複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【更新】 ( No.221 )
日時: 2014/04/20 19:48
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: uQH0nqZ2)



 しばらく討論を繰り返した後、グライト達の手荷物を調べると言ってそれぞれ男女で個室へと呼ばれた。服に何も隠してないか、自分達のものを取ってないかと何度も聞かれてうんざりだったグライト達は、これで無実が晴らされると思い、後ひと踏ん張りと部屋へ移動する。

持ち物検査が終わったグライト達、海賊だからもしかしたら自分達の持っていた金目のものを取られるかもしれないと心配していたが案外そうでもなく、簡単にそれは終わった。
それからレイが直々に頭を下げる。

「申し訳ない、あたしの乗組員が勘違いをしていたらしい。今仲間に呼びかけて周辺を調べてもらってるからそのうち見つかるだろう。それまでお詫びも兼ねて食事にでもしないか? 勿論毒なんて入って無いからな。さぁお前等飯の準備をしやがれ! 客人をもてなすんだ!」
「イエッサー!」

グライト達は一斉に自分の持ち場へと動き出した乗組員達に少し気圧されながらも呼ばれる事にする。
船と言うものに初めて乗ったグライトらは食事が出来るまで見て回りたいとレイに申し出ると、レイは快く案内してくれると言ってくれた。この船は相当レイの自慢らしく、色々な場所へ行き一つ一つ丁寧に説明してくれた。それを熱心に聞きながらグライト達は質問を繰り返す。

しばらくして料理が出来たと言ったコック長がレイとグライト達を呼びに来た。大きな一室へと案内されたグライト達の目に入ったものは見た事もない豪華な料理ばかりだ。
皆で食べようといいレイは席に着くよう促す。それをしぶっていたソラだが、グライトはまぁまぁといい、席につかせた。

そうして船に残っていた乗組員達と共に昼食を口にしたグライト達。どれもほっぺが落ちるほど美味しく、ついむさぼるように食べる。
それに初め怖いと思っていた乗組員達の話はどれも波瀾万丈で面白く、楽しいBGMも流れてきて気分が盛り上がる。
自然と笑みがこぼれたグライトは一緒に歌い、輪に混ざり、充実した昼を過ごした。
ついでにここがどこなのかと言う事も尋ねる。どうやらここは「エルマリア海」らしい。最近はこの海域に海賊が増えたとか何とか……。

そうして夕方に差し掛かるころ、それぞれが自由な事をしている中、レイの元へグライトは昼食のお礼を言いに駆け寄る。
レイは少し話そうといい、隣の席へグライトを座らせた。

「あたしの知っている島で面白い島があるんだ」
「どんな島?」

グライトの問いにレイは満面の笑みで応えてくれた。

「あれはあたしの船が抗争に巻き込まれて大破しそうになった時、命からがら逃げ切ったあたし達の前に小さな島が現れたんだ。その島は地図を確認しても載っていなくて、とりあえず上陸したんだ。そこで一人の少年があたし達に駆け寄ってきた。あたし達の傷を見て驚き、手当をして食べ物までくれたんだ。で、その少年に島の名前を聞いた、聞いた事もない島だった」
「なんて名前だったの?」
「ヒストリア島。かつて大海に大きく広がっていたヒストリア大陸の一部らしい。今は99%も海の中へと沈んでいるらしいが、人は住んでいるとか」
「じゃあその男の子は国民の一部なんだね!」
「あぁ、それもヒストリア島の長らしい。まだ小さいのに立派なもんだろ」
「へぇ! すごいなぁ! 俺もいつかその島行けるかな?」
「ん? 行ってみたいか?」
「うん! おもしろそう!!」
「じゃあ行ってみるか?」
「うん! ……え?」

グライトは思わず首を傾げる。

「あたしは地図を貰った。だから行けない事もないぞ」

レイはそう言ってにやりと笑う。

「行くか?」
「……行きたい!」
「よし決まりだ! お前の仲間にも伝えてこい、明日出発だ!」

レイはそう言ってキラキラと輝く目でグライトを見た。グライトも興味津々で是非ともと思いリュウ達に伝えに行く。
今晩はどうやら船の中に止めてくれるらしい。助かると正直に感謝を述べる。その中で「信用できるのか?」と不安を抱いたソラは威嚇するが、レイは「縁があったって事で」と締めくくる。
明日は早いらしい。なら早急に寝ようと寝支度を始めた。