複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.187 )
日時: 2014/03/27 14:00
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: 6sQlqYA7)

第十九話 家出娘と旅芸人

 セントリア大陸は大富豪や豪族、貴族達がこぞって作った裕福な大陸。
この大陸には一つ、大きな国があり、そこに様々な人が集まり、その形態をなしている。
国に王は居ない。国の方向性を決めるのは政治家と言う頭のいい人達。昔は王がいたらしいが、何らかの理由で王座から降ろされたらしい。
その国、大きな国の名は「リッテム」。リッテムの人達は黒雲なんて関係のないような平和な顔をして暮らしていた。

リッテムに入ったグライトが初め思った事は物価が高いと言う事。やおや、果物屋、肉屋、どれをとっても商品の値段が高く、簡単に手を出すことをためらった。
そしてところどころに立っている大きな家、お城かと錯覚するほど大きな家を持った者もいた。
人の通行量は多く、ここにソレイユの民が密集しているような感覚に陥る。

「すごいね! 可愛い服がいっぱい!」

ユーリは先ほどからはしゃいでいる。ユーリの手に持っているアクセサリーや服と言うのは到底変えそうにない値段。

「フン……どいつもこいつも平和ボケしたような顔しやがって……」

ソラはそう言って不機嫌だ。人混みが嫌いなのか、中央広場へ行こうとしない。
グライトもあまり人混みと言うのは慣れていないので何となく落ち着かなかった。
だがそんな事を言っても仕方がない。どうにか金を手に入れ、食料を確保しなくちゃならない。もしかすると数日この国に居ることになるかもしれないので安く泊まれる宿も探さなきゃならなかった。
グライトは気の遠くなるような思いだ。

「とりあえず……どうしよっか?」

そう言ったグライトにユーリとソラも首を横に振る。
そんな三人の後ろから近づく気配があった。その人物はすごい勢いでグライトに駆け寄ってくる。
グライトはその勢いに気圧され、思わず折れた木刀を突き立てた。

「ぐえぇっ!! ちょ、ちょっとグライト……いた、痛い!!」

逆立ち気味の金髪の青年は腹を抱えて訴えた。グライトはその青年を見て目を見開く。

「え? え? なんで? なんでリュウがこんなとこに居るの!?」

慌てるグライト。金髪の青年を見て首を傾げるユーノとソラ。

この金髪の青年はグライトの友人、兄弟の様な物だった。勿論血はつながっていない。
名前は「リュウ・バラル」。「バラル王国」の王子。
その昔、バラル王国では内乱が起き、そこから命からがら逃げてきたバラル王の末裔。
バラル王国の内乱は全国に出回るほど有名だった。まだ幼いユーノやソラはともかく、大人なら誰でも一度は聞いた事がある言葉だ。
内乱を起こした人物、それはリュウの父親である「イギザル・バラル」。現在はこのイギザルがバラルの王をしている。
イギザルの行いのおかげでバラル王国は、反逆者と思われる者は少しでもその可能性を疑われると死刑される、もしくは奴隷などに売られると言う悲惨なありさまだ。
ドラファー帝国に続き問題のある国として、ブラックノートに載っている始末。
そんな国、父を嫌いリュウはバラルへ帰らない。代わりにあらゆる所を放浪していた。

何故リュウの様な人物とグライトが知り合い、それも兄弟ほどの仲なのかと言うと、リュウが亡国して間もないころ、行き場も無く倒れていた所をたまたま通りかかったグライトが助けたからだ。
それ以来数年一緒に暮らしていたのだが、ある日を境にリュウが姿を消した。手紙には「世界を見てくる」とだけ書かれていた。心配したグライトだが、リュウなら大丈夫だろうと探さなかった。
そして数日、例の黒雲が攻めてきたのはその時だった。

リュウは懐かしむようにグライトの頭を撫でまわした後、グライトの連れていたユーノとソラを見る。

「え、グライト女の子、ちょーかわいい!! あ、俺リュウ・バラル。名前は?」

ユーノに笑いかけるリュウ。ユーノは反応が遅れたが名乗った。ソラはそんなリュウを訝しげに見ている。

「……おいグライト、こいつだれだ?」

グライトは適当にかいつまんでリュウの事を説明した。説明を終える頃、リュウがグライトとソラを見る。

「お、こっちは男か? よろしく。まぁ殺気立つなよ、俺悪い奴じゃないぞ。な、グライト」
「リュウ、ソラは女の子だよ」
「え!? それは申し訳ない。改めてよろしく」

差し出された手をソラは掴まず、睨み返す。その睨みをリュウは性別を間違えた事と取ったらしく、慌てて謝った。

「ごめんって、でも間違えるのも仕方ねぇよ。もっと可愛い服着ろよ? 女の子だろ?」
「うるさい、そんな事どうでもいい。グライトの知り合いだって? なら助けると思って金を出せ」
「はぁ!? いきなりかつあげかよっ! こえーよこの子!」

ソラからの冷たい視線を受け流し、ユーノの方へと歩くリュウ。グライトはそんな二人の間を諌めてから経緯を話した。
リュウはそれならと食べ物をくれるそうだ。ついでに宿や安い店も教えてくれた。
なんとかなりそうだ。そう思いなおし、グライトは荷物を宿へ持って行く事にした。