複雑・ファジー小説

Re: ANIMA-勇者伝-【オリキャラ募集中】 ( No.96 )
日時: 2014/02/14 19:36
名前: 愛深覚羅 ◆KQWBKjlV6o (ID: u/Zf4dZT)

第九話 藪の中

 市場——人が沢山行きかっていて鬼ごっことして姿を隠すのにはもってこいの場所だ。
そこでミキとクウゴは食料や水を買い足しながらライムの姿を探していた。
たまたま入った肉屋の店主を前に、ミキは肉を選びながら尋ねる。

「ここら辺に小さくてブランコに乗った女の子みませんでしたか?」

ミキはそう言って肉を受け取りつつ店主に尋ねる。店主はうーんと言って手を振った。

「しらないねぇ。その子、ライムって名前かい?」
「えぇ、何故わかったのですか?」
「最近ここら辺によく遊びに来てるからな〜ハハハ、まぁがんばれよ」

店主はそう言って快活に笑い大きく手を振りながら、ミキとクウゴを見送る。
クウゴは少し振り返ってミキを呼んだ。

「あのチビ、結構名が知れてるみたいだから案外早く見つかりそうだなァ?」
「そうだといいんですが……」

ミキとクウゴはそんな話をしながら他の店にも顔を出す。
その店でもライムについて所在を尋ねるが、ほとんどが同じ「そこら辺に居るだろう」と言う答えだった。

「ライムさんは此処に住んでいるわけじゃないんでしょうか?」
「そうなんじゃないか、聞いてる限り……」

二人はライムについて少し疑問を抱く。だが本人がいないのでその疑問は解消されない。
再びライム捜索を続けることにした。



 一方グライトとソラはと言うと住宅街の方へ足を進めていた。住宅街と言っても小さな家が並んでいるだけだ。
グライトは此処で猫でも居ないかと探してみた。リーブルはあれから姿を現していない。もしものことを考えて一刻も早く見つけ出したいものだ。
ソラは先ほどからそわそわと落ち着き無い。

「どうしたの?」

グライトは隣でキョロキョロとしながら歩いているソラを見て首を傾げる。ソラは何でもないと強気だが、目が泳いでいた。

「もしかして故郷の街もこんな感じなの?」

そこでソラはピタリと止まる。何だかわかりやすい……と言うか、地雷を踏んだような妙な気分になる。
グライトはソラの拳をいつでも避けられるようにさっと身がまえた。
だがソラは拳を握ったまま動かない。次第に握った手は震えてくる。

「大丈夫? 調子悪いの?」

心配するグライトをよそにソラは首を振った。

「ちょっと似てただけだよ……別に、なんでもない。さっさと探そうぜ、ライムって言う奴をさ」

いつもより気の弱いソラ。グライトは一歩踏み込んでみることにした。

「ソラってさ、どんな事があって自分の街を出てきたの?」

静かに尋ねたグライト。ソラは振り返る。

「倒れて気失ってた時も思ったけどさ、助けてって顔してたよ?」

きゅっと結ばれるソラの口。グライトは眉をハの字にしてソラの言葉を待つ。
ソラは何も言わなかった。グライトは再び歩き出す。よっぽど良い難いだろうそう思ったからだ。

無言のまま住宅街を歩いているグライトとソラ。二人の間には微妙な空気が流れている。

そこでグライトの目にふと黒い何かが横切った。
注意してよく見るとそれはよく知っている黒猫で——気付いた刹那、思わず走り出したグライト。ソラは遅れつつも突然走りだしたグライトを追いかける。
グライトは黒猫に向かって叫んだ。

「リーブル!!」

黒い影はそれに反応し、振り返る。深いオレンジ色の瞳がしっかりとグライトを捕えた。

「やっぱりリーブルだ!! ちょっとそこで止まっててよ!」

グライトはそう付け足し、慌てて黒猫に追いついた。ゼェゼェと荒い息を吐き出しながらグライトはリーブルを持ち上げる。

「そいつって……」
「そうだよ、ずっと探していた黒猫! やっと見つけたぁ!」

グライトは飛んで喜ぶ。持ち上げられたリーブルはふてぶてしい顔ながらもされるがままだ。

「あれ? 口にくわえてるのって……」

グライトはリーブルを地面に降ろし、口にくわえている物を受け取った。
少し血がこびり付いているが、それはまさしくグライトが森の中でフォキシーに突き刺した折れた木刀。

「もしかして持ってきてくれたの?」

そう言うグライトにリーブルは「にゃあ!」と厳しい一声上げた。まるでもう手放すなと言っているようだった。
グライトは頷き、それを懐に直す。

「ごめんね、急に走り出したりして……じゃあライムちゃんさがそうか」

すっかり元気を取り戻したグライトは先ほどの真剣な表情と違っていつも通りふにゃっとした笑顔になった。
ソラはそれを見て少し気を取りなおし、安心しかけた自分に疑問を感じながらも住宅街を後にした。

住宅街の先にあるのは森だった。近所の人の話ではその森を抜けた所に広場があるらしい。そこへ二人は足を運んだ。