複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【更新】 ( No.237 )
- 日時: 2014/05/04 22:24
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: CbmxSfx3)
◆
「そう言う事でしたか」
グライト達の目的を聞かされた村長・アルネイルは目に見えるほど肩から力を抜く。
海賊ということで、なにか物資などを持って行かれると思っていたようだ。
そんなアルネイルにグライトが「ここを案内してほしい」と告げると、笑顔でそれに応えてくれた。
レイはどうやら船へ戻るらしい。「四人で楽しめ」そう告げてレイはさっさとその場を去る。
帰り、また迎えに来るだろうとグライトは予想した。恩返しがしたいと言っていたのを覚えていたからだ。何を持ってくるのだろうと勝手な想像をしてグライトはアルネイルの家を出た。
改めて村を見て回るとやはりどことなくグライトの故郷と似ていた。
何だか親近感の様な物を感じたグライトは、積極的にアルネイルに話しかける。そのおかげもあってか、初め心を開いていなかったアルネイルだが、リュウ達とも徐々に打ち解けて口数も多くなってきた。
「それにしても村長やってるなんてすごいなぁ、ここってレイさんの説明だと海に沈んだ国らしいけど……」
リュウがそう持ちかける。隣を歩いていたアルネイルを見やると哀しそうな顔をしているだけだ。この話題には触れてほしくないらしい。リュウは「わりぃ」と謝り別の話題を変える。
その話を聞いていたグライトとソラは「ふーん」と呟き顔を見合わせる。
「どうも訳ありみたいだな」
「だね。でもまぁ、俺達も訳ありみたいなもんじゃん。触れないでおこうよ」
そうコソコソと話しあっているとまた鋭い視線を感じた。
視線を送っていたのはユーノだ。船を降りてから一言も口を利かない。
振り返ったグライトとソラは「やばっ」と言ってまたお互い目をそらしあう。先ほど、ユーノの気持ちが落ち着くまであまり話さないでおこうと言ったばかりだった。
ユーノはそんなグライト達の気配を感じてかまたふくれっ面に戻った。
「あ、ここが僕達の食糧、主に果物を取る森だよ」
グライト達三人の空気を打ち破る様にアルネイルが告げた。
ほっと一息ついて森の奥を見る。何やら騒がしい。村人だろうか? そう言えばここに来るまで二、三人しか見ていないなぁと思い、グライトはアルネイルの元へと近寄る。
「森の奥が騒がしいけど……村の人?」
尋ねるグライト。アルネイルはちょっと困ったように視線を漂わせる。そんなアルネイルを見てリュウも首を傾げた。
「どうかしたのか?」
「いや……」
まごまごと告げるアルネイル。グライトとリュウは顔を見合わせる。
しびれを切らしたらしいソラは「はっきり言え」と厳しく当たる。アルネイルはそんなソラに怯えつつ、キョロキョロとあたりを見渡した。それから皆を集める。
「……あのさ……ここだけの話なんだけど……」
アルネイルはそう前置きをして話だした。グライト達はその話を興味深く聞き入る。
「最近森に異変が起きたらしく……様子がおかしいんだ。夜な夜な恐ろしい雄叫びが聞こえる、かと思ったら不気味に静かだったりと……どう対処したらいいかわからないから手つかずの状態で」
お恥ずかしい、そう言いながら肩を落とすアルネイル。そんなアルネイルを見て、どうにか力になれない物かとグライト達は頭を悩ませた。
「村の人にはそのこと、教えているの?」
「それがまだ……混乱は避けたいから、どうにかひっそり対処したいんだけど、もしこの奥に居る正体もわからない生物が僕より強いとなると怖いし……」
そう言って情けなく下を向くアルネイル。ソラはそこで妙案を思いついたとばかりに手を打つ。
「なら俺達もついてってやるからこの奥に行ってみないか?」
いとも簡単にそう告げるソラ。アルネイルは眉をハの字にして「うん……」と気のない返事をする。どうも行きたくないらしい。
だが、そう言って先送りにして面倒な事になるのは心配だ。無理矢理でも何でもいいからとグライト達はアルネイルを引っ張り、奥へと歩いて行く事にした。