複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.33 )
- 日時: 2014/01/28 19:56
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
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右の穴に出た二人。ミキはそのまま真っ直ぐ歩いて壁まで近寄った。
「これ、スイッチで動くんですよ」
そう言って少し手探りをして何かを押した。ガガガと鈍いを音を立てて石の壁は開く。至極単純な仕掛けにグライトは思わず肩を落とした。もっと不思議な原理があるのかと期待していたからだ。そんな落胆しているグライトに気付かず、ミキはその奥の道へと進む。
「此処をまっすぐ行くと今度は地面が抜けます。その時、気をつけて」
地面が抜ける、その言葉に嫌な予感がする。嫌な予感があたらないように祈りながら歩いているグライト、そこで思い出した。リーブルについて聞こうと思っていた事を。ミキはグライトの質問を聞き、どこから話そうかと模索する。
まとまったのか質問に答えると前置きをして話しだした。
それはミキが「とある国」を尋ねたところから始まった——。
◆
ミキはいつも依頼のため歩きまわっている。今回はリーフ大陸のとある国まで笛を吹きに行く予定だった。その途中、不思議な国を見つける。それは冬だと言うのに桜が咲き誇っている美しい国だった。興味をそそられミキはそこへ足を踏み入れる。
中へ入ると緑とピンクが穏やかな空気を生み出している場所だった。名前は「桜花和国」と言うらしい。王座には珍しく女性が君臨しているそうだ。
その女性がどういう女性か、一目見たかったミキだが会う事を拒まれてしまった。
肩を落として歩いていると、前方に図書館と思われる建物が見える。なんとなくこの国の歴史でも知ろうとそこへ足を踏み入れるミキ。もともとその地域や国について調べるのが好きだったこともある。
図書館はとても広く、天井ギリギリまで本が詰められていた。ミキは少しテンションが上がり、歴史が書かれた書物の置いてある方へ歩いた。どうやらこの図書館にはどこからか持ってこられた様々な種類の文献が沢山あるらしかった。
そこで興味深い文献を見つける。
それにはこのソレイユの歴史が書かれていた。こういった本は大量に世界へ出回っているのだが、どうやら数多に読んだ歴史書とは少し違うらしい。ミキは一ページ目の目次を見てみる。羅列されている言葉はこのソレイユの国そのものと関わりのある事ばかり。
あの災厄の司祭、アンブラーについても事細かに書かれているのだ。まるでそれを見てきたとばかりに。
ミキはそこで一つ印象的な言葉を見る。「導きの者」と呼ばれる者の事だ。導きの者——それはこの世と神を司る絶対的な存在。世界で一つしか存在しない重要な鍵。
それがこの世に存在するらしい。ミキはそれを見て衝撃を受けた。それと同時に疑いも生まれる。
(本当にこの本に書いてある事は事実でしょうか?)
疑いを膨らませたミキはペラペラと本の紙をめくる。書かれている事は事実でないのかもしれない、そう思ったまま真実を調べるため、導きの者と言われる存在を探すことにした。
その後桜花和国を後にし、無事リーフ大陸までたどり着いた。リーフ大陸は謎の多い大陸で、もしかしたら此処に居るのかもしれないと隅々まで探したのだが、その存在は霧のように掴めなかった。
◆
「……と、まぁこんな感じなのですが」
言い終えミキは隣のグライトを見る。グライトは興味深そうに聞いているようで、違うものに意識を奪われているようにも見える。まぁ信じないだろうそう思った矢先、グライトは「あっ!」と察したようにミキを見上げた。その目は自信に充ち溢れている。
「もしかしてあの黒猫が……とか思ってるの?」
「えぇ、まぁ」
「はは、それはないよぉ。だってあの猫……あ、名前はリーブルってつけたんだけど、リーブルはフィユ村から出たくないみたいだし、多分出てもこの始まりの樹までが限界なんじゃないかな?」
軽くそう言うグライトに、何故そう思うのかとミキは尋ねる。
「俺が毎日追いかけている時に一度だけ村の外に出そうになったんだよ。その時リーブル慌てて村に戻ってさぁ。いっつも余裕こいている顔してるんだけど、なんか焦った様子だったからおかしいなって思ったの覚えてる」
そう言い終えてへへっと笑うグライト。ミキは黒猫リーブルが導きの者である可能性が少し減ったのを感じ、落胆する。だが、根っから疑うのではなく、もしかしたらと言う希望も残しておいた。最も、グライトは信じていない様子だったが。今も「まさか」と言ってやまない。
「でも導きの者って言うのは居るかもしれないね? だってそうじゃないと神様の存在を知らしめられないからね」
「……まぁそれもそうかもしれないですね。頑張って探します」
「俺もちょっと気になるなァ」
そんな会話の後、長い道は終わり問題の底の抜ける空間までやってきた。グライトはビクビクしながら地面の上を歩く。グライトより早くその地面を通り過ぎたミキは、早々にスイッチを見つけていた。
「押しますね」
その言葉と同時にパッと地面が無くなった。あまりにも唐突すぎて警戒していたグライトでも驚きの声を上げる。ミキは特に驚く事はなく、落ちる穴の中で冷静だった。
底の見えない穴はどこへ続くのか、グライトには想像もできなかった。