複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【8/20更新】 ( No.332 )
日時: 2014/08/20 21:07
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: n5JLvXgp)

 クウゴはエレーナの一太刀目を間一髪でかわす。だが、エレーナは止まる事が無く、振り向きざまに素早く二太刀目を浴びせた。
ありえない角度から立て直してくるエレーナに、クウゴは一瞬怯んだが、黒い霧の大鎌のおかげで助かる。

「おいおい、俺は平和的解決をだな」

そう口を聞いてみるが、ミキの呆れた視線しか返ってこない。

「クウゴの言い方が悪いですよ」

ミキがそう小さく呟いて、戦闘に巻き込まれないため奥へと身をやった。
奥ではアルトが慌てて止めに入ろうとしているが、散漫になっている紙の束や、布によって転倒してしまう。
その間にもクウゴとエレーナの攻防戦は続いている。そのおかげで散らかった部屋がさらに散らかった。

 ——暫くし、エレーナが足をとられその隙をついてクウゴがエレーナの手を掴み、後ろに回した。

「大人しくしろって! 騒ぎが下まで響くだろ!」
「うるさい! あんたみたいなデリカシーのかけらもない男、初めてよ! 戦争なんて……犠牲なんて……私の悲しみの深さも知らない癖に!!」
「おいおいそりゃちょっと横暴じゃねぇの? 暴君か」

そんな会話をしている間にもクウゴの手は緩められることは無く、エレーナは結局言葉を呑みこんだ。
クウゴが「よし、よし」と満足げに頷いていると、首筋に冷たい物を感じる。どうやら後ろからアルトが剣を立てているようだった。

「エレーナ女王陛下を放せ」

そう言ったアルトは今にもクウゴの首を切り落としそうな雰囲気だ。さすがにまずいと思い、ミキは忍び込ませていたフルートを吹いた。風が起こり、全てを巻き込み、部屋は渦巻く。
それに巻き込まれた三人は態勢を崩し、前のめりに倒れた。

「ちょっと落ち着きませんか三人とも。物騒なモノはしまいなさい」

諭すような優しい声でそう言ったミキだが、瞳は鋭く光っている。お怒りの様だとクウゴは苦笑いを漏らした。

「座ってエレーナ様の話でも聞いて、方向性を考えて行けばいいでしょう? エレーナ様にも言い分があるんだから、一方的に話して終わりは無礼です」

クウゴを睨みつけたミキはそう言って風を消した。部屋には静寂が戻る。
三人はバツの悪そうな顔で座った。

「感情的になるのはよくないですよ。理性的に話しましょう」

笑顔になってミキはそう言い、エレーナに話を促した。
今更隠す事も無いと開き直ったエレーナはポツポツと自分の身の上に降りかかった不幸を語りだす。
それは哀しくてどうしようもない不幸な話だった。