複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.86 )
日時: 2014/02/10 21:38
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)

第八話 無邪気

 リーフ大陸、森が多く、同じ景色が続く。四人は現在迷子になっていた。
あっちへ行くもこっちへ行くも木、木、木——目印になる様な物を置いていなかったので同じ道を言っているような感覚に陥る。
その状況にクウゴもミキも、グライトもソラも、見るからにげっそりとしていた。食べ物も底をつきそうだ。どうにかするも、どうにもならない。

そんな四人に後ろから静かに忍び寄る影。グライトが気配を感じ取り振り返った、続けざまに驚きの声を上げる。

そこに居たのは森の魔物、フォキシー。
フォキシーは頭がよく、群れで行動する。狼のようだが、狼より体躯は一回り小さく、どちらかと言うと狐寄りだ。色は黒、琥珀色、様々あるが、一般的には焦げ茶色。

フォキシーは二十匹はいるだろう。どれもギラギラと赤い瞳を輝かせている。
クウゴとミキは瞬時にグライトとソラを守るように前に出る。

「退屈してたところだ……ちょっと相手をしてやろうぜ」
「争い事は嫌いですが、命の危機となれば仕方ありませんね」

二人はそれぞれの反応を示した。
そんなクウゴとミキの後ろでソラも手に持っていた日本刀の様な大きな刃の刀を構える。

「戦えるの?」
「当たり前だろ……一人で歩いていた時魔物によく囲まれたからなぁ! ハハハ!!」

ソラはそう言ってクウゴ達が飛び出すと同時に後ろを担当する。ソラは思ったより強く、放っておいても一匹、また一匹と仕留めて行く。よく見れば人格が違うような気がしたが、グライトはあえて触れなかった。色々あるのだろうと思ったのだ。

そしてグライトは考えた。リーブルがいない、だから自分の折れた木刀は全く反応しない。だからと言って、黙って見ているのも何だかカッコ悪い。うーんと言っていると、一匹のフォキシーが襲いかかってきた。

遠くでフォキシーに囲まれているクウゴは間に合わない、ミキも自分の周りに居るフォキシーだけで手がいっぱいだ。ソラは戦いに夢中で気付いてもいない。

グライトは思わず折れた木刀を懐から取り出し、そのフォキシーの口へと突き刺す。
「グギャッ」そんな声があがった。折れた木刀は見事にフォキシーの口を縦に貫いている。
木刀を取ろうと頭を振り、おかしな行動をするフォキシーを見て、グライトはなんだか哀れな気持ちになる。

「ご、ごめん……思わず……」

そう言ってフォキシーに手を伸ばそうとするが、だらだらと血を流しながらも威嚇するフォキシーを見て手をひっこめた。

「おいライト! お前は隠れとけ! その木刀例の猫がいないと使えねぇんだろ?」
「そうですよ、身を潜めておけば僕達がどうにかしますから」

クウゴとミキがそう叫んだ。だがグライトはオロオロとするばかりだ。

その時、グライトの体を近くにあった気の枝が掴み、持ち上げた。驚きの声を上げる隙もなく、グライトは草むらへ引き摺りこまれる。

「だいじょうぶぅ?」

グライトの前には身長が130㎝ぐらいしかない少女が立っていた。正確にいえば何でつるされているのかわからないブランコに座っていた。
グライトは思わぬ事態にどう対応していいものかわからず、とりあえず頷いた。

「ねぇ私、ドライムアード。みんなはライムって呼ぶんだよ。君は?」
「ぐ、グライト。皆好きなように呼んでる……」

グライトは自己紹介を済ませて立ち上がる。
「ライム」それはグライト達が探し求めていた例の妖精だ。グライトは少ししてそれに気づき、ライムを凝視した。

そんなグライトの元に、フォキシーと戦っていたクウゴやミキ、ソラが帰ってくる。グライトにへばりついている少女を見て三人はキョトンとした表情になる。

「えっと、そちらの方は……?」

ミキが丁寧な物腰で尋ねた。グライトはライム、自分達が探し求めていた人だと言う事を説明した。

「はぁ? こんなちっこいのが何でも知ってる妖精なのかよ?」

クウゴがそう言うと、ライムは少しムッとして「べっ」と舌を突き出した。

「そんな事言う人には何も教えてあげないんだから!」

どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。ミキはクウゴの腹を少しつねる。「いてぇ」そう言って腹をさするクウゴだが、反省の色は見えない。

「ねぇラータちゃん、私と遊ぼうよ! 私の今遊び場にしている国へつれてってあげる」
「ラータ?」
「好きに呼んで良いって言ったわ」
「あぁ、わかった。とりあえずこの森から出てからでいい?」

そう言うグライトにライムはほほ笑み、私が連れてってあげるとほほ笑む。なんだか垢抜けない子供の様な笑顔だ。

「じゃあさっさと連れてってもらおうよ。俺もクウゴもミキも血まみれだし」

ソラの言葉に三人は頷き、ライムの後に続いた。

 少ししてあっさり森の出口が見えてきた。
後から知った話だが、この森は迷いの森、幻影の森と言われているらしい。一度入れば出られなくなるのが必至だとか……そんな恐ろしいものがリーフ大陸に存在していると知ったグライトは、今度はしっかり地図を見ようと心に決めた。それはグライトに限らず、ミキやクウゴ、ソラ達も思ったそうだ。

歩いていると眼前に国が見えてきた。木々の合間を縫って建てられたような国だ。見るからに穏やかな時間が流れている。グライト達は心底ほっとした。