複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集〆切】 ( No.197 )
日時: 2014/04/02 15:29
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: 6sQlqYA7)

第二十話 強くなりたいか?

 充実した一日を過ごしたグライト達はリュウの教えてくれた安い宿に身を置く。
それぞれ各自の部屋へと移動し、グライトも一人になった。窓を見るとリーブルが前足で開けろとでも言うように叩いている。

「お前はいっつも何処行ってんだよ……まったく……」

グライトは面倒ながらも体を起こし、窓を開ける。冷たい風が心地よかった。
部屋はせまくて遠慮がちにスタンドライトが置かれている棚がある以外に何もなかった。
リーブルはしばらく動きまわった後、ベッドの上へと寝ころぶ。

「じゃまだよ俺の寝るとこなくなるからちょっと寄って」

グライトはむりやりリーブルを端へと追いやると、自分もベッドへ入った。
暗い闇が襲ってきた。



 やはりあの場所か。

グライトはそう思い目を開ける。目の前には真っ暗な洞窟の入口があった。中から恐ろしい何かが這い出てくるような寒気に襲われる。
珍しく隣にはリーブルが立っていた。そう言えばリーブルがいるのに出てくると言うのは今までにないことだった。

グライトは前へ一歩踏み出してみた。
いつもなら洞窟の入り口は一歩後退するのに、今日はそこにある。
違和感を感じたグライトはその洞窟を覗きこむ。中は真っ暗で何も見えなかったが、何かがいるような気配がした。
中へ入ると一気に力が抜けるような感覚になる。黒い感情がそこに渦巻いているようだった。

「誰かいる? 居るなら出てきてくれないか、暗くてよくわからないから光も持ってきてくれると嬉しんだけど……」

グライトが呼びかけると何者かが頷いたような気がした。
がさごそと音がする。それからほどなくして殺気を感じたグライトは後ろへ思わず飛ぶ。
気付けばそこに光はあった。真っ白な光の中に不気味に光る刃が浮かび上がる。それは先ほどグライトを狙って突き出された短刀の先。
グライトは息を飲む。

「ちょ、え!? 誰だ?」

グライトの叫びは空しく、短刀は容赦なく斬りつけてくる。グライトは必死になってそれを避ける。つい癖で懐の折れた木刀を取りだそうと手を入れた。だがそこにはいつもあるはずの木刀は無く、グライトはぎょっとする。
短刀はその隙を見逃さず、素早く突きをくりだした。短刀は見事グライトの頬を綺麗に斬った。夢であるはずなのにその傷からは血が流れ、熱が集まる。

「……っ!!」

そうしている間にも短刀は次々と腕や足を狙ってくる。よく見ると短刀だったそれはグライトのよく知る青い剣になっていた。いつの間にあちらの手に渡ったのだろうかと疑問を抱く。
ふと足元を見てみるとリーブルがそこに居た。おかしいな、そう思ったグライトはリーブルに問いかける。

「あの青い剣、お前がいなきゃ発動しないはずだろ? なんでここに座ってんだ?」

だがリーブルが答えるはずもなく、代わりにグライトを狙って青く光る剣を振りかざしてくる人物が答えてくれた。

「お前が扱いきれていないからだ」

にやりと笑うような雰囲気を窺わせた。
そこでグライトは目を見張る。
青い剣に照らされて浮かび上がってきた顔、鏡を覗くと必ず目に入る顔、そう、グライトの顔だったのだ。
思わず舌を巻いたグライト。その人物は続けざまに自分を名乗る。

「私は影……この洞窟に潜むお前の闇の心」

グライトは理解できなかった。闇の心とは何か、なぜ形となって夢に出てきているのか、気になる事は山々だが、とりあえず青い剣の攻撃を避ける。
自分になにか手はないか、そう考えそのたび思考を遮断するよう青い剣が振り下ろされた。

「避けているだけではいずれ呑み込まれるだろう」

影はそう言いながら横に一振り、グライトが避けた所を狙い縦に一斬り、また避けた所を狙い、大きく振り被った。
グライトはその攻撃を避け切れず、腕で受け止めた。腕から血が流れる。グライトはじっと影を見る。影はニタリと笑っていた。同じ顔なのにグライトとは似ても似つかない影の姿。グライトはこれが自分の闇の心だと思えなかった。

「……腕を落としてやる」

影は青い剣に力を込めた。本気で切り落とすつもりらしい。グライトは底知れない寒気を感じ後ろへ二、三歩飛び退く。
影は舌打ちして詰め寄った。

「お前は……強くなりたいか?」
「え?」

グライトは影の言葉に反応が遅れた。そして間を置いてから頷いた。

「なら私を倒してみろ」

影の言葉に反応してリーブルはグライトに向かってくる。思わず手で顔を覆う。リーブルは青い剣に姿を変え手に収まっていた。
グライトは驚きながらも影を見る。影の持っている青い剣は赤く光っていた。似ている形だが、全く別物の得物を構え、グライトと影は対峙した。