複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【10/27更新】 ( No.389 )
日時: 2014/10/27 22:38
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: L43yfzZ2)



 船を下りればそこはグレイト王国だった。漁師の人達にもう一度お礼を告げ、三人で足を踏み入れた。
グレイト王国は全ての建物が高く、用途のわからない物が多い。魔法道具も豊富で食べ物もどれを見てもおいしそうだ。その上低価格だった。
便利さに感激しつつ、グライト達は歩きだした。店が多く集まる場所へ行き、とりあえず情報収集を始める。
必要な情報は秘宝の場所、そしてアンブラーの行方だ。
リュウは一度この土地へ来た事があるらしく、先陣切ってグライト達を先導し始める。グライトとユーノはそれに続いた。
暫くそんな事をしていた。大方情報が集まった所でリュウが思い出したように言った。

「あ、腹減っただろ? この先に美味しい店があるんだ、行ってみようぜ。腹が減っては戦はできぬって言うしな」
「賛成。焦るよりいいかもしれないね、ね、グライト」
「うん」

短く返事をしたグライトは顔が浮かないままだが、情報が集まった事で少し元気が出たらしい。リュウが提案した店はレストランだ。少し高そうだったが、入ってみることにした。
中へ入ると美味しそうな匂いが鼻をさす。
どうやらキッチンはオープンキッチンらしく、料理人がこぞってその腕をふるっていた。まるで芸か何かを見ているようだ。

「うわぁ! あそこ、カウンターに座ろう! いいでしょ、グライト、リュウ!」

興奮したユーノはそう言ってさっそくカウンター席を三つ、陣取る。グライトとリュウも苦笑しつつ後に続いた。
数分後、グライトはユーノと共にハイテンションで料理人の料理を見ていた。出来たての料理が並べられたカウンターは色とりどりで魅力的だった。

「おいしそう……!」

すっかり元気を取り戻したグライトはその料理にありつく。その姿を見たリュウは安心したように自分も食べ始めた。

「美味しそうに食べてくれるね、そこの君!」

食べ始めて少し経った時、そんな声をかけられた。グライトは料理から目を放して声の主を探すと、それは厨房で先ほどから美味しそうな食べ物を生み出している料理人の一人、髪も瞳も薄いピンクの女の子だ。幼さを残す顔のせいか、年齢がわからない。
彼女は「おまけ」と言って料理を一つ、出してくれる。慌てて料理を口に突っ込み、お礼を言おうとグライトは口をもごもごさせた。

「あ、ありがとう。えっと、君は……?」
「私はフィオルン・クロスベル。フィーって呼んでくれると嬉しいよ。君達、ここら辺ではあんまりみない顔だね〜? 旅人さん?」

柔らな口調でそう尋ねられた三人は頷き、ここへ来た目的を話し情報を願う。
フィーはうんうんと真摯に聞きながらグライト達のため首を捻ってくれた。心が優しい子なのだろうとグライト達は直感した。

「秘宝、ねぇ……無い事は無いと思うけど、さすがに場所まではわからないな。ごめんね。でも知ってそうな人なら知ってるよ。あ、そうだ! 私が案内してあげる。食べながらちょっと待っててくれるかな?」
「ありがとう! 助かるよ。でも、いいの? 仕事の途中じゃ……」
「いいの、もう終わるから。ね、案内させて。私力になりたいな、だって君達は世界のために動いてくれているって事でしょ?」
「そう、だけど……ありがとう」

グライト達はフィーの純粋な心遣いに頬笑みが漏れ、彼女の言った通り待っておく事にした。それを聞いたフィーはバタバタと厨房の奥へと引き返していく。
フィーがいなくなる途中、グライト達以外のお客さんが何人かフィーがいなくなる事を惜しんでいた。彼女は人気があるみたいだ。フィーに悪いな、と思いつつ助っ人を申し出てくれた事に感謝した。