だろ? 知らないのか? まったく……イマドキの若者って、わからない」

首を振るニルヴァーナ。グライトは「はぁ」と言うマヌケな声しか出なかった。

「まぁそんな事どうでもいい。さっさと此処から去れ。さもなくば殺されることになるぞ」

物騒な事をさらりと言って、さっさと立ち去ろうとする。グライトはそんなニルヴァーナを引きとめ、なぜ殺されるのか尋ねた。

「そんなの決まってる。ゼロが人間を好まないから。大陸の王がそう言っているんだ、どうしようもない。だからさっさと立ち去れ。まぁ……ばれない様一夜を過ごすんだな」

ニルヴァーナはそう言って、いつの間にか濃く立ち込めていた霧の中へ消えた。
グライトは慌ててその後を追うが、姿は無く、渋々また地図を睨む。

(大陸の王……ってなんだ? ここサブリア大陸じゃないのかな、だとすればここは一体……?)

グライトは一晩ここがどこなのかを考えていたのだが、元々知識の乏しい頭ではどうにも答えが絞り出せず、とりあえず違う土地だと言う事で収まった。

そして日は昇る。
光が木々の狭間へ入ってくると共にひんやりとした空気が立ち込めた。