複雑・ファジー小説
- Re: ANIMA-勇者伝-【11/24更新】 ( No.413 )
- 日時: 2014/12/13 14:35
- 名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: QBvEkUjp)
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扉を開けると外につながっていた。箱庭の様な所だった。小さく、カラフルな花が一面に咲き誇っている。そこにベンチがあった。白いベンチだ。そのベンチの隣には大木があった。神木の様な堂々とした佇まい、まるでそれが生命の源だと言わんばかりの緑の葉で覆われた大木はどこからか入ってくる光により、瑞々しく輝いている。
グライトはリーブルと共にその大木に近づいた。近くへ行くとさらに大きく天にまで届くのではないかと言うぐらい立派だった。
その大木の影に人影が見えた。鳥の様な人間だ。ボロボロの布切れは何処か高級感が漂っていて、しかしそれを着ている人物はどことなくきな臭い雰囲気がある。
その人物は大木の太い枝に悠々寝ころんでいた。いびきをかいている所を見ると、どうやら寝ているらしい。
あまりにも気持ちよさそうに寝ているものだから、グライトは声をかけかねた。するとリーブルが身軽にその木の枝を伝ってその男に近づいた。
「にゃあ」
リーブルは男の傍で一声。それでも起きないと悟ったリーブルは、その可愛いあんよでペチペチと男の顔を叩きだした。
「ちょ、リーブル!!」
叫ぶグライト。だがリーブルはチラリと一瞥しただけでその手を止めない。
「……んん……ったく、あんだよ……」
不機嫌な声と共に男はのそりと起き上がった。リーブルの姿を捕えると目を見開きリーブルを鷲掴みにする。
「っ!! お、おまえ……フィル!! は!? 消えたんじゃねぇのかよ!!」
男はそう言ってリーブルを訝しげに覗きこむ。リーブルは鬱陶しそうに暴れた。だが男はそんな事は気にも留めず、嬉しそうにリーブルを撫でていた。
グライトはその光景について行けず、少し茫然と二人を見ていた。そんなグライトに気付いたのか、男はジロジロと遠慮なくグライトを眺める。
グライトは慌てて口を開いた。
「あ、あの……リーブルと知り合いですか?」
グライトの質問に男は「はぁ?」と声を出す。
「リーブル……? あ、フィルの事か。そうだ、コイツと俺は友達なんだ」
男はそう言って木から飛び降りてきた。それなりの高さがあると言うのに、彼は身軽なものだ。
近くに歩いてきた男は身長が高かった。体も筋肉があったのだろうとわかるぐらいには、ごつごつとしていて、顎には髭がある。
そんなくたびれた様子の男なのだが、どこか無邪気さも兼ねそろえていて、正直掴み難い人だとグライトは思った。
「お前あれだろ、違う世界から来たんだろう? 俺はね、この世界で住んでる。まぁ昔は讃えられたもんだが……今となっちゃあこの有様。とんだ腐れ野郎に世界から叩きだされたんだよ」
もうちょっとで決着がついたのに、そう続けた男は悔しそうに眉根を寄せた。
「おい、小僧。今お前の住んでいる世界は今どうなっている? 何故お前が此処に?」
男は心配そうにそう言った。その男の腕に抱えられたリーブルは暴れて必死でその腕から逃れようとしている。
それに気付いたのか、男は「悪い悪い」と軽い調子で腕の力を抜いた。
「にゃっ!」
リーブルは男を叱りつけるように鳴いた。そしてその体を碧く光らせると、すぐさまその光に全身包まれた。
グライトは何が起こるのかと思い、眩しそうに光を腕で遮りながらもリーブルを見る。だがリーブルの隣に立っている男はその光景を当然のように受け入れていた。
暫く光り、一段と輝きだした後、リーブルは姿を現した。その姿にグライトは息を飲む。
「まったく、このおっさん加減を知らないんだから」
パンパンと自身の服、黒いドレスを叩きながらリーブルは言った。その姿は少女の姿だった。陶器のように白く、整った顔。黒い癖っ毛な肩につくかつかないかぐらいの髪。そして真っ黒なフリルのついたドレス。瞳はサファイアのように綺麗に輝いている。
グライトは状況の変化について行けず目眩がした。
「だから謝ったろ?」
「ふん、年上を鷲掴みにするなんて……ホント昔からなってないわね」
グライトが目眩を覚えている間にも二人は親しげに会話を続ける。
「え、えっと……? え、どういうこと?」
やっと口を開いたグライトの声はうろたえていて情けない。そんなグライトをリーブルは一瞥した。
「説明はあと。そんな事より貴方があそこへ戻る事を考えましょう? 貴方は今ルォータ デラ フォルトーナの力によってソレイユから追放された。あちらへ戻るには空間を裂き、無理矢理中へ入る必要がある。そのための力が貴方とこの男テオにあるのよ」
リーブルは簡潔に言ってちらりと男——テオを見た。
突然人間になったリーブルにも驚かされたが、この男の事も気になる。グライトはリーブルの説明を促した。