複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.41 )
日時: 2014/01/30 18:24
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)



 薄がかった水色の長い髪をなびかせて、その美しい女性は水面を移動する。水面は地下だと言うのにどこからか入ってきた緑の光に照らされて美しい。体にフィットする深い青色のドレスの足元が綺麗に揺れた。グライトとミキはただそれに見惚れる。
 女性はグライトとマーティン、ミキの前まで来て地面に着地した。そして優雅にお辞儀すると柔らかく笑った。

「私はこのモート大陸を守る守護神、アメリア。あら? マーティン様が居るとは珍しい……。どうしたのですか? 何か問題でも?」

そう言うアメリアの物腰は優しい。マーティンはクールな表情を崩さない。その隣でグライトとミキは呆けた顔で見ている。グライトがマーティンに耳打ちした。

「アメリアって人すっごく綺麗だね! 初めてみた!」
「見た目に騙されるなよ。腹では何を考えているか分からねぇからな」

そう言うマーティンに見向きもせずグライトは足を進めた。アメリアの目の前まで歩いてきて大事な事を告げる。

「あのさ、俺の村。フィユ村って言うんだけど、突然黒雲が攻めて来て大変なことになってるんだ。アメリアさんの力でモート大陸は守られているんだよね? なんでかわかる?」

そんな事を言うグライトにアメリアは驚きの顔になる。どうやら上の状況はまだアメリアに伝わっていなかったらしい。グライトの説明を補足するようにマーティンも続けた。
 少しして理解したアメリアはグライトの申し出は受け入れられたらしく、頷く。そして大きく手を広げた。

「少し……上を見てきます」

神妙な口調でそう言ってふわりとその姿を消した。何処へ消えたのか、グライトはきょろきょろとあたりを見渡す。
 数分後、アメリアは再び美しい泉へ降り立つ。険しい顔だ。先ほどまでの穏やかさは何処かへ消えたのか、打って変わって急かすようなアメリア。
そしてグライトの腕の中の黒猫を目にしたアメリアは、グライトに近づき眉をハの字にして上目遣いになる。

「あなた……ねぇグライト君だった? あなた、その猫とは仲が良いの?」

元気よく頷くグライト。アメリアはその返事を聞き、続けた。

「頼みたい事があるの。大事な事、しっかり覚えて。この世界には七つの秘宝が存在しているの。その秘法を探し出してほしいのよ。そしてディザイアと言う神の加護を受けて。その秘法が私もどこにあるのかは知らないわ、でもきっとあるはず。私がその中の一つを持っている。ねぇ、グライト君。君は重要な役に選ばれたのよ。お願い、探して……!」

真剣な目でそう言ったアメリアにグライトは少し返事に困った。自分がそんな重役を引き受けられるか、自信が無かったからだ。

 「七つの秘宝」とは不思議な宝物のことである。その姿、形、用途は様々で、神を呼びだす神器としてこのソレイユの何処かに存在しているそうだ。それを探し出そうとしている人物は歴史上、沢山いたがいずれも亡くなっている。

 グライトは迷う。まだ死にたくない、それにそんなものどこにあると言うのだ。歴史や伝説で語られるだけで、実物を見たと豪語する者がいない。存在しているのか? そんな疑問が頭に浮かんでは消える。
そんなグライトを見て最後のひと押しのように懇願するアメリア。グライトは罪悪感に苛まれる。

「お願い……お願いグライト君」

そう訴え続けるアメリア。とうとうグライトは断りきれなくなり、自信なさげに頷いた。

「あなたならきっとできる。では、私が上まで送って差し上げますわ。さぁ三人とも捕まって」

そう言ってミキとマーティンに視線を送るアメリア。ミキとマーティンは促されるままアメリアの手に手を乗せた。

 再び眩い光に包まれる三人。先ほどと同じようグライトとミキは眩しすぎて目を瞑る。そんな中、マーティンは一人目を開き、アメリアに向かって問いかけた。

「何故あの少年を選んだ?」

その言葉にアメリアは少し悪戯っぽく笑う。この顔をマーティンはいつも見ている。

「頼んだら断りそうになかったからよ。あの子可愛いわね? それにあの黒猫——……」

そう言った所で地上にたどり着く。ミキとグライトは目を開いた。先ほどまでうす暗い場所に居たから目が慣れないのかチカチカする。アメリアはそんな二人を見て、少しほほ笑んだ。

「じゃあね、マーティン様。またいらして。待ってるわ」

消えていくアメリア。グライトは名残惜しそうにそれを見送っていた。