複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.27 )
- 日時: 2014/01/27 22:26
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
第二話 樹の中に……
目の前で気に溶け込んだ黒猫を見てグライトは目を瞬かせる。何度目をこすってもそこにリーブルの姿はなく、不思議に思いリーブルがちょうど消えた樹の幹に近づいた。
近づいてみると樹の幹は両手を広げても覆いきれないぐらい太かった。よく見ると幹は何処か元気が無い。樹の皮がところどころ剥がれているのがその証拠だ。こんな事あるのだろうか? この世で一番魔力の秘めた木なのだが……疑問に思ったがそれ以上は追及せず、自分の元いたフィユ村まで歩こうと足を動かした。
少し歩き、案外遠いなと思ってきた頃遠目にフィユ村が見えてきた。
「あれ?」
グライトはフィユ村の上空を見て驚く。あそこだけ天気が悪いのか、村の半分黒い雲に覆われている。グライトは慌てて洗濯物を干していた事を思いだし走り出した。
フィユ村の入口に立つと、その光景は「異常」なのだと言う事に気が付いた。
そう、村に住んでいるお年寄り達は皆泣き崩れていたのだ。
グライトは唐突の事で目を見張った。近くにいたフレーティ夫婦の奥さんにどう言う事が起きたのだと尋ねる。
「黒い雲……災厄の始まりだよぉ……あぁ、この世はまた影に包まれる……」
おぼつかない足取りでグライトにしがみつき、しおしおと再び泣きだした。グライトは慰めながらも村の現状を知ろうと辺りを見渡した。
黒い雲それは「黒雲」と呼ばれていて昔このソレイユの国を覆い、絶望に落としたと言われている歴史上最も災厄の雲だ。昔誰かに封印されたようなのだが、現在に再び現れて地平線の向こう側を覆っている。
噂ではこの黒雲を解き放ったのは「クシア大陸」の方にある大きな国、「グレイト王国」を支配している「アンブラー」と言う司祭が封印を解いたらしいと言われている。
この事はソレイユ全域に知れ渡っていて、グライトも勿論把握していた。だが黒雲が此処まで攻めてくるなんて夢にも思わなかった。
グライトは今村を歩きまわっている。村はスッパリ半分黒雲が覆っていて、そこへ足を踏み入れようとすると何らかの力により跳ね返された。
不思議に思い手を伸ばしてみると、そこに魔法で作られたのであろう透明な壁があった。誰がつくったのだろうか? そう思ったがグライトは諦め、その奥を見ようと目を細める。だがそこは暗闇で光もなく、人の気配もなかなか感じ取れなかった。
「うーん、どうしよかなぁ〜……? あっち側に行けないなら俺の家にも帰れないなぁ」
のんびりそう言って首を傾げるグライト。そんなグライトの前に黒い猫が現れた。黒い猫は先ほど木の中へ消えたリーブルだ。リーブルはのんびりグライトの隣で毛繕いをしている。
「お前はマイペースでいいね。あ! そうだ、ねぇリーブル。君ならわかるんじゃない? この雲が拡大した意味が」
何となく問いかけて笑うグライト。そんな事はないかと呟いた時、リーブルがじっとグライトを見上げた。グライトは「なに?」と首を傾げる。
リーブルはグライトを見て何かを訴えようとしているのか、それでもテレパシーなんて備えていないグライトは首を傾げるばかりだ。
リーブルは諦めたように肩を落とし、ついてこいとばかりに歩きだした。グライトは訳がわからなかったが、この賢い猫の言うとおりにしようと思った。
◆
リーブルについて歩いていると、見知った道を通っている事に気が付いた。それは先ほどグライトがフィユ村に帰るため歩いた石の防壁に囲まれた一本の道。魔物は入ってこられないようになっていて、村の人間が歩くにはちょうどいい。誰がつくったのかは分からないが、グライトはその事に感謝していた。
とにかくついて行くと道が開けて「始まりの樹」までたどり着いた。此処で何をしようと言うのか? グライトはリーブルを見た。リーブルはグライトの肩へと飛び乗る。
そのまま真っ直ぐ歩けと言っているのだろうか? グライトはあの大きな木の幹へと近づいた。
そこで青い光がグライトを包み込み——次にはその姿を無くした。