複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【更新】 ( No.216 )
日時: 2014/04/14 21:43
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: uQH0nqZ2)

第二十四話 海へ!

 グライトはあの後マリアネットに秘宝を譲り受けた。秘宝は筋の腕輪の形をしていて、ピンチの時に力を発揮すると言っていた。はじめて形ある秘宝の譲られ方をしたグライトはキラキラ光る腕輪を大切にしようと心に決める。
スターは秘宝を諦めてまた別の宝石を探しに旅立つ。マリアネットは「寝るから」と言って眠りにつくらしい。
邪魔をしない様、静かに洞窟を出たグライト達は初め入った入口である宝石の扉を開ける。今度こそドラファー帝国へ。そう意気込み外へ出た。



 外へ出ると先ほどまでの場所では無く、何故か真っ白な砂浜へと変貌していた。
どういうことだろうか? 何が起きたのだろうか? そんな話し合いをしたが、結論なんてなく、結局海辺を歩く事にした。

「日焼けしちゃう〜」

ユーノはそう言って嫌そうに空を見上げる。晴天、太陽を避ける影など無い浜辺には少々厳しい。
グライトも暑さにうなだれていた。そんなグライトの隣を歩いているソラに視線を送る。ソラは黒いパーカーで完全に太陽を遮断していた。

「ソラ、パーカー暑くないの?」
「暑くない」

そう言うソラだが、確実に暑いだろうとグライトは感じる。倒れた時は運べるよう力を少し残しとかねばならないかもしれない、そんな予感も立ててみた。
一人元気があったのはリュウだ。どんどん浜辺を歩いて行く。時々カニっぽい魔物を見つけては捕まえて満足そうだ。

「元気ねぇなァ〜まぁわからない事は無いけど。あ、あっちに船あるぞ! ちょっと見せてもらおうぜ!」

リュウは走り出した。グライト達も走ろうかと思ったが、これ以上汗をかいては脱水症になると心配し、歩いて続く。

しばらく歩いて向かっているとリュウとその船の持ち主がもめだした。何をやらかしたのだろうとグライトは慌てて近づく。

「どうしたの?」

グライトが尋ねるとリュウは助かったとばかりに振り返る。

「俺が宝物盗んだとか言いだしたんだよ」
「え?」

グライトが詳しく聞くと、この船の持ち主「レイ・セルディアス」は今乗組員達と休憩がてら手に入れた宝物を整理していたそうだ。
宝物をいったん外へと降ろし、やっと掃除をし終わったレイ達は宝物を見張り番の元へ取りに行った。そこで世界に二つとない大きな真珠が誰かに盗まれたそうだ。たまたま近づいたリュウはどうやらその犯人と思われたらしい。
リュウは弁解するが、頭に血が上ったレイ達はサーベルを抜き、リュウに襲いかかって来たそうだ。

そこまで話を聞いてグライトは、今立たされている立場が危ういと言う事に気が付く。

「リュウ、本当に盗んでないんだよね?」
「当たり前だろ。盗んだ所でどうしようもない」

それもそうだと納得したグライトはリュウに参戦し、頭に血が上った乗組員達と組みあう事になった。ユーノやソラも援護してくれると言っている。二人が戦うとなると決着は早くつくだろうと勝手に思う。——だが、現実はうまくいかないものだ。

掛け声とともに飛びかかってくるレイ達海賊。一般乗組員は船に引っ込み遠くから援護する。その統率のとれた攻撃にグライト達は翻弄された。どうもうまく自分のペースを出しきれない、これもきっと敵の罠だろうと考える。

だんだん相手に押されてきた時「もうこうなったら」と滅茶苦茶な行動をまずしだしたのはユーノだった。いつも突拍子もない行動をするユーノ、鍵爪をしっかりつけ直し、一人の男に後ろから飛び付いた。いつもユーノのする戦法だ。女の力でも男に勝てる唯一の方法。
乗組員はそんな行動に出たユーノの背中を狙ってサーベルを突き立てる。うまく弾いたのはソラだ。ソラはユーノの援護に徹する。
ユーノは次々と乗組員の背中を斬る。殺しはしない。

「ぎゃあ!!」

悲鳴を上げて悶絶する乗組員。それから次々と男達は二人の連係プレーにやられていく。
それを見ていたリュウは空笑いの後、感心する。

「すげぇユーノちゃん……」

リュウはそう呟き、すこしよそ見した。そこへ乗組員二人が飛びかかる。

「あぶないっリュウ!!」

グライトが叫ぶや否やリュウは二人の乗組員に一発食らわされた。思わずよろけるリュウ。だが、雷を纏っている双剣をぐっと握ると無理な体勢からそれをふるう。双剣は雷をさらに強くし、二人の襲って来た男たちを焼きあげる。

「あっぶねぇ」

そう呟いてグライトを見るとグライトの後ろから敵が近づいているのに気が付いた。リュウは双剣をクロスに構えると思い切り上から下へと振り下ろす。そうして双剣から放たれた雷は地面を抉り、敵に直撃した。
グライトはそれに驚いていたが、いつもの笑顔を向けてお礼を言った。

そうして戦っているうちに徐々に乗組員達が減ってきた。この調子ならいけるとグライト達は一気にたたみこむ。そこへ地面を割るような音が響いた。遅れてやってくる爆風、何が起きたのか、そこに居た一同は唖然と中央を見た。
そこにはいかにも海賊と言った格好をした黒髪の女性が腰に手を当て立っていた。ほんのり顔が赤い。酔っ払っているのか、足取りは不安定だ。
この女性がレイ・セルディアスらしく、周りに居た男や女達は一気に固まる。レイは大きな声で船の上から叫んだ。爆風は彼女の放った大砲らしい。

「てめぇらぁ!! いつまでちんたらやってんだ!! 宝物一個盗まれたってぇ? 情けねぇなァ! そんなもん捨てちまえ! あたしらには他にもお宝があるんだ! 無くなったもんは仕方ないが……」

レイは間を置いてグライト達を見る。

「お前等が犯人候補か? とりあえず船に上がってこい」

鋭い眼差しで真っ直ぐグライト達に言い放ったレイ。有無を言わせない彼女の気迫にグライト達は船へと上がる事に決めた。
どうなるのか、一同心配になるがとりあえず話し合ってみようと言う事でレイの前に立った。