複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【更新】 ( No.275 )
- 日時: 2014/07/20 15:13
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: no72hslI)
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宿へ戻るとソラとユーノが起きていた。グライト達の帰宅を歓迎し、後ろに立っているシリウスにすこし戸惑ったような視線を投げかける。
「地図を手に入れたよ。シリウスさんが色々教えてくれて、これからの計画もちょっと知恵を貸してもらおうと思って付いてきてもらったんだ」
グライトがそう告げると二人は納得したのかシリウスも招き入れる。
シリウスは大人しく話に入った。
グライトが手に入れた地図を適当に置かれていた木の机の上に広げた。大きく広げられた地図は詳しい所まで書かれている。
「今俺達がいるのはこの西の方向、ドラファー帝国の周辺。ドラファー帝国の近くにもう一つ、エターナル王国があるよね? とりあえずここを目指そうと思うんだ。話しに聞く限り、ここは平和を愛している穏やかな国らしいから……」
グライトはそう言って指を地図に這わせる。
旧エルヘラ国領が西としたら、エターナル王国は東へ戻らなければならない。きっと長い旅路だろう。
それを見て苦い顔をしたリュウは地図を眺めつつ尋ねる。
「近道とかできないかな?」
その質問に答えたのは話しを聞いていたシリウスだ。今、この状況で彼は有力な情報提供者にあたる。
シリウスは色々考えた末に何か思い出したのか、地図を見る。
「この森、この森を通れば近道になるぞ。ただ、この森は道が戦争で潰れていたりして迷ってしまう事があるかもしれないが……」
そう言って西と東の間に広がる広大な森林を指差す。
シリウスいわく、この森は地図上ではこんなに広がっているが、実際そんなに大きくないらしい。敵からも隠れやすいし、ところどころに洞窟の様な穴もあるので寝泊まりにも困らないとのことだ。
グライトはそれを採用した。
少しでも可能性が残っているのなら、近道をした方がいい。
「そうそう、シリウスさん、ちょっと尋ねたい事があるんだ」
話しがまとまりかけた頃、グライトはそう切り出した。真剣な顔つきでシリウスを見るグライト。シリウスは視線で許可を示した。グライトはそれを感じ取り、一呼吸置いてから話し出した。
「ミキさんとクウゴ……ええっと、若い男の人二人、一人は黒いコートで死神で、もう一人は背中にフルートケースを背負った人なんだけど……何処かで見たりしなかった?」
グライトの言葉にシリウスは首を捻る。
黒いコートなんてここらへんじゃあちこちに居るし、フルートなんて娯楽道具、持っている人は少ないが、ケースなら銃器を機密に持ち運ぶときに背負っている人が多いので思い当たる節が多いらしい。
結局「それだけの情報じゃ何とも言えない」と言われた。グライトは困った。この大陸に来た真の目的、それが彼ら二人を探す事なのだから、ヒントも目撃情報も無いのじゃあ見つけようがない。
落ち込んだグライトにユーノは元気付けるよう背中を叩いた。
「まぁそのうちみつかるよ、グライト、気を落とさないで」
ユーノはそう言うが、グライトの気は晴れない。
なぜ此処まで彼らを探すのか、それは引っ掛かる節が多いからだ。クウゴは様子がおかしいまま消えた。ミキは夜、唐突に消えた。
夜消えたと言う事で、なんとなくリーブルに尋ねてみたが、リーブルは猫だ。しゃべれるわけも無く、結局またリーブルも姿を消してしまった。
(まぁリーブルはいいとして、二人はどうしたのかなぁ)
ずっと引っ掛かっている事だ。モヤモヤとした気持ちが晴れないのは、どうも気分が乗らない。
思案に暮れるグライトに、リュウは困ったような顔になる。一応弟の様な物だし、元気づけたいがミキとクウゴと言う人物がどのような人物かわからないため、何とも言えない。
「まぁ元気出せって。きっと見つかるだろうよ」
ありきたりな言葉をかけてみるが、グライトはあまり元気にならなかった。
そんな空気をシリウスは手を叩いて打ち破る。
「まぁとりあえず、今日は飯でも買いに行って寝てろ。まだ疲れてるだろう? まず体力回復からだ」
その言葉に四人は頷き、外へ行く。シリウスがくれた銀貨を握り締め、再び市場へ向かった。市場は先ほどグライトとリュウが来た時よりはるかに人が多くなっていた。