複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.37 )
- 日時: 2014/01/29 21:23
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)
第三話 守る者達
グライトとミキが辿り着いたのはかなり深層部だった。木の根っこが張り巡らされ、松明がそこら中にあっても薄暗い。それにここは上と違って少しひやりとする。少し身震いをしてグライトは不安げにミキを見上げる。
「なんか出たりする?」
「どうでしょうか? あまり気配は感じません」
「じゃあ、さっさと進もーよ。この先に俺の目的があるはずだから。もうこんな所に居たくない」
元気に歩きだすグライトの後ろに続いてミキは歩いた。ミキは歩いている途中も警戒は怠らない。少し物音がするたびそちらを注意深く見る。大概敵意のない虫達だった。
少し歩いていると、ミキが先ほどから気になっている事をグライトに聞く。
「そう言えば目的ってなんですか?」
真っ直ぐしかない道をひたすら歩きながらミキは問いかけた。前を歩いているグライトは振り返り、首を傾げる。
「あの、さっきから目的目的って言ってますよね?」
もう一度問いかけるミキ。グライトは少し考える様に顎に手をやる。どうやらすっかり忘れているらしい。大事な事とだけ覚えているようだが。
頼りない年下を見るミキは少し心配気に眉根を寄せた。グライトが口を開くのは少し間が空いてからだった。
「……えーっと」
「えっと?」
「確かリーブルについてきて、この木にたどり着いて……いや、その前に俺の村が黒雲に侵略されたんだ!」
思い出したように手を叩くグライト。次には顔を青くしてミキを見る。ミキは黒雲が地平線に姿を現した事は知っていたが、まさか侵攻してくるなんて思いもよらなかった。なのでその言葉に目を見開く。
「あ、慌てなきゃ! 村が大変なことになる!!」
唐突に慌てだしたグライトに、ミキは扱いに困る。落ち着き無い、そう思っているとグライトがしびれを切らしたように走り出した。
「あ! 走ったら……!」
その瞬間グライトは何かにぶつかる。
「いったぁ……!! なんだよ!」
手を伸ばしてみるとそこにまた魔法で作った透明な壁があった。訝しげに眉根を寄せるグライトに、ミキは魔防壁の確認をとってから少し横に寄るよう指示をする。
グライトがミキの後ろへまわった時、ミキは背中のフルートケースから相棒のフルートを取りだした。
ミキがフルートを口につけると、綺麗な音楽と共に小さな竜巻が起こった。それはみるみる大きくなり、強風になる。その強風はそのまま魔防壁へとぶつかる。嫌な音を立てて打ち消し合う二つの魔力。グライトはただ単純に驚いていた。
◆
少し交戦を交えた後、ミキの強力な竜巻が打ち消される。どうやら強力な魔防壁らしい。
「だめか……誰がこんな……」
そう呟くミキにグライトは肩を叩いた。
「あれ、あの人じゃない?」
グライトの指さす先には木の根っこや土臭さとは無縁そうな、中世の騎士のような人物が立っていた。彼はじっとこちらを見ている。少し不気味だ。グライトは警戒心を張り巡らせている。
「お、おばけ……?」
なかなか動かない、ただ茫然とグライトとミキを見ている騎士に、恐る恐ると言った様子でグライトは視線を送る。ミキはお化けなんて信じていなかったので、尚更あの人物が怪しく見えた。
ミキは言った。
「きっと興味を持って入ってきた人でしょう。ちょっと話しかけてみましょうよ。すみません!」
大きな声で呼びかけるミキ。中世の騎士の様な人物はその時グライトとミキの方へ歩き出す。ミキは続けて疑問をぶつける。
「あのこの魔防壁ってどうやって解除するか知っていますか?」
その言葉を聞き、眉根にしわを寄せる騎士。そして重そうな口を開いた。
「この先に行くな」
神妙にそう告げられたグライトとミキ。意味を掴みかねて二人は顔を見合わせる。そんな二人に言い聞かすようもう一度、騎士の様な人物は同じ言葉をつづけた。
「あのどういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。この先にはいくな。ロクなことにならないぞ」
首を横に振りながらそう告げる騎士の男の表情は硬い。そんな彼にグライトは違う質問を投げかけた。
「ねぇなんて名前? 人間?」
一瞬キョトンとした顔になった騎士の男。それから少し笑って応えてくれた。
「俺はマーティン。俺は神と言う種族に属している。とは言っても体は人間だから、今は人間だ」
マーティンと名乗った男はそんな意味のわからない説明をしてくれた。それに反応したのはミキだ。神とは何か、何故こんな所に人の姿としているのか、その質問にマーティンは答えあぐねた。
「まぁ……人間以上の者とでも思ってくれていいぞ。俺はこの土地を見ているだけだ。……とにかくその先にはいくな、その魔防壁を張ったのは俺だ」
質問をうまくはぐらかされたような気がしたミキだったが、何故その先に行ってはならないのかが気になる。隣に居たグライトも同じなのか、そわそわと落ち着かない。
「なんでこの先に行ったらダメなのか、とでも聞きたいんだろ? それはな、この先は聖域だからだ。ここには守護神アメリアが住んでいるんだ。俺はなんとなくこの大陸を守っているが、アメリアは正真正銘のこの大陸の守護神だ。俺のように自由には動けないが、力は強い。それにあまりお勧めしない」
「守護神・アメリア」それはグライトも聞いた事のある神様の名前だ。何でもこの地域全域を守っていて、勿論グライトの村であるフィユ村もその中に入っている。神の残した柱、それは黒雲をも近寄らせない力があるそうだが……そこまで思ってグライトは首を傾げる。
「ねぇそのアメリアって人、元気かな?」
グライトの質問にミキはおろかマーティンでさえよくわからないと言った顔をしている。グライトは続ける。
「だって俺の村に黒雲が攻めてきたんだよ? アメリアって人はすごい人って聞いてたから、黒雲よりも力が強いって。なのに、おかしいよね」
グライトの説明に「あぁ」と呟いたマーティン。どうやら把握していたようだ。「確かに」と言って難しい顔になる。迷っているのだ、このただの人間であるグライトとミキをやすやす通してしまうか、それとも頑なに断り続けるか。
少し迷った結果、マーティンは渋々魔防壁を解除する。
「俺もついて行く。離れるなよ」
そう言って先陣を切って歩き出したマーティン。きっとマーティンはこの洞窟を熟知しているだろう、そう予想してグライトも後に続いた。ミキはと言うとまだ神と言う存在が近くに居る事が信じられないのか、観察するような視線をマーティンに送っていた。