複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【9/14更新】 ( No.356 )
- 日時: 2014/09/15 15:02
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: g8t52Hd5)
EPISODE3 砂漠と恋の風
サブリア大陸にある唯一の大きな国、アルバン帝国。今日も騒がしい町と血気盛んな国民達のおかげで空は青々と輝いていた。
そんなアルバン帝国を守護する男、ロディ=カスターはいつものように破壊神の如き街を駆けまわる。
どうやら賞金稼ぎであるジャドウ=グレイを見つけたらしい。ジャドウが丁度仕事をしている時にロディは遭遇した。すぐさま馬を走らせジャドウに喧嘩を売るロディ。
そんなロディを面倒そうに見たジャドウは屋根から屋根へと渡り移り、逃亡を図った。
「イーハー!! おうおうおうジャドウ! 逃げるのかい逃げるのかい! 腰ぬけがぁ! 向かってこいジャドウ!!」
ロディはそう言ってジャドウの歩く屋根を壊して回る。ロディが通った後には瓦礫しか残らない。
ジャドウはそんなロディを遊ぶように屋根から屋根へと渡って、絶妙な距離を保つ。
「お前のポリシーはどうしたぁ!? 正々堂々戦うんじゃねぇのかい? 今お前は卑怯に逃げているだけだぞ! さっさと屋根から降りて俺と決着をつけろぉ!!」
ロディはイライラとした雰囲気を余すことなく放ちながら、徐々に徐々に距離を詰めて行く。
ジャドウはロディの言葉にピクリと反応し、「フフフ」と含み笑いをした後街のど真ん中、広い場所に足を下ろす。そんなジャドウ前にロディも馬を止めた。
「お前を倒し、俺は私情最強に一歩近づく。お前を足がかりにしてやろう」
「言うねぇ〜! イーハー!! 楽しくなって来たぜぇ!!」
二人は対峙した。ギャラリーもちらほら見える。二人はそれぞれの得物をとり、今にも飛びかかろうとした時だった。
「ロディさん、ジャドウさん、そこまでにしてもらえませんか?」
広場に入ってきたのはエースだった。エースはそのまま二人の間に入ったかと思うと風を使い二人を両サイドへ投げ飛ばす。突然の突風に反応できなかった二人の身体は簡単に飛ばされた。
「チィッ!! エース!! じゃまくせぇ、これは俺とジャドウの問題だ、首突っ込んでくんじゃねぇ!」
ロディはそう言って拳銃を抜いた。すぐさま破裂音が空気を裂く。だがまっすぐ飛んで行ったはずの銃弾はその場でポトリと下に落ちた。きっとエースの風が押し返したのだろう。
ロディは悔しそうに唇を噛んで立ち上がる。そんなロディにエースは静かに口を開いた。
「ロディさん、これ以上争うと言うのなら損害賠償、その他諸々全て支払ってもらいますよ。それでもいいんですか? 貴方の壊したものは100万を優に超える。勿論警察本部の力を頼ってはいけませんよ。いくら検挙率100%と言えど、許しませんよ」
「……クソッ! それは……困る……」
すっかり意気消沈してしまったロディ、エースはチラリと後ろを見た。どうやらジャドウはもういないらしい。壊れた煉瓦だけがその場に残っている。
「では、貴方はもうデスクワークでもしていて下さいよ。最近は破壊行為が目に余る」
「それはできねぇお願いだ! 俺は現場にいてこそのロディ=カスター様なのよッ!!」
「……わかりましたよ。面倒なので、この資料持って国王に説教されてきて下さい。俺は予定があるから、これで」
じゃあ、そう言ってエースはロディに資料を渡す。ロディは嫌そうな顔でその資料を受け取り、愛馬にまたがった。くれぐれも暴れないで、安全運転を心掛けて下さいとエースに念を押され、少し肩を落としながら城の方へと向かう。
そんなロディの後姿を見送ったエースは「さて」と呟き自分も歩きだす。目指すはグレイシアの元だ。
少し足取りを軽く、エースはこぼれる笑みを押さえ国を出た。