複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【更新】 ( No.203 )
日時: 2014/04/09 21:34
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: uQH0nqZ2)



 昼もすっかり回った頃、そろそろパーティーの始まり時刻が迫っている。
陽は落ち、あたりが茜色に染まる中、グライト達は大きな豪邸の前に居た。着慣れない少し小奇麗な服をつまみつつ、グライトは中へ入る。豪邸の中は広く、天井が突き抜けているようだった。

シャンデリアが揺れる中、人々が集まる。パーティーはそこまで堅苦しいものでは無く、普通に普段はセリや市場に居るようなおじさんやおばさん達がオシャレな格好で遊んでいた。
グライト達も浮かれつつ今回の任務を再確認する。

「ぼくが警察と保安官達の方へ話しをつけておいたから、自由に調べられるようになっているよ。じゃあさっそく例のダイアモンドで出来た時計が飾られている部屋へ行こうか」

ヨハネスは先陣切って歩き出した。どうやら昼間のうちにこの家の地図を頭に叩き込んだらしい。サクサクと足を進める中、グライトはすれ違う人に気を取られている。

「あ」

グライトはそこで不思議な人物を見つけた。何処かで会ったような気がしない事もない。そう思えば人に紛れて数人、会ったことのあるような無いような人達が数名いる事に気が付いた。
一体なんでこんな所にいるのだろうか? グライトは思いすごしかと思ったが立ち止まり、確認するようにキョロキョロと見渡す。
グライトの確認した中で言うと、計6人、知り合いの様な人物がいた。「様な」と言うのは6人とも普段着ないような綺麗な格好をしていたので別人のように思えたからだ。

「おいグライト! ぼーっとしてたらヨハネスと川村に置いてかれるぞ!」

リュウは突っ立っているグライトにそんな事を言って駆け寄ってくる。

「あ、危ない!」

グライトの言葉と同時にリュウはシャンパンやワインを持っていた召使の人とぶつかる。頭からそれらを被ったリュウはアルコールに当てられてか少し頬が上気していた。

「す、すいません……」

弱々しくそう言い、立ちあがるリュウ。召使の人は慌てて手に持っていたタオルでリュウの服や頭を拭きだした。そして何度も謝る。そんな召使にリュウはヘコヘコと頭を下げる。
とりあえず拭きとられたアルコール類、召使は最後呪文を唱えて服についたシミやリュウの体から放たれるアルコールの甘い匂いを吹き飛ばす。綺麗になったリュウはお礼を言って今度はゆっくり歩きつつグライトの元へとたどり着いた。

「いやぁ参った……ついてなかったよ」
「いつもの事だから気をつけて行動しなきゃ、もしかしたらあの人に怪我させてたかもしれないじゃん」
「ごめんごめんグライト。それより、さっさと時計見に行こうぜ!」

これじゃどっちが年上だかわかったもんじゃない。
グライトの腕を引きリュウはどんどん人をかき分けて行く。またぶつかるんじゃないか、そう心配したグライト。そして案の定、リュウはまた人にぶつかった。今度は女のお客さんだ。綺麗に着飾られた彼女に少しほれぼれと見惚れるグライト。リュウは慌てて謝る。

「……こんなとこで何してんだ? グライト、リュウ」

女の人はキョトンとした顔でそう言った。そう言われたグライトとリュウもキョトンとした顔で彼女を見ている。

「はぁ……俺だよ、ソラだよソラ・レッドドラン。こんな格好してるけど……」

ソラ、そう名乗った女の人。グライトは目を丸くする。
信じられなかった。この深い紅いドレスを着た女性がソラだなんて。だが、確かにそう言われてみると、この赤茶色の髪や紫色の瞳には見覚えがある。

「これでわかるか?」

まだ半信半疑と言った様子のグライトとリュウに、ソラは顔の左の方につけていた飾りを取った。そこにはソラにしかない左目の上あたりから頬まで伸びている傷があった。
グライトとリュウはそこでやっとソラだと信じた。そして驚きの声を上げる。

「そんなに驚くな……これでも恥ずかしいんだからな」

少し頬を赤くしてそう告げるソラ。グライトは女の子らしいソラの様子にドギマギする。

「あ、かわいいよソラ。……ゆ、ユーノ達も来てたりするの?」

ぎこちなくそう言って辺りを見渡す。ソラは後ろを向いて呼びかけた。確かにユーノの声が響く。
バタバタと走ってきた音がしたと思ったら、ユーノとアマリア、リィナが顔を出す。
ユーノは金髪によく映える深い青色のドレスを、アマリアは落ち着いた雰囲気の深緑のドレスを、リィナは少し明るめの水色のドレスをそれぞれ身に纏っていた。

「ユーノちゃんもソラちゃんも可愛い! な、グライト!」

リュウはそう言ってユーノの頭を撫でる。

「もー髪の毛崩れちゃうから触らないでよぉ」

ユーノはそう言いつつも満更ではないような顔をしている。
グライトはそんな二人を置いて何故こんな所に居るのかと改めてソラ達に質問していた。

「私達はここでパーティーがあるって服屋さんで聞いて招待状を貰ったまでですわ。ユーノさんやソラさんがパーティー初めてって言うから今日は特別綺麗にしてみましたの。どうですか? 二人ともよくお似合いでしょう?」

綺麗に笑うアメリア。彼女は確かお嬢様、ドレスが自然に見えるのはその優雅で洗礼された動きからだろう。
そんなアメリアの隣でリィナは淡い雰囲気を醸し出している。あの枝の服はどうしたのかと聞けば一応鉢植えに植えて魔法を駆けているのだとか。

「えっとグライト君達はなんでこんな所に? パーティー興味あるならお昼に合流すればよかったねぇ。あ、あと連絡ありがとうね。あたし今日ちょうど暇だったから助かっちゃったし、観光にもなったからホント感謝してるよ」

感謝を告げられ笑みがこぼれたグライトの袖をひっぱりソラは指をさす。

「……それよりグライト。あっちで誰か呼んでるぞ。いいのか? 行かなくて」

グライトはソラの言葉に後ろを振り返る。ヨハネス達が手を拱いていた。「そういえば任務があるんだ」そう思い出したグライトは、ユーノにまだ絡んでいるリュウを引っ張り、四人に挨拶した後ヨハネス達と合流する。
軽く謝ったグライトとリュウ。ヨハネスは気にしてないと言った様子で階段を上がって行った。どうやらこの階段の先、長い廊下の突き当たりから5番目の扉の中に美術品や宝石が揃っているらしい。
見覚えのある人物がソラ達だなんて驚きだが、新しい一面が見れた事でグライトは満足になった。