複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【9/2更新】 ( No.350 )
日時: 2014/09/08 21:58
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: kAWEuRKf)



 神木の中へ入ると、大きな門が現れる。それを潜り、その奥に居るはずの美しく淡い雰囲気を纏っているダリダンに声をかけようと口を開きかけた。
だが二人の視界に入ってきた光景により、その口は閉じられる。
それはクロス・ユニゾンととても楽しく話すダリダンの姿だ。二人とも微かに頬をピンクに染め上げ、まるで男女の密会のように親しく話し合っている。

「何を話しているのかしら?」
「……さあ? でも……邪魔しちゃ悪い……」

そう言ったものの重大な報告だ。仕方なしに声をかける二人。そんな二人の心境を知ってか知らずか、二人は親しげに手招きをした。
遠慮がちに報告に入るルナ。エアリィは隣で落ちつかなさそうにそわそわとしている。
ルナの報告が終える頃、ダリダンの表情が面白いように変わった。その表情にクロスやルナ、エアリィはさっと血の気が引く。

「グレイト王国ぅ? ふぅん……そう。フフ……私ちょっと出かけてくるわ。お留守番、任せていいかしらぁ? クロス将軍、ちょっとお席を外すわね。すぐ帰ってくるから、またお話しを聞かせてもらいたいわ」

穏やかに微笑むダリダンだが、その視線は冷たい光を宿している。
さすがにまずい、そう感じたルナだがどうにもいい言葉が思い浮かばない。そんなルナを見かねてクロスが横から助け船を入れてくれた。

「ダリダン様、オレの話はまだまだ沢山ありますよ、一分一秒も勿体無いぐらい……。それにルナとエアリィが外敵をせっかく追っ払ったのです。今回は見逃してやりましょう? 今度その方々が攻めてきた時は私が迎えます。もうここへ足も踏み入れたくなくなるような仕打ちをお見舞いしてやりますよ、ね? ……だから、落ち着いて紅茶でも飲みながら、ルナとエアリィも交えて話しませんか? オレは貴方と話したい。貴方の怒った顔も素敵ですが、やはり笑っている顔が一番美しい。オレのために、そしてルナとエアリィのために笑顔を見せてはくれませんか?」

にっこりとほほ笑みそう言ったクロスに、ダリダンは「まぁ」と言い、うっとりとした笑顔を見せる。

「そうね……今回はルナとエアリィが頑張ってくれた事に免じて控えておきますわ。でもね、二人とも。今度は立ち向かうのではなく、真っ先に私に報告してくれるかしらぁ? 貴方達二人が怪我をしたとなると私……フフ、気分の悪い想像はここまでにしておきましょう。さ、二人とも、お掛けになって」

微笑を携えてそう促すダリダンに、ほっとしたルナとエアリィは喜んで椅子に座る。ダリダンはそんな二人にどこからか紅茶を入れ、クッキーを用意した。

「さぁ素敵な話の続きを聞かせて頂戴? 確か貴方が敵地に乗り込んで……って所でしたわよねぇ?」
「喜んでお話しをさせてもらいますよ、ダリダン様」
「ちょっとぉなにピンク色のオーラを出しちゃってんのよクロス! 私達にもわかるよう話さなきゃ許さないんだから」
「……お話、楽しみ」

四人は穏やかな雰囲気の中、会話を始める。まるで絵本の一ページの様なその光景に、人は思わずうっとりしてしまうほどだろう。
暖かい日差しはいつまでもダリダンの住む神木を照らしている。そこだけ時間が止まったかのような不思議な雰囲気を、その光がさしこむ事によりさらに強く、それでも強調しすぎない様に醸し出されていた。