複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【8/4更新】 ( No.313 )
日時: 2014/08/09 22:56
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: n5JLvXgp)

第三十四話 罠

 グライト達は無事地下から脱出した。列車に残っていたほとんどの人達は地雷で死んでしまったが、それももう終わりだ。
地上へと出たグライト達の目の前には広い大地が広がり、何故かまだ新しい戦車がポツンと一台放置されていた。その周りには軍の人達が横たわっている。きっと死んでいるのだろう。
グライトはそれから目をそらすようにクウゴを見た。

「あぁ言うのって跡形も無くなったり、炎に呑まれて爆発したりしないんだね」

グライトが言い終わってからすこし表情を曇らせたのを見て、クウゴは曖昧に頷いた。

「まぁ気にすんな。さっさと先進もうぜ。もうすぐ軍の奴らが来るかもしれないからな。裏列車の無い今は俺達の足で進むしかない」

そこでユーノが閃いたように手を打った。

「ねぇあの戦車壊れてなさそうだし、借りて行かない?」

いいでしょ? そう言ってキラキラと目を輝かせるユーノ。きっと乗ってみたいのだろう。不謹慎だが、グライトやリュウも一度乗ってみたかったので同意する。
その思いつきに、ミキは少し考え首を横に振った。

「止めておいた方が良いでしょう。僕達が手を下したと思われるかもしれないですからね」

その言葉にグライト達はちょっと肩を落としたが、それも困ると言う理由で大人しく歩き始めた。
そんなグライト達の背中を見ながらほっとしたのはクウゴだ。ミキはそれに気づいて尋ねてみた。

「あの戦車は貴方がやったのですか? 死体の傷を見るからに大きな刃物で斬られているようです。貴方の大鎌、あのぐらいの大きさじゃないですか?」

ミキの質問にクウゴは苦い顔をして、だがしっかり頷いた。

「そうだ、俺がやった。どうやら向こうには立派な参謀がついているらしい。あの戦車で地下の通路を潰そうとしていたらしい。たまたま見つけたから止めておいた。きっと連絡は回っているはずだ。気をつけていくぞ」

気を張り直し歩きだしたクウゴ。ミキは頷いて「それにしても」と難しい顔で切り出した。

「よく裏列車の線路を見つけましたね……こんな所に線路が通っているなんて誰も考えないでしょうに」
「きっとそれも向こうの参謀が見つけたんだろうな。察するにドラファー帝国の軍がヘマでもやったんじゃないか? 些細なもんだと思うが」

そこでふと思い出したようにミキは小さなメモ帳をとりだした。このメモ帳には現在の戦争についての些細な情報が記載しているらしい。戦争を無くすと言う無謀にも近い目標達成のための足しにでもなればいいと最近始めた物だ。

「そう言えば最近の情報で、どこからかいつの間にかドラファー帝国の兵が現れたなんて言う話しを聞きましたね。そう言う魔人が現れたのかと思っていましたが、そうでもなかったみたいですね?」
「居そうなもんだけど……そんな魔人が出てきたらドラファー帝国が有利になってしまうな。最悪あちらが勝つかもしれない……」
「でもそれでも勝つ前に止めるのでしょう?」

そう言って笑うミキに「それもそうだな」と不敵に笑うクウゴ。それを聞いて頷いたミキは、メモ帳に何か書きたし始めた。
そんな二人をグライト達は呼んでいる。何かあったのだろうか? クウゴとミキはグライト達の方へと急いだ。