複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【更新】 ( No.213 )
日時: 2014/04/13 17:02
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: uQH0nqZ2)



 始まった賭けと言う名の試合は明らかにグライトが劣勢だった。
第一に元々のスペックが違いすぎる。
相手は全勝を記録している、それも所詮格闘家。グライトのまかない程度で習得した剣術が及ぶ隙なんてない。
グライトは強く噛みしめる。また負けるのか? そんな自問自答が頭の中で繰り返された。

「その青い剣……美しい輝きだ。それも欲しくなってきたよ! どこで手に入れたのかな?」

余裕綽々と言った様子のスター。グライトはどこで? と聞かれ少し戸惑う。
この剣はいつの間にか手元にあったもの。リーブルが木片にとりつく事で本来の力を発揮する。だが今回はリーブルが居ない。しかしグライトが木片を力強く握る事でその剣の存在を具現化できた。確実に力は上がっているはずなのにどうもスターには刃が届かない。悔しさで込み上げる怒りをどうにか抑え、あくまで冷静を貫いた。

そんなグライトにスターはタックルをする。そのまま一気に倒してしまおうと言うのか、グライトはそうはさせないと無理矢理体を捻り、そのタックルを避けた。きっと彼に触れられてしまってはそこで負けと決まるだろうと考えたからだ。
その間もスターは掴みかかってくる。

「一気に片をつける……!」

グライトはそう言うと大きく息を吸い込み、真剣な顔つきになる。
手に持っている青い剣にさらにぐっと力を入れる。その時だった。酷いめまいに襲われ、そのままふらりと体を揺らすグライト。
何が起きたのか?
その一瞬のすきをついてスターがタックルをしてくる。体をおさえられたグライト、スターは止めとばかりにふらついているグライトを首投げした。地面に叩きつけられたグライト、めまいの中、脳裏に響いたのは夢の中で聞いたのは何故か影の声。なんだろうかと集中した。

(……力を貸してあげよう)

影の言葉と同時にグライトは、意識はもう無いと言うのに体が動いた。
そのまま無理矢理スターの太い腕から逃れ、距離を取る。グライトの意識はとうに飛んでいる、なのになぜまだ立っているのだろうかと自分でも不思議だった。体が何かに動かされる。スターのつぎなる攻撃を軽く受け流すとぐっと足に、手に力を入れる。今度はめまいがせず、代わりに力が底の方から漲ってくるような感覚に落ちる。力に身を委ねるとそれは本領を発揮した。

「反撃……」

酷く静かに響く声。ガラッと雰囲気が変わったグライトにスターは戸惑いを隠さない。打ち所が悪かったか? 元々こんな感じだったか? 色々な疑問を浮かべる。だが深く考える前にグライトの青い剣が紅く光った。紅は青と入り混じり乱れ、そして深い紫色の禍々しいオーラを纏う。

それからグライトはフルスピードのマックスパワーでスターの元へ行くと頭から足にかけて斜めに斬った。それを見ていたリュウやユーノ、ソラ、軽井沢はハッと息を飲む。彼らにはきっとスターが切断された様に見えたのだろう。だがスターは立っていた。一滴の血も流さず、足から崩れおちるスター。その次にグライトはへたりと座りこむ。目を回しているのか、フラフラしていた。
皆は何が起きたのか、それを理解するまでにおおよそ何秒かかっただろう? リュウ達が唖然とする中、マリアネットは「勝者、グライト」と一言放ったのだった。