複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【8/16更新】 ( No.326 )
日時: 2014/08/16 21:48
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: n5JLvXgp)



 とんでもない、客間で立ちつくして何分たっただろう。それぞれ思いがまとまらず、どうしていいのかわからないと言った様子だ。
三人は思った。ドラファー帝国のゼルフを説得するなんて自分達にはできない。子供の声なんて、聞いてくれる人ではないだろうし、クウゴの様な説得力のある言葉もきっと自分達には言えない。ヘタをしたら殺される可能性だってあるんだ。
そんな三人を見かねてセレンは戸惑い気味に声をかけた。

「お前たちならできる、きっと。裏列車を封じた今、私がドラファーへ連れて行ってやる事しかできない。クウゴに手伝うと申し出たんだろ? なら、覚悟を決めることだ。まぁ今日は休め。明日の早朝、この国を出る。少し遠回りをするから長くなるが、それでもいいか?」
「……大丈夫かな」

不安げに揺れるグライト達の瞳。まだまだ子供だ。セレンは初めてグライト達を見た時、しっかりしている子たちだと思った。だが、それは引っ張ってくれる存在がいたから。
その存在無き今、彼らは自分たちを疑い始めている。そう、迷子になっているのだ。
そう感じたセレンは年上らしく、貫禄のある笑顔でグライト達を元気づけた。

「お前達はもう少し自分を信じてみたらどうだ? お前達も目的があって旅をしていたんだろ?」

セレンのその言葉に、グライトとリュウはハッとしたが、ユーノだけ何だか浮かない顔で曖昧に頷いただけだった。
そんなユーノの表情を読み取れなかったが、グライトとリュウが元気になったのをしっかり感じた。

 それから三人はセレンに連れられて一軒の宿屋に着いた。外は夕方で、宿に入るとグライト達は緊張の糸がフッと途切れたように意識を手放した。