複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【8/9更新】 ( No.318 )
- 日時: 2014/08/10 22:14
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: n5JLvXgp)
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グライト達は潰れそうな車に乗って広い大地を横断していた。
先ほどたまたま見つけた中古車、だれのもちものかは分からないが好都合だった。
しかし、この車は魔力が機動力になっているらしく、始めは戸惑った。そんな膨大な魔力を有している人物がこの5人の中にはいなかったからだ。
「どうする?」
「うーん……」
グライトが徒歩かと諦めかけていた時、リュウが車の機動部分に触った。すると、車はエンジンがかかったのだ。
驚いた五人だったが、これでどうにかなるかもしれないと車に乗り込んだ。それを見たミキも手伝うと言って現在に至る。
今はリュウがかなり消費してしまったので、無理はよくないと言われ、ミキに変わっている所だった。
見た目に反して好調に走り続ける車。運転はクウゴに任せた。
しばらく走っていると、窓側に座っていたグライトが「あ」と声を上げる。
「軍隊が……」
グライトの視線の先には、パルメキア王国のだろう軍隊が先ほどの地下道の方へと向かっていた。物騒な事に戦車は3つもある。今にも交戦を始めそうなその雰囲気に、グライトは不安を覚えた。
「放っておけ。どうせ俺達なんて構いやしねぇ」
クウゴはそう言ってフンと鼻を鳴らした。
その途端、大きな爆発音が車内に響く。中古車なので車全体が揺れ、横転しそうになった。
慌てて立て直すクウゴ。グライト達も後ろの席でしがみつく。
「あっぶねぇ。なんだ、あいつら……こっちに向かって撃ってきやがった。まずいかもしれないな」
クウゴはそう言って顔を険しくする。助手席に座っているミキはそんなクウゴを窺うように見る。指示を促しているのだろう。クウゴはそれに応え、少し考えてから口を開いた。
「ちょっと魔力強く出来るか?」
「ええ、大丈夫です」
「なら飛ばすぞ。あいつらを振り切る」
また放たれた砲弾を無理矢理避けたクウゴは、そのまま軍から離れようと車を走らす。目指すは森の方だ。パルメキア王国の近くにある森に、一旦入って態勢を立て直そうと考えたからだ。ただ、奥に行きすぎるのはよくない。ここら辺の森は土地柄か、入り組んでいて出られなくなるからだ。
「ねぇ、話したらわかってくれるんじゃない?」
激しく揺れる機内でユーノがそう声を張り上げた。その言葉にクウゴはぴしゃりと言い放つ。
「無理だろうな」
どうして? そう続けるユーノにクウゴは軍にはわかってもらえないだろうと説明する。
「どうやらあいつらから見た俺たちは、敵みたいだ。土地の侵入者。さっき攻撃してきただろ? 近づいた所で殺されるのがオチだ。それより姿を隠す方がいい。わかったら掴まれ。おいミキ、スピードもうちょっとあげれるか?」
「頑張ってみます」
乱暴にハンドルをきるクウゴ。まだやまない砲弾。クウゴは蛇行しながらも、パルメキア王国付近にある森へと向かう道を外れない。
……と言うより、放さないと言った方がいいのだろうか? 遠くへ行こうとするとそちらへ砲弾を浴びせられ、元の道へと戻ってしまう。グライト達にとっては好都合だが、なんとも転がされている感じで違和感がぬぐえない。
「なんか誘導されてるみたいだよ」
グライトはそう言うが、砲弾の音が邪魔してクウゴまで届かない。仕方なくグライトは諦め、身を委ねた。
彼らにとって国に入られることは迷惑極まりない。この付近で転がして体力が尽きるのを待つつもりだろう。きっと向こうは自分達が国へ入ろうとしているのを感じている。
そう思うと、グライトはミキの魔力が心配になってくる。だからと言って何が出来るわけでもない。無事逃げ切り、この不安が行き過ぎた思いだと感じる事を、ただ待つしかできないのだ。