複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【7/20更新】 ( No.276 )
日時: 2014/07/20 15:26
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: no72hslI)

第二十九話 エターナル王国へ

 グライト達は意気込んで大きな大陸を歩いていた。目と鼻の先にあると思われた森は案外遠かったが、沢山の食料や水分等を買いこんだので心配はない。
それにシリウスも一緒についてきてくれると言う。これ以上心強い物は無い。
シリウスは道中あまり言葉を発さなかった。無口なのか、それとも何か考えているのかグライトにはわからなかったが、あまり詮索はしない事にした。
きっと彼には彼なりの理由があって旅をしているのだろうと思ったからだ。

だが、グライトはどうしても気になる事が一つあった。それは彼の右腕の事だ。
シリウスの右腕は真っ黒に染まっている。手の甲には赤い真珠の様な者が埋め込まれていた。シリウスはそれを黒いコートで隠しているが、グライトは見逃さなかった。
グライトにとってそれは見慣れないもの。
赤い真珠が時折コートの隙間からきらりと光るのを見るとどうも落ち着かない。
なんだろう、そんな事を思ってシリウスを見ていると、シリウスはその視線に気づいたのか振り返った。

「どうした?」

シリウスは首を少し傾げて尋ねてくる。グライトは聞こうかと身を乗り出したが、もし隠したいものだとしたらと思うと口が開かない。

「……ううん、なんでもないよ。お腹すいてきたなァっと思ってさ」

グライトは結局言葉を濁した。
シリウスはそれを不思議に思ったのかちょっと考えた後、そういえばと続けた。

「ずっと歩きっぱなしだから腹も減るよなァ。じゃあ今いる森の入口から少し奥に入った所に洞窟があるはずだからそこで休憩しようか」

そう言ってユーノやソラ、リュウに同意を求める。三人は頷いて足を速めた。
グライトもそれに続く。

 しばらく歩くと、シリウスの言った通り洞窟があった。そこに火を焚き、適当な食事を鞄から取り出す。
談笑しながら食べていると落ちかけていた体力もかなり元に戻った。
再び歩き出そうと腰を持ち上げた時、ガサリと草を掻きわける音が聞こえる。
グライト達はその音を敏感に聞きとり、いつでも襲われていいよう構えた。

だが、その姿を見た時拍子抜けする。
草の間から出てきたのはボロボロになった女の人だったからだ。
今にも倒れそうな彼女を慌てて受け止めようと前へ出るグライト。女の人はグライトに受け止められ、一瞬目を合わせた後気を失った。
女の人を抱えた状態で後ろへよろけたグライトはシリウスに受け止められる。

「どうしよう?」

そう尋ねるとシリウスは唸り声を上げる。

「とりあえずそこら辺に寝ころばせて様子を見るか、見る限りコイツ奴隷だ」

シリウスがそう言うと奥で立っていたソラの顔が少し険しくなった。

「奴隷?」

そう尋ねるソラにシリウスはこの大陸のドラファー帝国について話す。ドラファー帝国は奴隷を多く持っている。見る限りこの女の人はエルフで、きっと旧エルヘラ国領に住んでいたのだろうと言う所まで説明してくれた。
ソラはそれを聞いて小さく唸る。
きっと過去の虐げられていた頃の自分を思い出したのだろう。
グライトはそんなソラを気遣うように見たが、ソラは俯いて女の人から距離を取ったまま座った。