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第五話　桜は血を吸って美しく咲き誇る

　桜花和国、一年中桜が咲き続ける国。
住んでいる人のほとんどが華狼と言う民族が占めている。そんな所に三人はやっとやってきた。
モート大陸だけあってあまり魔物に出会わず、予定より早くこの国にたどり着いた一向。グライトは先ほどから初めてみた桜を見て飛び跳ねている。

「入りますよ」

ミキがそう言ってグライトを引っ張りながらも国境という敷居をまたぐ。
三人の視界に一番初めに入ってきたのは一面に広がる薄ピンク色の絨毯。ところどころに見える葉っぱの緑や、タイルの黄色やオレンジがとても綺麗に反映し合っていた。
上を向くと桜は国を覆うように生えている。まるでピンク色の空がそこにあるようだ。それを見てクウゴが呟く。

「花見がしたいなァ……そう思わねぇかライト」

それを聞いたグライトはパッと顔を明るくして頷く。

「しよう、花見！　俺もしたい」

元気よくそう言ってミキを見る。だがミキは首を縦には振らなかった。

「僕たちはこの国の女王サクヤ・セリフィアムに会いに来たんですよ？　目的を達成していないのに遊ぶのは賛同しかねます」

頑なにそう言うミキ。クウゴとグライトはその答えに肩を落とした。

「それに猫さんも見つけてないでしょう？　グライト君いいんですか？」
「あ、そうだった……リーブル何処行ったんだろう？」

思い出したようにそう言ってキョロキョロとあたりを見渡すグライト。だが視界に入る物と言えば桜、華狼、狼ばかりだ。こんな所に猫なんているのだろうか？
グライトはとりあえずミキに言うとおりサクヤ・セリフィアムと言う女性のもとを訪ねることにした。