複雑・ファジー小説

Re: 夢みる少女は、黒の階段の上を歩く。【ちょっと。まっててね…】 ( No.25 )
日時: 2014/03/16 12:00
名前: 羽瑠 ◆hjAE94JkIU (ID: Aj4Ev7bA)

参照200突破記念。
ここまで長く続けて来れたのは、
まいにち、愛読してくださる皆様のおかげです。
毎回、読んでくださるみなさまに。
精一杯の感謝の意を込めて。
連載小説との連動企画、第一弾!
「記憶の断片。」の番外編をお届けしたいと、想います。

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Edge In Frame_1 守りたかっただけ、なのに。 <kai>[*閲覧注意]




僕は、妹が大好きだった。
いつもにこにこと笑うあどけない笑顔。
おにいちゃんと、呼ぶ。声。
妹さえ、居れば僕はしあわせだったのだ。
愛くるしい笑顔を見るだけで、
毎日が、輝いているようにさえ。見えた。
それくらい、妹の事がだいすきだった。


でも、それはある日突然に引き裂かれて。


僕が小さい頃から、
お父さんとお母さんのけんかが絶えなかった。
お父さんは、酒に溺れる毎日。
アルコールの匂いを漂わせながら帰って来るようになった。
お母さんにあてつけるかのように
殴る、蹴るを繰り返した。
その矛先は、僕にも来た。
殴られても、蹴られても何も言えない。
死ななければ、それでいいと想った。


そんな中でも不思議に妹ができた。
そして今度は妹を攻撃する。
毎日のように、怒声と妹の泣き叫ぶ声。
耐えきれなかった。
僕は、自分の部屋でがくがく震えているだけだった。



それで、何度も頭の中で言い聞かせる。
“僕が、強くなって妹を守ってやるから。”
それで、空をいっぱいいっぱい笑わせられるように。
お兄ちゃんは、お父さんに負けないくらい、
強くなるから。


ただ、もどかしかった。
僕は、まだ幼くて。何にも出来なくて。
自分を守ることしか出来なくて。





__そして、最悪の事態は、突然に。僕のまえに、訪れた。





いつもの夜中。
殴る音。蹴る音。怒鳴る声。
でも、いつもの妹の悲鳴が何故か。
僕の耳へと、聴こえてこないのだ。


おかしい。おかしい。おかしい……?
父親の、いろんな音も。突然止む。
やっぱり。今日は。いつもと、違う。


「おい。どうしたんだ?しっかりしろ!空!」


お父さんの声。


「あなた、もしかして空を



僕は、全てを察した。
部屋から、飛び出す。
ぐったりとした、空。
もう、息をしていない。空。
もう、二度と笑顔にならない。空。




僕は、ドアを開けて外へ飛び出す。
うそだうそだうそだうそだ。
そんなはずないよね?
空?そんなことってないよね?
ぽたぽたと涙が溢れた。
ああ、僕が空を助けられなかったんだ。
ほんとうに、ごめんね。
でも、その声さえ届かないのだ。
ねえ、僕も空に。逢いたいよ……?


もう、頭がぐちゃぐちゃになっていた。
家にはもう、かえれない。
空にも、もう二度と。会えない。






__いや、逢えるよ……?
  僕も。空とおんなじように。死ねばいいんだ。
  空と一緒に、てんごくで遊べば良いんだよ。__







横断歩道を赤信号で渡った。
大きなトラックが、僕を大胆にはねた。
頭と体が、予想以上に痛くてびっくりした。
そして、とくとくと溢れ出す血にもびっくりして。
すごく、眠くなった。
死ぬってこういうことなんだ、と産まれてはじめて。思った。








空、愛してるよ。
僕も、空みたく笑えるようになりたかったよ。
また、逢えればいい。
そして、今度こそは絶対。
空を、守ってあげるから。

                  End.