複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【10/6更新】 ( No.382 )
日時: 2014/10/07 21:19
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: jusjvnjl)



 しばらく森を彷徨う事数時間、とうとう目当ての虎は見つかった。その大きさに明いた口が塞がらない。
虎は雄々しいその姿を余すことなく優雅に見せている。金色の逆立った短い毛。これが長ければライオンと称されるのだろうが、ライオンほど筋肉質では無い。
全長およそ60メートル。マンションの二階ほどだ。こんな奴にどう対抗しろと言うのだろうか? カントスはいつもこのような怪物を狩っているのだろうか? だとすればあの老人、きっとグライト達が三人束になって掛っても勝てないだろう。
まだこちらに気付いていない虎を前にし、グライトは気弱にリュウに話しかける。

「どうする、あれ。勝てるかな、俺達」
「さ、さぁ」

二人は視線を交わし合い、苦笑いする。そんな二人にユーノは声を張り上げた。

「二人とも! そんな事、言ってる場合じゃないかもしれないよ!」

虎がこちらに気付いたのだ。大きな猫目にグライト達を捕えた虎は、そのまま猛突進で走ってくる。

「うわっ! やばい!」
「こっちきた!!」
「逃げるよ!!」

三人は一目散に走り出す。虎はそれでも追ってくる。地面を蹴る音はまさにドシ、ドシと効果音がつきそうなぐらい重々しい。

「これ、やるしかなくないか!?」
「どうやって相手するのさ! リュウが囮になってくれるの?」
「いやいやいや、まて、おかしいだろ! なんで俺が! 裏切るつもりかグライト!」
「ごめんリュウ! ユーノに行かせるわけにいかないでしょ!」
「リュウ、ボクのためにお願い! 最年長だよね?」
「くそぉっ!! こんなときばっかり!!」

リュウはやけくそになってそのまま急転換をして虎の前に立つ。

「ばっちこいっ!! 雷をお見舞いしてやらぁ!!」

リュウはそう言って双剣をふるった。双剣から放たれた雷は虎の足元に広がる。
バリバリと音を立てて地面に円を描いている雷に、虎は突っ込んだ。そして悲鳴のような鳴き声が上がる。どうやらリュウが作ったのは罠らしい。
足が痺れてよろけた虎はそのまま一歩、二歩と下がり、頭を振る。その隙をついてユーノとグライトが両側から飛び出してきた。二人は息の合ったコンビネーションで半分ずつ虎の背中を斬りつけると反対側に着地した。
大きな傷が出来た虎は怒り狂い、息を荒くして目の前のリュウに襲いかかる。リュウはそれを避けると、双剣で虎の片目を斬りつけた。
悲鳴を上げてひっくり返る大きな虎。止めとばかりにグライトが虎の脳を蒼い剣で貫く。

「ぐぎゃっ」

そんな悲鳴を上げて虎は息絶えた。やっと倒した虎を前に、三人は喜び手を取り合ってくるくる回った。

「よし! ……で、これをどう運ぶかだが……」

リュウはそう言って虎を見る。確かに三人で運ぶには少々大きい。何か乗せる物があればいいのだが、キョロキョロとあたりを見渡してみるが木しかない。

「この木から台車でも作ろうよ。時間かかるけど、それしか方法が無いし」

申し出たグライトの考えに二人は同意した。しばらく木を切り倒したり、タイヤを作っていたりすると、すっかり夕方になってしまった。早く帰ろうと三人は無理矢理虎の上半身を台車へ乗せると、歩きだした。



 帰ってきたグライト達を見てカントスは満足気に迎えてくれた。晩御飯を作ってくれると言ったので甘える。
晩御飯を囲みながらカントスは情報を提供してくれた。

「ブルーラはこの奥の街を越えた岩場でよく遊んでおる。よく歌っているからすぐみつかるじゃろう。あやつは美人で色っぽいが子供っぽい奴だ、なかなか話を聞かぬがどうにかせい」

投げやりな言い方にグライト達は苦笑いをする。

「とりあえず今日は遅い。明日朝からワシの自前の車で送ってやるからもう寝ろ。ほら、歯は磨いて寝るんじゃぞ」

カントスはそう言ってグライト達を奥の部屋へ案内する。グライト達は大人しくそれに従った。