複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【8/1更新】 ( No.305 )
日時: 2014/08/03 23:03
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: o.w9FXPe)



 唐突の爆発音と閃光弾の光に狼狽する男達。薄れる視界の中、二つの爆弾を投げたと思わしき少年は挑発するように笑っている。

「よくもやったな!! 大人しくさせろ!」

そう言って指示を出す男、きっとこいつがリーダーだろうとグライトは目測をつける。
十分に態勢を崩した七人の男を見てグライトは一気に叫んだ。

「ユーノ!!」

グライトに視線がくぎ付け無男達は、叫びだしたグライトを見て訳の分からない顔をした。
とたん上の屋根の方から大きな爆発音が複数聞こえた。そして驚く事に屋根に穴が開いた。そこから少女が飛び込んでくる。
なんなんだ、そう思う間も、振り返る間もなく、六人は後ろから何かに引っ掻かれ意識と命を失った。
後一人は意識を失う寸前と言ったところだろう。出血の量から考えて、もう命は助かるまい。
グライトはその男を見ながら一歩踏み出した。隣で目を向いている機長はユーノが保護する。

「どこの人? なんで列車を乗っ取ったの?」

グライトの問いかけに男は答えない。口をパクパクとさせて意識が飛びかけている。

「ぱ……グフッ……ゴホッゴホッゴホォッ!」
「ぱ?」
「ぱるめきあおうこく……万歳!! ッへへ……」

男は最後の力を振り絞りそう言ってがっくりとうなだれた。

「……パルメキア王国? 確か、ドラファー帝国と戦争してるとか言う国だよね?」

グライトはそう言って隣に近づいてきたユーノを見た。ユーノは黙って頷く。それから男の死体を漁り始めた。

「この人、ドックタグかけてる……って事は軍人さん?」
「他の人もそうみたいだね。なんでこんな事……」

そう言うグライト。そんな所に、爆弾を貸してきた男とインテリの男が近づいてくる。二人はグライトとユーノの横を通り抜け、真っ直ぐと運転室へ向かった。

「どうやらこの列車、ドラファー帝国へ向かう路線からパルメキア王国へ向かっているみたいだ。おい筋肉バカ、ちょっとハンドル切ってみろ」
「あぁ? 筋肉バカだと? 喧嘩売ってんのか眼鏡!」
「さっさとしろ」

爆弾の男は、インテリの男の憮然とした態度に舌打ちをしつつ、筋肉質な腕で力いっぱいハンドルを回す。だが、ハンドルは微動だにしない。

「ん……? あんだこれ? うごかねぇぞ」
「だろうね。これ、あいつらが持ってきた機械で制御しているらしいな。うん……僕達はパルメキア王国へ向かうしかないらしい。おい少年、今すぐ放送しろ。『この列車はパルメキア王国へ向かう。そしてパルメキア王国につき次第、爆破されるだろう。それでもいい奴は残れ、それ以外の奴は5分だけ列車を止めるから降りろ』と」

インテリの男の言葉にグライトは首を傾げた。

「なんで爆破されるの? もしかしたらこの男の人達の独断かもしれない。その場合、攻撃される事無く済むんじゃないの? その可能性は?」

グライトの質問にインテリの男は乾いた短い笑いを上げる。

「浅はかな考えだ。よく考えてみろ、この男達の独断ならこんな特殊な機械持ち出せるわけがない。その上この男達は路線を知っていたようだ。登録は手動で行うらしいな。この広く入り組んでいる裏列車の路線を把握できるニンゲンなどよほど優秀じゃない限り難しい」

そこまで言ったインテリの男はグライトを見る。グライトはまだ納得していない様子で話の続きを促した。
インテリの男はそんなグライトの態度に機嫌悪く舌打ちをする。

「わからないと言った様子だな? よく考えろ、路線はドラファーを向いていた。だが、真反対のパルメキアに向かっている。そのためにどこをどう曲がればいいか、そんな事パソコンやそれに類する機械を持ち合わせていなければならない。だがこいつらは持っていない。おい女、司令官の男の耳を見ろ。どっちかに無線機が付いているはずだ」

「さっさとしろ、愚図」と悪態をつきつつインテリの男はユーノに指示を出す。
ユーノはそんな男の態度にムッとしたが、指示通りに調べた。司令官らしき男の耳、左耳には付いていなかった。ひっくり返して右耳を見てみると「あ」と短く声を漏らした。
ユーノがとりだしたのは小型化された無線機、トランシーバーの様な物だ。ここから指示を聞いていたらしい。
グライトもユーノの持っている機械を見て驚いている。

「ほんとだ……え、なんで? パルメキア王国がこの裏列車を攻撃する必要無いよね?」
「さぁな、そこまではわからない。……さっさと放送を入れろ。少しだけならこの列車止められる。それこそ5分かそこらだろうな」

グライトはそう言われて慌てて機内全体に伝わるマイクにスイッチを入れた。出来るだけ噛まないように、息を深く吸い込んだ後、言葉をゆっくり繰り返した。