複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【11/6更新】 ( No.402 )
日時: 2014/11/06 18:46
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: rdOgUgjF)



 レイヤル王国は一言で言えば宗教国家だ。
影ノ皇を推敲し、讃え、我らが彼の子孫だと豪語する。この大陸ならではの風習だろう。この大陸以外で影ノ皇を支持していると言えばたちまち牢獄行きだ。
そんな彼らは外界のものを拒む。他の大陸の人間、および道具や魔術も拒む。彼らは独自の言葉を操り、独自の魔術を生み出し、独立して文化を築いてきた……と言われている。
だからなのか当然のように外に門などと言うものは無かった。
この石の城壁をいくら叩いた所で彼らが気付く訳もなく、グライト達は後ろから来る獣の大群に顔を青くした。

「二人ともどうする!?」
「どうするもこうするも登るしかねぇだろ!」
「えぇ!? ボクやだよぉ」

三人は文句をたれながら自分の命は惜しいのか、一目散にその岩の壁を登り始めた。運よく足をかける所がまばらにあり、なんだかんだ言って身軽なユーノなどは当に城壁の上へと登り切っていた。
慌ててその後ろを追うグライトとリュウ、リュウは獣に服を噛まれない様雷を落とした。獣はそれに慄き、だが威嚇することは忘れない。
その飢えた瞳をギラギラさせながら唸られると恐ろしい。

 三人が苦労して登った石の壁、上から見下ろしたレイヤル王国は以外にも発展していた。街を歩く人も穏やかな顔をして、子供はボールで遊び回っている。案外グライトが住んでいた故郷より発展しているかも知れない。
三人は次に城壁を降りはじめた。流石にこの高さで飛び降りるなんて言う無謀なまねはできない。
ほっと一息つきながら壁を降りる三人。その姿は国民の人達には見つかっていなかった。まさか、壁を登って旅人がやってくるなんて思いもよらないのだろう。三人はフードをもう一度目深に被りなおし、路地裏を歩いた。一見怪しい三人組だが、路地裏にいた人達はそれを上回る怪しさを醸し出していたため浮いてはいない。
この国にも貧困の差はあるらしい。それも極めて深刻な。

三人はとりあえず情報を集めることにした。アンブラーの言った「ルォータ デラ フォルトーナ」を探すためだ。
情報を集めるうちにこの洞窟は様々な呼び名がある事に気付いた。そのまま呼ぶ人もいるし、長いから「運命の輪」なんて呼ぶ人もいる。他にも「ブレーブ」「レジェンド」「主の住処」と色々あった。
この「ルォータ デラ フォルトーナ」はどうやら勇者と影ノ皇の墓場らしい。そこに影ノ皇は封印されていて、勇者は身を滅ぼしている。
そんな洞窟だが、どうも見つからないらしい。幻影の魔術がかかっているからだとか、とんでもないものは洞窟自体が生きて移動していると言う説もあった。

「俺はそのルォータなんたらはどこにあるかしらねぇが、幻桜魔境なら知ってるぜ。なんでも伝説の土地らしい。その幻桜魔境、空間の境界と境界間にあって境界を越えれば地獄だか天国だかにつくらしい。もしかしたらお前等の探してる洞窟もここにあるかもしれねぇな。なんせ伝説の土地だ。我らの主が眠るに相応しい。で、お前等はなんでそんなものを探してるんだ?」

男は下衆な笑いを浮かべて探るようにグライト達を見た。グライト達は早急にその場を去る事にした。