複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.191 )
日時: 2014/03/28 18:54
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: 6sQlqYA7)



 とある場所、とある豪邸、とあるお嬢様の話し。
そのお譲さまは魔法使いと言う特殊な人間の部類に分けられる人間だった。両親も周りの家臣たちも優秀な魔法使いで、その中で育った少女は確かな魔法使いになれるとだれしもに思われていた。

だがそれは理想。

現実ではその少女に魔力なんて言うものはなく、杖を振ろうが呪文を唱えようが奇跡は起きなかった。
少女はそんな自分に失望した。彼女の将来を期待していた周りの人達はさらに失望する。少女は毎日毎日嫌味と戦っていた。あの子は優秀だなんて生まれた時からレッテルを張られたおかげでこんな仕打ちを受けた。
そしてなんて言う事だと思った。

そんなある日——

今日も続く嫌味に耐えかね晩餐を飛び出した。少女は行き場のない怒りをどうすればいいのか分からずにがむしゃらに歩く。

(家族とか、体面とか……私は私じゃボケェ!! しっかり私を見ろ! そして一つでもいい所があればそこを評価しろ! 一つの欠点に捕われるなんて見解が狭すぎる! 世界を見ろ! 魔法使いがいるか? 魔女はいるか? そんな一部だけを見て私の全てを評価するなんて……お前等は何か? 魔法が出来る〝だけ〟で神にでもなったつもりか?  身の程を知りやがれッ!! ……もう飽き飽きだわ、どこか、難しい事のない場所へ行きたい。そして新しい自分だけの世界を探して……)

それ以来、屋敷内で少女の姿を見る者は居なかった。
そう、少女は外へ出たのだ。狭苦しい家の中から、新しい世界を探しに。


 そして、その少女「アマリア・クラリーチェ」は現在セントリア大陸の中心にある国リッテムに来ていた。
リッテムはアマリアの住んでいた国とさして変わらない雰囲気が流れている。

アマリアはとりあえず泊まるホテルを探し出し、そこへ身を落ち着かせる。家を出て数カ月。アマリアは自分の仕込み杖を撫でながら思い出す。
自分でもすごく子供っぽい事をしているという自覚はあった。

(拗ねて家出なんて……)

そんな思いを吹き飛ばすよう外へ出た。気晴らしのためダラダラと街を歩いていると、争っている声が聞こえる。その声に引きつけられるようアマリアは中央広場へ向かった。



 中央広場。嫌がるソラを引き連れてリュウ、グライト、ユーノはそこへ向かっている。
中央広場には今日限定で行われる旅芸人の芸があるらしく、それを見に行こうと言うのだ。
どんな芸が行われているのかグライトとユーリは楽しそうに話している。それを見てリュウは和んでいた。

「めんどくさい。芸なんて……」
「まぁまぁそう言わずついてこいってソラ! おもしれーよたぶん」
「近づくなリュウ。触んな」
「ひでぇ」

ソラにそう言われつつもリュウはたいして気にもしていない様子だった。ソラはそんなリュウを初めて出会ったグライトにそっくりだと少し思う。なのでまだめげずに話しかけてくるリュウを何となく無下にはできなかった。


 広場についたグライト達を迎えたのは人だかりでは無く、喧嘩の声。何事かと足を速める。

中央広場で争っていたのは三人。

一人は金髪に探偵棒を被った人、名前は「ヨハネス=シュークリーム」このリッテムで「探偵」という職業をしている。グライト達が以前サブリア大陸で会った川村猫衛門の友人でもある。今日は「手品を使って泥棒をする」と言われている人を探しているらしい。中央広場に手品師がいると言われここまでやってきた次第だ。女の子に見える金髪のセミロングだが、れっきとした男である。

二人目は紫色の不思議な杖を持った人アマリア・クラリーチェ。ぶらぶらとしていると喧騒の声が聞こえたから立ち寄ってみた。そこで見た一人の少女が手品をしていただけで泥棒だと扱われた事が気にくわなかったらしく、見守るつもりが前へと出ていた。後には引けないと意地を張り、ヨハネスと喧嘩になった。

もう一人は不思議な服とは言えない服を着た人「リィナ・ベキスター」。中央広場で勝手にイベントを始めた旅芸人。儚い雰囲気と13と言う年齢の割に落ち着いている所がある。
ヨハネスに「手品をして泥棒をしている人をしらないか」と初め聞かれ、淡々と事件の内容を教えられた。全く知らなかったが、手品ショーが止まった事により客の一人からバッシングを受け、戸惑っているとアマリアが現れ、騒ぎが派手になってしまった。

戸惑うリィナをよそに、アマリアは白黒はっきりつけるため周りの人達を見渡した。
それを回りの人達は困惑の顔で見ているだけだ。グライト達も周りの客に混ざり、唖然と眺めている。
アマリアの凛とした桜色の瞳はリュウを捕えた。リュウにつかつかと歩み寄り、尋ねる。

「ね、貴方。芸に水差すのはどう思いますか? ダメですよね? 黙って見るべきだと思いません? その後に私情を挟めばいいと思わないですか?」

リュウはいきなり読めない話を振られてぎょっとしている。
ユーノとソラはそんなリュウを「かわいそうに」と言う目で見ていた。グライトだけ昔からついていないリュウを思い出し、またかと言ったような様子だ。
リュウの前に次に出てきたのはヨハネスだ。アマリアをしっかり見て弁明する。

「ぼくは別に水を差したわけじゃないと言っているじゃないか! ただ今追っている犯人が手品を使う人って事で可能性を感じて話しかけただけだよ。そりゃちょっと浅はかだったと思うけどぼくはそれどころじゃなかったんだ」

ヨハネスはそう言って頬を膨らます。それを見てショーをやっていた人物であるリィナは「まぁまぁ」と言っていた。顔は苦い笑顔だ。
また睨みあう二人。
巻き込まれたリュウはリィナと同じような苦笑いで三人をおさえようと何か言葉を発するが、聞き入れてもらえない。
どんどん収拾がつかなくなってきた所、グライトがふと呟いた。

「旅芸人さんはどうなの? 迷惑だった?」

リュウの後ろから顔を出し、そう言ったグライトに一斉に三人の視線が集まる。グライトはその視線に少し怯んだ。

「あたしは別に……でもショーがとまっちゃったからお客さんには悪いなぁと……まぁあたしの対応がしっかりしていなかったからこんな事になったんだけど」

遠慮がちにそう言ってリィナは「ね」とアマリアとヨハネスを見た。二人は腑に落ちない様子だったが、一旦喧嘩の声は止む。
その隙にリュウは口を開いた。

「じゃあさ、もうこの話は終わりで……もう一回ショーを初めからやり直したらどうだ?」

その言葉に周りの人達も再び盛り上がりだす。
グライト達も初めから見られると言う事で不幸中の幸いとなった。
そうして幕を閉じた喧嘩。渋々と言った様子だったが、ヨハネスもアマリアも客の輪へ戻る。
落ち着いた二人の様子にリュウはほっと胸をなでおろし、グライトに礼を言った。グライトは慣れた様子で「どういたしまして」と笑顔を向けた。